第二部 第43話 煙草屋
静寂。
◇
『……あ』
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『もうバレた』
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笑う者の声だけが、 街の喧騒へ沈んだ。
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黒服の男達。
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十数人。
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路地の向こう。
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動きが止まっていた。
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視線。
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警戒。
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敵意。
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違う。
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恐怖。
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士郎と翔を見ている。
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笑う者が、 少し引き気味に呟く。
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『早くない?』
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『災厄認定って、もう共有されてんの?』
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士郎が、 少し笑う。
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「歓迎されてんじゃねぇか」
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翔は、 何も言わない。
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静かな目。
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ただ歩く。
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違う。
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探していた。
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匂い。
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煙。
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雑音。
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そして。
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ふと、 止まる。
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士郎が眉を動かす。
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「どうした?」
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翔が、 小さく顎を動かした。
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路地の先。
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古びた店。
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小さな看板。
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煙草屋。
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「見つけた」
静かな声。
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笑う者が、 数秒止まる。
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『……いや』
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『優先順位!!』
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『なんで真っ先に見つけんの!?』
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翔は、 気怠そうに歩き出す。
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だが。
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その瞬間。
轟音。
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ガラスが割れた。
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悲鳴。
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怒号。
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店の中から、 誰かが吹き飛ばされる。
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老人だった。
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煙草屋の店主。
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床へ転がる。
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黒服の男が、 怒鳴る。
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「だから言ってんだろ!!」
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「この区画はもう終わりだ!!」
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「店ごと渡せ!!」
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老人が、 震えながら首を振る。
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「……ここだけは」
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「ここだけは勘弁してくれ……」
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笑う者が、 露骨に嫌そうな顔をした。
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『うわ』
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『最悪のタイミング』
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『街支配系だ』
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『しかも弱ぇタイプ』
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士郎が、 つまらなそうに鼻を鳴らす。
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「帰るか?」
静かな声。
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翔は答えない。
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店を見る。
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老人を見る。
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床へ散った煙草。
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潰れた箱。
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沈黙。
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そして。
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小さく口を開く。
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「……煙草屋か」
静かな声。
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笑う者が、 嫌な予感で固まる。
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『待て』
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『その確認怖い』
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翔が、 静かに前へ出た。
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士郎が、 少し笑う。
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獰猛に。
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「ハハッ」
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「終わったな」
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黒服達が、 初めてこちらに気付く。
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敵意。
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威圧。
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怒号。
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「なんだテメェら——」
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翔が、 静かな目で見た。
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冷たい。
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ただ。
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一言。
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「邪魔だ」
静かな声。




