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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第20話 血塗れの傭兵団

王都ヴァルディア。


巨大な白亜の城。


その謁見の間では、重苦しい空気が流れていた。


机の上へ置かれている報告書。


【S級危険種・黒雷ギルザード討伐】


しかも討伐者は、たった一人。


西園寺士郎。


通称――黒狼。


王国軍幹部たちの顔は険しい。


「ありえん……」


「魔力なしでS級を?」


「本当に人間か?」


ざわめき。


恐怖。


誰もが理解していた。


この男は危険だと。


だが同時に。

必要でもあった。


北方戦線。


魔族軍の侵攻は激化している。


戦力はいくらあっても足りない。


王国騎士団長アレスは静かに言った。


「少なくとも敵には回したくない」


その一言で空気が重くなる。


王国上層部も理解していた。


黒狼は兵器だ。

制御不能の。



その頃。

士郎はルーガスを出ようとしていた。


街門前。

黒いコートを羽織り、無言で立っている。


リゼが不満そうに頬を膨らませる。


「ほんと急だよね」


「ここは飽きた」


「ひどい」


士郎らしい理由だった。


だが実際。

ルーガスでは、もうまともな相手がいない。


S級を倒した時点で、街の空気は完全に変わってしまった。


恐怖。


畏怖。


誰も士郎を普通の人間として見ていない。


レオンが壁にもたれながら言う。


「王都へ行くのか?」


「知らん」


「は?」


「強い奴がいる場所へ行くだけだ」


レオンが苦笑する。


「戦闘狂め」


その時だった。


街道の奥から、複数の馬車が近づいてくる。


武装集団。


傭兵だった。


鎧も武器もバラバラ。

だが全員、戦場の匂いがする。


先頭の大男が士郎を見る。


隻眼。


大斧を背負った巨漢。


「お前が黒狼か」


士郎は相手を見る。


強い。


今までの雑魚よりは遥かに。


男は笑った。


「噂通りなら面白そうだ」


リゼが警戒する。


「誰?」


男は胸を叩いた。


「傭兵団“餓狼の牙”団長、グラン」


周囲の傭兵たちもニヤついている。


完全に戦場の人間。


グランは士郎へ言う。


「北方戦線へ向かう」


士郎の目が細くなる。


「戦争か」


「ああ。魔族との大戦争だ」


その言葉に、士郎は少しだけ笑った。


強者。

死。

殺し合い。


そこには全部ある。


グランは続ける。


「王国軍は人手不足だ。腕の立つ奴なら歓迎される」


そして。

士郎を見て笑った。


「特に化け物ならな」


レオンが嫌な顔をする。


「やめとけグラン。その男は――」


「災害指定だろ?」


グランは笑う。


「知ってるさ」


周囲の人々がざわつく。

普通なら避ける。


だが。


彼らは傭兵。


危険な戦場を渡ってきた狂人たち。

むしろ興味を持っていた。


グランが聞く。


「来るか?」


沈黙。


士郎は少しだけ考える。


戦争。


大規模な殺し合い。

そして魔族。

強い奴もいるだろう。


士郎は答えた。


「退屈しなさそうだ」


グランが笑う。


「決まりだな」


リゼが慌てる。


「ちょ、ちょっと待って! 本当に行くの!?」


士郎は当然のように言う。


「ああ」


「戦争だよ!?」


「だからだ」


リゼが頭を抱える。


レオンはため息を吐いた。


「……北方戦線が終わるな」



その夜。

傭兵団の野営地。


酒。

焚き火。

怒鳴り声。

荒っぽい空気。


だが士郎には妙に馴染んでいた。

前の世界の戦場に近い。


傭兵たちは最初、士郎を警戒していた。


だが。

S級を素手で殺した男。


その噂を聞いているせいで、逆に妙な盛り上がり方をしている。


「おい黒狼!」


「本当にS級殴り殺したのか!?」


「どんな拳してんだよ!」


士郎は酒を飲みながら答える。


「普通だ」


「嘘つけ!!」


笑いが起きる。


リゼは少し驚いていた。


士郎が。

馴染んでいる。


冒険者ギルドでは孤立していたのに。


だが。

戦場帰りの傭兵たちは違う。


強さが全て。

狂ってるほど尊敬される。


だから士郎の異常性を、むしろ受け入れていた。


グランが酒を飲みながら言う。


「黒狼」


「なんだ」


「戦場は街と違うぞ」


グランの目が鋭くなる。

「人間も魔族も、簡単に死ぬ」


士郎は即答した。


「知ってる」


その答えに、グランは少しだけ笑う。


ああ、この男は本当に。

“こっち側”だと理解した。


そして。


北方戦線。


血と死に染まった地獄へ向けて、傭兵団は進み始めた。

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