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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第1章 『黒衣の転生者編』

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第18話 黒雷ギルザード

黒雷ギルザード。


その名は、王国北部では伝説だった。


山を砕き。


軍を壊滅させ。


都市を消した怪物。


S級危険種。


国家災害。


目の前に立つだけで分かる。

今までの敵とは格が違う。



北方山域。


黒雷ギルザードは士郎を見下ろしていた。


巨大な赤眼。

岩のような黒い皮膚。

身体の周囲では、黒い雷が弾けている。


大気が焦げる臭い。

普通の人間なら、近づくだけで死ぬ。


だが。

士郎は笑っていた。


黒いコートが風で揺れる。


「いいな」


その声には、本物の愉悦が混ざっていた。


ギルザードが低く唸る。


本能が理解している。

目の前の人間は危険。

ただの獲物ではない。


次の瞬間。

ギルザードが動いた。


轟音。


巨体とは思えない速度。

前脚が振り下ろされる。


士郎は跳ぶ。


直後。


地面が爆発した。

森が吹き飛ぶ。

衝撃波だけで木々が粉砕される。


士郎は空中で体勢を変え、ギルザードの頭部へ蹴りを放つ。


ドゴォォォン!!


衝撃。


だが。


硬い。


士郎の蹴りを受けても、ギルザードはほとんど揺れなかった。


士郎の目が細くなる。


「なるほど」


今までとは違う。


本当に。


“壊れない”。


ギルザードが咆哮した。


黒い雷が炸裂する。


士郎の身体へ直撃。


轟音。


地面へ叩き落とされる。


土煙。


だが。

士郎は立ち上がる。


コートが焼けていた。


皮膚も裂けている。


それでも。

笑っている。


「最高だ」


ギルザードが一瞬動きを止める。


理解できない。

なぜこの人間は恐れない?


士郎は拳を握る。


身体が熱い。


血が騒ぐ。


久しぶりだった。

ここまで自分を殺せそうな相手は。


ギルザードが再び突進。


黒雷を纏った体当たり。

山すら砕く一撃。


士郎は避けない。


真正面から踏み込む。


拳。


轟音。


衝撃波が周囲の木々を吹き飛ばした。


士郎の身体が滑る。


だが。

止まらない。


ギルザードの巨体も僅かに揺れた。


士郎は笑う。


「効くじゃねぇか」


次の瞬間。


ギルザードの尾が横薙ぎに振るわれる。


速い。


士郎の脇腹へ直撃。


轟音。


身体が吹き飛び、岩壁へ叩きつけられる。


岩が砕ける。

血が流れる。

普通なら即死。


だが。

士郎はゆっくり立ち上がる。


息は荒い。

骨も軋んでいる。


それでも。

目は死んでいない。


むしろ。

さらに獰猛になっていた。



その頃。


ルーガスでは、遠くの山脈を見て人々が震えていた。


轟音が止まらない。

空が黒い。

雷が落ち続けている。


リゼは城壁の上で、北方山域を見つめていた。


「士郎……」


胸騒ぎが止まらない。


レオンも険しい顔だった。


分かっている。


あれはもう、人間の戦いじゃない。

災害同士の衝突だ。



山域。


ギルザードが咆哮する。


黒雷が空を覆う。


士郎は血を拭う。


「まだだ」


踏み込む。


速度がさらに増す。


ギルザードの懐へ潜り込み、拳を連打する。


腹。

喉。

顎。


轟音が連続する。


ギルザードが初めて苦鳴を漏らした。


効いている。


だが。

まだ足りない。


ギルザードが怒り狂う。


口が開く。


黒い光。


士郎の目が細くなる。


「ブレスか」


次の瞬間。


極太の黒雷が放たれた。


山を貫く。

森が消し飛ぶ。


士郎は跳躍して回避。


だが掠めただけで、腕の肉が焼けた。


壮絶。


だが。

士郎は笑う。


「いい」


ギルザードを見上げる。


「もっと来い」


その瞬間。


士郎の身体から、微かに黒い靄が漏れた。


ほんの一瞬。


本人すら気づかないほど微弱。


だが。


ギルザードは動きを止めた。


赤い眼が揺れる。


本能。


恐怖。


怪物が理解した。


目の前の人間の中に。


“別の何か”がいると。

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