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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第28話 黒狼襲撃

夜襲から翌朝。


要塞都市グランゼルは、異様な空気に包まれていた。


兵士たちは疲弊しきっている。


だが同時に

希望も生まれていた。


黒狼。


あの男がいる限り、前線はまだ崩れない。

そう思い始めていた。



食堂。


兵士たちが小声で話している。


「見たか昨日の……?」


「ワイバーンを殴り落としやがった」


「化け物だろあれ」


「でも、あいつがいなかったら終わってた」


恐怖と信頼。

両方が混ざっていた。


だが。


士郎本人は気にしていない。

いつものように大量の肉を食っている。


リゼが呆れる。


「ほんと朝からよく食べるね……」


「腹が減る」


最近さらに酷い。


戦えば戦うほど飢える。


身体の奥が何かを求めていた。


その時。


要塞内へ兵士が飛び込んできた。


「た、大変です!!」


空気が変わる。


アレスが振り向く。


「何があった」


兵士は顔面蒼白だった。


「西側補給部隊が壊滅しました!!」


ざわめき。


補給線。


前線の命綱。


それが潰された。


アレスの顔が険しくなる。


「敵は」


兵士が震える声で答える。


「……一人です」


沈黙。


全員の顔が変わる。


一人?


そんな馬鹿な。


兵士は続ける。


「生存者の証言では、赤い鎧の魔族が……」


士郎の目が細くなる。


ゼクト。


アレスが舌打ちした。


「狙ってきたか……!」


補給線を断てば、人類軍は長く持たない。


しかも

ゼクト自ら動いている。

完全に本気だった。



会議室。


地図が広げられる。


補給路は既に危険地帯になっていた。


兵士たちの顔色は悪い。


「このままじゃ三日も持たん」


「補給部隊を再編するしか……」


だが。


誰もゼクト討伐を口にしない。


無理だからだ。


アレスが静かに言う。


「俺が出る」


空気が張り詰める。


王国最強騎士。


その言葉の重み。


だが。


士郎が口を開いた。


「俺が行く」


全員が振り向く。


リゼが慌てる。


「ちょっと!」


アレスが士郎を見る。


「一人で行く気か」


「ああ」


「相手はゼクトだ」


士郎は少しだけ笑う。


「丁度いい」


その笑みに、兵士たちの背筋が寒くなる。


この男。


本当に戦いしか頭にない。


アレスは数秒黙った。


やがて。


「……好きにしろ」


止めても無駄だと理解していた。



夕方。


補給路。


焼けた馬車。


死体。


血。


ゼクトの仕業だった。


士郎は静かに歩く。


風が吹く。


その時。


「来たか」


声。


前方の岩場。


血刃のゼクトが座っていた。


赤黒い鎧。


巨大な魔剣。


そして。


獰猛な笑み。


ゼクトは立ち上がる。


「待っていたぞ、黒狼」


士郎は静かに見る。


「補給線潰しか」


「戦争だからな」


ゼクトは笑う。


「人間どもはすぐ飢える」


士郎は答えない。


ただ

殺気だけが膨れ上がっていく。


ゼクトが楽しそうに言う。


「貴様と戦ってから、退屈しなくなった」


「そうか」


「だから今日は――」


ゼクトが魔剣を抜く。


轟音。


周囲の岩が砕ける。


「殺し合おう」


士郎が拳を握る。


黒いコートが揺れる。


そして。


笑った。


「いいぞ」


次の瞬間。


二人が同時に地面を蹴った。

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