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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第29話 補給路の死闘

轟音。


補給路の岩場が砕け散る。


黒狼――西園寺士郎。


血刃のゼクト。


二人の怪物が真正面から激突していた。


拳。


魔剣。


衝撃波だけで周囲の岩盤が崩れていく。



ゼクトの斬撃が走る。


黒い刃。


空間ごと裂く魔剣の一撃。


士郎は身体を捻って回避。


頬が裂ける。


血が飛ぶ。


だが止まらない。


踏み込む。


拳。


ドゴォォォン!!


ゼクトの腹へ直撃。


鎧が砕ける。


ゼクトが吹き飛ぶ。


だが。


着地と同時に笑った。


「最高だ!!」


完全に楽しんでいた。


士郎も同じだった。


強い。


殺されるかもしれない。


その感覚が、身体を熱くする。



ゼクトが魔剣を構える。


魔力が膨れ上がる。


周囲の空気が軋む。


「黒狼」


「なんだ」


「貴様、本当に人間か?」


士郎は即答する。


「知らん」


ゼクトが笑う。


「だろうな!!」


次の瞬間。


ゼクトが消えた。


速い。


今まで以上。


魔剣が士郎の胸を裂く。


血飛沫。


だが。


士郎はゼクトの腕を掴んでいた。


ゼクトの目が見開かれる。


「なに――」


士郎が頭突きを叩き込む。


轟音。


ゼクトの額が割れる。


さらに膝蹴り。

肋骨粉砕。


ゼクトが血を吐きながら後退る。


士郎は追う。


止まらない。


戦場へ来てから、身体が軽い。


もっと死に近づける。


もっと壊し合える。


そんな感覚があった。



その頃。


グランゼル要塞。


アレスたちは補給路の方角を見ていた。


遠くの山が揺れている。


レオンが顔をしかめる。


「また派手にやってるな……」


リゼは不安そうだった。


嫌な予感がする。


士郎が。


どんどん遠くへ行っている気がした。



補給路。


ゼクトが魔剣を地面へ突き刺す。


瞬間。


巨大な黒い魔法陣が展開された。


士郎の目が細くなる。


「またそれか」


「今度は違う」


ゼクトが笑う。


「貴様専用だ」


魔力が爆発する。


無数の黒刃。


全方位攻撃。


逃げ場はない。


山一帯が飲み込まれる。


だが。


士郎は笑った。


「いい」


真正面から突っ込む。


黒刃が身体を裂く。


血が飛ぶ。


それでも止まらない。


ゼクトの眼前へ到達。


拳。


ドゴォォォォン!!!


ゼクトの身体が吹き飛ぶ。


岩壁へ激突。


山が揺れる。


ゼクトは血を吐きながら立ち上がる。


そして。


初めて。


本気の殺意を向けた。


「……貴様」


士郎の全身から、微かに黒い靄が漏れる。


ほんの僅か。


だが。


ゼクトは見逃さなかった。


赤い瞳が細くなる。


「やはりか」


「?」


「貴様、人間では終わらん」


士郎は眉をひそめる。


意味が分からない。


だが。


その瞬間。


遠くで角笛が鳴り響いた。


魔族軍の撤退信号。


ゼクトが舌打ちする。


「時間切れか」


士郎が前へ出る。


「逃がさん」


だが。


ゼクトは笑った。


「次はもっと殺し合える」


黒い魔力が噴き上がる。


視界が歪む。


そして。


ゼクトの姿が消えた。


転移魔法。


静寂。


士郎はその場に立っていた。


全身血まみれ。


だが。


笑っている。


楽しかった。


心の底から。


その時。


背後から足音。


グランたちだった。


傭兵たちは、崩壊した山を見て絶句する。


「……なんだよこれ」


補給路一帯が消し飛んでいた。


士郎は静かに言う。


「逃げられた」


グランが乾いた笑いを漏らす。


「いや十分だろ……」


補給部隊の生き残りたちは、震えながら士郎を見ていた。


感謝ではない。


恐怖。


目の前にいるのは英雄じゃない。


戦場そのものだ。


その夜。


魔族軍では、“黒狼警戒令”が出された。


単独で戦線を崩壊させる危険存在。


遭遇時は複数部隊で対処。


必要なら撤退を許可。


人類ではなく。


魔族側が。


西園寺士郎を恐れ始めていた。

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