第14話 北門突破
警鐘が鳴り響いていた。
ルーガス北門。
街は完全に混乱している。
悲鳴。
怒号。
逃げ惑う住民たち。
そして。
巨大な怪物。
オーガ。
二メートルを超える筋肉の塊。
灰色の皮膚。
巨大な牙。
鉄棒のような腕。
それが十体以上、街へ侵入していた。
家屋が潰される。
兵士が吹き飛ぶ。
血が飛ぶ。
普通の人間では止められない。
◇
北門前。
王国兵たちは必死に抵抗していた。
「止めろ!!」
「街へ入れるな!!」
槍が突き出される。
だが。
オーガは止まらない。
兵士の一人を掴み、壁へ叩きつけた。
骨が砕ける。
絶叫。
さらに別のオーガが門を殴る。
轟音。
門が歪む。
兵士たちの顔から血の気が消える。
「くそっ……!」
その時だった。
黒い影が、兵士たちの前へ降り立つ。
西園寺士郎。
黒いコートが揺れる。
オーガたちの視線が一斉に集まる。
リゼたちも遅れて到着した。
レオンが舌打ちする。
「先に突っ込むな馬鹿」
士郎は答えない。
オーガを見る。
強い。
だが。
まだ足りない。
一体のオーガが咆哮しながら突進する。
巨大な拳。
士郎の頭を潰そうと振り下ろされる。
だが。
士郎は避けない。
拳を握る。
そして。
真正面から殴り返した。
轟音。
オーガの腕が爆ぜた。
肉と骨が飛び散る。
オーガが絶叫する。
兵士たちが絶句した。
「う、腕を……!」
士郎はそのまま踏み込む。
肘打ち。
顎粉砕。
続けて蹴り。
首が折れた。
オーガが崩れ落ちる。
一撃。
完全な実力差。
残るオーガたちが咆哮した。
怒り。
恐怖。
混乱。
そして一斉に襲いかかる。
士郎は笑った。
ほんの少し。
「来い」
戦闘が始まる。
いや。
虐殺だった。
士郎は止まらない。
拳で顔面を潰す。
膝で腹を砕く。
掴んで投げる。
オーガ同士を激突させる。
轟音。
血飛沫。
怪物たちが次々倒れていく。
兵士たちは動けなかった。
助ける必要がない。
むしろ。
近づく方が危険だった。
レオンが苦笑する。
「ほんと滅茶苦茶だな……」
リゼは半泣きだった。
「街壊れてるぅ……」
士郎の肩へオーガの拳が直撃する。
轟音。
普通なら即死。
だが。
士郎は動かなかった。
逆に。
拳を掴む。
オーガの顔が引きつる。
士郎は静かに言う。
「軽い」
そのまま腕をへし折った。
絶叫。
そして顔面へ拳。
頭蓋骨が陥没する。
沈黙。
最後のオーガが後退った。
恐怖していた。
怪物が。
人間を。
士郎はゆっくり歩く。
オーガは逃げようとした。
だが遅い。
士郎の蹴りが背中へ叩き込まれる。
轟音。
オーガの巨体が門へ激突し、そのまま動かなくなった。
静寂。
北門前に残ったのは、オーガの死体だけだった。
兵士たちは呆然と立ち尽くす。
十数体のオーガ。
普通なら街一つ壊滅する規模。
それを。
たった一人で殲滅した。
騎士団長が士郎を見る。
顔色が悪い。
さっきまで討伐対象だった男。
だが今。
理解してしまった。
この男が敵に回れば、街など一瞬で壊れる。
士郎は血を払う。
「終わりか」
その時だった。
森の奥。
さらに重い足音。
地面が揺れる。
レオンの顔色が変わる。
「……まだいるのか」
兵士たちが怯える。
木々が倒れる。
そして現れた。
巨大。
三メートルを超える異形。
黒い鎧のような皮膚。
巨大な斧。
赤い眼。
オーガたちが一斉に跪く。
リゼが震える声で呟く。
「……オーガロード」
空気が凍った。
A級危険種。
オーガの王。
普通の討伐隊では勝てない怪物。
だが。
士郎は笑っていた。
獰猛に。
「いい」
拳を握る。
「やっと強そうなのが来た」




