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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』 第二章 『王の死んだ世界編』
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第二部 第85話 器


「……一歩だな」



士郎の声が。


静かに落ちた。



若い男が少し止まる。



息が荒い。



怖い。



膝も少し震えている。



それでも。



逃げていない。



鎧の男が顔を歪めた。



「な、何を偉そうに!!」



怒声。



剣を握る手が震える。



怒り。



恐怖。



全部が混ざっていた。



「平民風情が!!」



「王を語るな!!」



若い男が止まる。



少し間。



そして。



前を見る。



今度は。



逸らさない。



静かな声。



「王?」



少し間。



民を見る。



子供。



母親。



老人。



痩せた顔。



全部を見る。



そして。



鎧の男を見る。



「怖がらせるだけで」



「腹も満たせない奴が」



少し間。



声が少し強くなる。



「王ぶるなよ」



広場が止まった。



鎧の男が顔を真っ赤にする。



「き、貴様ァ!!」



怒号。



剣を振り上げる。



若い男が止まる。



怖い。



動けない。



だが。



次の瞬間。



士郎の声。



静か。



だが。



重い。



「止まんな」



若い男が目を見開く。



士郎が少し笑う。



獰猛じゃない。



試す目。



「王様やるなら」



少し間。



「そんくらい真正面から見ろ」



風が吹いた。



若い男が息を吸う。



怖い。



それでも。



逃げない。



そして。



初めて。



一歩。



前へ出た。



鎧の男へ。



震える声。



だが。



逸らさない。



「剣振るうなら」



少し間。



「まず俺を黙らせてみろ」



民達が止まった。



笑う者が数秒止まる。



『お?』



『ちょっと王っぽくなってきた?』



翔が煙を吐く。



静かな目。



少し間。



「まだ弱い」



煙が揺れる。



「でも」



静かな声。



「少しマシになった」

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