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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第23話 血刃のゼクト

戦場が静まり返っていた。


数万規模の戦い。


その中心で。

二人の怪物が向かい合っている。


黒狼――西園寺士郎。


そして。

魔族軍幹部、“血刃のゼクト”。


ゼクトはゆっくり歩いてくる。


赤黒い鎧。

巨大な魔剣。

長い銀髪。


そして。

戦場全体を支配するような殺気。


普通の兵士では、近づくだけで膝をつく。


実際。

周囲の人類兵は完全に動けなくなっていた。


「ぐっ……」


「息が……」


リゼの顔も青い。


「これが……魔族軍幹部……」


だが。

士郎だけは笑っていた。


ほんの少し。

獰猛に。


ゼクトが立ち止まる。


赤い瞳が士郎を見る。


数秒。

沈黙。

そして。


「……面白い」


低い声。


戦場が震える。


ゼクトは士郎を見ながら続ける。


「人間ごときが、ここまで殺気を纏うか」


士郎は答える。


「お前も強そうだな」


ゼクトの口元が歪む。


笑った。


「気に入った」


次の瞬間。


ゼクトが消える。


速い。


人類兵には見えない。


だが。

士郎は動いていた。


拳。


魔剣。


激突。


轟音。


衝撃波で周囲の兵士たちが吹き飛ぶ。


アレスの目が見開かれる。


「速すぎる……!」


ゼクトの剣が連続で振るわれる。


斬撃。


一撃ごとに地面が裂ける。


士郎は紙一重で回避。


最小動作。


そして懐へ潜り込む。


拳を叩き込む。


ドゴォォォン!!


ゼクトの身体が滑る。


だが。

止まる。


ゼクトは笑っていた。


「いい拳だ」


士郎の目が細くなる。


硬い。


今までの魔族とは別格。


ゼクトが魔剣を振るう。


黒い斬撃。


空気そのものが裂ける。


士郎は腕で受けた。


轟音。


血が飛ぶ。


腕が裂ける。


リゼが悲鳴を上げる。


「士郎!!」


だが。

士郎は笑った。


「いいな」


ゼクトの目が細くなる。


「貴様……本当に人間か?」


士郎は即答した。


「知らん」


次の瞬間。


地面を蹴る。


爆発音。


士郎の拳がゼクトの顔面へ迫る。


ゼクトは魔剣で防御。


だが。

轟音と共に、ゼクトの身体が吹き飛んだ。


魔族軍がざわつく。


「ゼクト様が……!」


ゼクトは地面を滑りながら止まる。


頬から血。


そして。


笑っていた。

本気で楽しそうに。


「素晴らしい」


殺気がさらに膨れ上がる。


戦場の空気が重くなる。


アレスの顔が険しくなる。


「まずい……!」


ゼクトが本気になる。


それは災害だった。


ゼクトの周囲に黒い魔力が渦巻く。


魔剣が唸る。


そして。


「死ね」


斬撃。


巨大な黒刃が戦場を切り裂く。


人類兵も魔族兵もまとめて吹き飛ぶ。


士郎は跳躍して回避。


そのまま空中から踵落とし。


ドゴォォォン!!


ゼクトの肩へ直撃。


地面が陥没する。


だがゼクトは止まらない。


魔剣を振り上げる。


士郎の腹へ斬撃。


血が飛ぶ。


士郎の身体が吹き飛んだ。


瓦礫へ激突。


リゼの顔が青ざめる。


「士郎!!」


煙。


静寂。


だが。

瓦礫の中から士郎が立ち上がる。


腹から血が流れている。


それでも。


目は死んでいない。


むしろ。


さらに獰猛になっていた。


ゼクトが笑う。


「最高だ、人間」


士郎も笑う。


「ああ」


その瞬間。


二人が同時に踏み込んだ。


轟音。


戦場が揺れる。


そして誰も気づいていなかった。


士郎の身体から。


ほんの僅かに。


黒い靄が漏れ始めていることに。

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