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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第1章 『黒衣の転生者編』

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第17話 S級反応

北方山域。


黒い雲が空を覆っていた。


空気が重い。


まるで世界そのものが息を止めているような圧迫感。


ルーガスの街では、人々が不安そうに空を見上げていた。


「なんだあれ……」


「嵐か……?」


だが。

戦いを知る者たちは理解していた。


違う。


あれは災害だ。



冒険者ギルド。


空気は最悪だった。


ダグラス。

レオン。

騎士団。

全員の顔が険しい。


報告に来た斥候は、顔面蒼白だった。


「確認しました……」


喉が震えている。


「北方山域最深部にて、超大型魔獣反応……」


レオンが低く聞く。


「種類は」


「不明……ですが」


斥候の額から汗が流れる。


「周辺一帯の魔獣が、全て逃げ出しています」


沈黙。


それだけで異常だった。


A級危険種ですら、縄張りを捨てて逃げる。


つまり。

もっと上。


ダグラスが呟く。


「S級……」


ギルド内の空気が凍った。


S級危険種。


国家災害。


一体で都市を滅ぼす怪物。


普通の冒険者ではどうにもならない。


騎士団長が険しい顔で言う。


「王都へ救援要請は出した」


「間に合うのか?」


「分からん」


最悪だった。


S級が街へ来れば終わる。

ルーガス程度の都市では防げない。


リゼが不安そうに士郎を見る。


だが。

士郎は静かだった。


むしろ。

少しだけ楽しそうですらある。


レオンが顔をしかめる。


「お前……まさか行く気か」


「ああ」


即答。


ダグラスが怒鳴る。


「馬鹿言え!!」


ギルドが静まり返る。


ダグラスは本気だった。


「A級とは訳が違うんだぞ!」


「そうか」


「S級は軍隊でも壊滅する!」


「なら面白い」


空気が止まる。


リゼの顔が青ざめる。


「士郎……」


だが士郎は、本気だった。


強い敵。


それだけで十分。


騎士団長が睨む。


「死ぬぞ」


士郎は少し考えた。


そして。


「ならそれまでだ」


その答えに、誰も言葉を失った。


恐怖がない。


いや。


死すら受け入れている。


レオンは苦い顔で呟く。


「ほんと壊れてんな……」



夜。


士郎は一人で北方山域へ向かっていた。


黒いコートが風で揺れる。


森は異様なほど静かだった。


魔獣の気配がない。

全部逃げた。


それだけで、S級の異常さが分かる。


士郎は歩きながら考える。


この世界へ来てから。

強い敵と戦うたび、身体が妙に熱くなる。


腹も減る。


戦えば戦うほど。

何かが満たされる気がする。


だが。

同時に、別の感覚もあった。


奥底で“何か”が目覚めていくような違和感。


士郎は眉をひそめる。


「……気に入らんな」


その時。

地面が揺れた。


轟音。


森の奥。

巨大な木々が倒れていく。


士郎の目が細くなる。


来る。


次の瞬間。


咆哮。


空気が震えた。

森全体が揺れる。


普通の人間なら、その場で失神するほどの圧。


だが。

士郎は笑った。


ほんの少し。

獰猛に。


暗闇の奥。

二つの赤い眼が開く。


巨大。


圧倒的。


ゆっくり現れたのは、黒い巨獣だった。


全長十メートル以上。


岩のような皮膚。

四本脚。

巨大な牙。

その一歩だけで、大地が沈む。


士郎は見上げる。


「……デカいな」


巨獣が唸る。

その殺気だけで木々が軋む。


S級危険種。


名を――。


“黒雷ギルザード”。


国家災害指定魔獣。


そして今。

その赤い眼が、西園寺士郎を捉えた。

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