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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第1章 『黒衣の転生者編』

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第16話 災害指定

オーガロード討伐から二日。


ルーガスの街は静かだった。


いや。


正確には、“静かすぎた”。


人々は黒いコートを見ると道を開ける。


冒険者たちは視線を逸らす。


誰も士郎へ近づかない。


恐れていた。


オーガロード。


A級危険種。


街一つ壊滅させる怪物。


それを。

あの男は、素手で殺した。



冒険者ギルド。


士郎はいつもの席で肉を食っていた。


山盛り。


異様な量。


リゼが呆れ顔で言う。


「……ほんと、どれだけ食べるの」


「足りん」


士郎は淡々と答える。


最近、腹が減る。


異常なほど。


食っても満たされない。

身体の奥が、何かを欲していた。


その時。

ギルドの扉が開く。


入ってきたのは、王国騎士団。


前より人数が多い。


空気が張り詰める。


冒険者たちがざわついた。


「また来たぞ……」


「今度は何だ」


先頭に立つ騎士団長が、ダグラスへ書状を渡す。


ダグラスは目を通し、顔をしかめた。


「……はぁ」


レオンが聞く。


「悪い話か?」


「最悪だ」


ダグラスは士郎を見る。


「お前、“災害指定”されたぞ」


沈黙。


リゼが固まる。


「……え?」


騎士団長が低く言う。


「王国上層部は、西園寺士郎を“要警戒存在”として認定した」


ざわめき。


冒険者たちの顔が引きつる。


災害指定。


それは普通、人間に使う言葉じゃない。


巨大魔獣。

異常災害。

魔王級存在。

そういうものへ使われる分類。


騎士団長は士郎を見る。


「討伐命令ではない。現時点ではな」


「そうか」


士郎は興味なさそうだった。


その態度に、逆に騎士たちが緊張する。


この男。

本当に王国を恐れていない。


レオンが苦笑する。


「人間扱いされなくなってるぞ」


「前から似たようなもんだ」


士郎は肉を食い続ける。


だが。

ギルド内の空気は重い。


誰もが理解してしまった。


西園寺士郎は、もう普通の冒険者じゃない。



その夜。


ルーガス郊外。


士郎は一人で座っていた。


崖の上。


月が見える。


風が吹く。


リゼが後ろから歩いてくる。


「またここにいた」


士郎は振り返らない。


リゼは隣へ座る。


少し沈黙。


やがて小さく言った。


「みんな、士郎を怖がってる」


「そうか」


「……気にならないの?」


士郎は少し考える。


そして。


「弱い奴は強い奴を怖がる」


当然のように言った。


リゼは困った顔をする。


「そういう話じゃなくて……」


士郎は空を見る。


前の世界でも同じだった。


誰も近づかない。

誰も理解しない。

強くなればなるほど、人は離れる。

それが普通だった。


だから。

別に何も感じない。


……はずだった。


リゼがぽつりと言う。


「でも私は、士郎が怖いだけじゃないよ」


士郎の目がわずかに動く。


リゼは続ける。


「危なっかしい」


「……」


「なんか、いつかどっか行っちゃいそう」


風が止まる。


士郎はしばらく黙っていた。


やがて。


「知らん」


それだけだった。


リゼは苦笑する。


「ほんと不器用」


その時だった。


遠く。

森の方角から轟音が響く。

地面が揺れた。


士郎の目が細くなる。


レオンたちも街から飛び出してくる。


「今のは……!」


騎士団がざわつく。


森。


北方山域。


そこから、異常な魔力反応が発生していた。


空気が重い。


兵士の一人が青ざめる。


「な、なんだあれ……」


遠くの空が、黒く染まり始めていた。


ダグラスの顔が険しくなる。


「まさか……」


レオンが低く呟く。


「……S級か?」


沈黙。


誰も否定できない。


本能で分かる。

今までとは格が違う。


災害。


本物の怪物が目を覚ました。


その時。


士郎だけが、静かに笑った。


黒い瞳。


獰猛な笑み。


「やっとか」


その姿を見て。

リゼは初めて、背筋に寒気を覚えた。

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