第二部 第44話 支配者
静寂。
◇
「邪魔だ」
◇
翔の声だけが、 夜へ沈んだ。
◇
黒服達が止まる。
◇
数秒。
◇
沈黙。
◇
そして。
◇
怒号。
◇
「……あ?」
◇
「なんだテメェ」
◇
「部外者が——」
◇
遅い。
◇
翔が動く。
◇
違う。
◇
消えた。
◇
霧。
◇
視界が揺れる。
◇
気付けば。
◇
懐。
◇
近い。
◇
近すぎる。
◇
男が目を見開く。
◇
何も分からない。
◇
ただ。
◇
拳が流れるように入った。
◇
霧流拳。
静寂。
◇
男が崩れる。
◇
もう死んでいた。
◇
何が起きたかも分からずに。
◇
笑う者が、 引き気味に呟く。
◇
『うわ』
◇
『雑魚にも必殺かよ』
◇
黒服達が凍る。
◇
理解不能。
◇
仲間が突然死んだ。
◇
一人が震えながら叫ぶ。
◇
「ころ——」
◇
遅い。
◇
霧が揺れる。
◇
次の瞬間。
◇
また一人。
◇
崩れる。
◇
さらに一人。
◇
気付いた時には終わっていた。
◇
悲鳴すら間に合わない。
◇
恐怖だけが残る。
◇
店主が震えていた。
◇
黒服達が、 初めて後退する。
◇
理解した。
◇
敵じゃない。
◇
化物でもない。
◇
“災害”だ。
◇
翔が静かな目で見た。
◇
「失せろ」
静かな声。
◇
その瞬間。
◇
路地の奥から、 低い笑いが落ちた。
◇
「へぇ」
◇
「面白ぇのがいるな」
静寂。
◇
空気が変わる。
◇
重い。
◇
威圧。
◇
殺気。
◇
今までの雑魚とは違う。
◇
笑う者の輪郭が、 ぴたりと止まった。
◇
『……あ』
静かな声。
◇
『終わった』
◇
士郎が、 心底楽しそうに笑った。
◇
「ようやくか」
◇
路地の奥。
◇
巨漢。
◇
黒い外套。
◇
街そのものを背負っているような圧。
◇
男が、 ゆっくり笑う。
◇
「俺の部下に」
◇
「何してくれてんだ?」
静寂。
◇
士郎が一歩前へ出る。
◇
獰猛に笑う。
◇
「煙草屋の邪魔した」
静かな声。
◇
「だから潰す」
◇
男が数秒止まる。
◇
理解できない。
◇
怒りより先に。
◇
困惑が来る。
◇
笑う者が、 顔を覆った。
◇
『理由が終わってる』
静寂。




