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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第1章 『黒衣の転生者編』

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第13話 黒狼討伐依頼

ブラッドベア討伐から二日。


ルーガスの街は、異様な空気に包まれていた。


酒場では人々が小声で囁く。


市場では、黒いコートの男の噂が飛び交う。


「A級危険種を四体……」


「しかも素手だぞ?」


「本当に人間か……?」


“黒狼”。


その異名は、もう街全体へ浸透していた。


だが。

噂が広がるほど、人々の目は変わっていく。


尊敬ではない。


恐怖。


理解できないものを見る目。



冒険者ギルド。


士郎はいつものように肉を食っていた。


周囲の冒険者たちは、誰も近寄らない。


空席だらけ。


リゼが苦笑する。


「完全に避けられてるね……」


「そうか」


士郎は気にしていなかった。


前の世界でも同じだった。


強い者は孤立する。


それだけだ。


その時。


ギルドの扉が開く。


王国騎士団だった。

前回来た時より人数が多い。


空気が張り詰める。


レオンが眉をひそめた。


「またか」


先頭の騎士がダグラスへ近づく。


「ギルドマスター」


「今度はなんだ」


騎士は低く言った。


「王都から正式通達だ」


一枚の書状。


ダグラスが開き、顔をしかめる。


リゼが不安そうに聞く。


「な、何……?」


ダグラスは数秒黙っていた。


そして。


「……黒狼討伐依頼」


沈黙。


ギルド内の空気が凍る。


リゼの顔が青ざめた。


「え……?」


レオンの目が細くなる。


「王都の連中、正気か?」


騎士は苦い顔だった。


「最近の被害報告だ。盗賊団壊滅、A級危険種討伐、正体不明の魔族出現……」


その視線が士郎へ向く。


「王国上層部は、お前を危険視している」


士郎は肉を食い終え、静かに口を拭いた。


「そうか」


反応が薄い。


まるで他人事。


騎士が言う。


「抵抗するな。事情を聞くだけだ」


その瞬間。

レオンが吹き出した。


「無理だろ」


「何?」


「こいつ、縛れる相手じゃねぇ」


騎士たちが険しい顔になる。


空気が悪化していく。


リゼが慌てる。


「ちょ、ちょっと待ってってば!」


だが士郎は静かだった。

騎士たちを見る。


人数。

武装。

力量。


弱い。

そう判断した。


士郎は立ち上がる。

黒いコートが揺れる。


その瞬間。


騎士たちが反射的に武器へ手をかけた。

本能だった。


目の前の男は危険だと、身体が理解している。


士郎は低く聞く。


「俺を殺すのか」


騎士団長が答える。


「必要なら」


空気が凍った。


リゼの背筋を寒気が走る。


まずい。


士郎の目が変わった。


感情が消えていく時の目。

前の世界で何度も人を殺してきた目。


士郎は一歩前へ出る。


騎士たちが後退る。


ただ歩いただけ。

それなのに、圧が重い。


士郎は静かに言った。


「試してみるか」


殺気。


ギルド内の空気が軋む。

冒険者たちが息を呑む。


騎士たちの額から汗が流れる。


強い。


違う。


“生き物として格が違う”。


騎士団長が歯を食いしばる。


「構えろ!!」


騎士たちが一斉に剣を抜いた。


その瞬間。


士郎が消える。


「――ッ!?」


次の瞬間。


騎士団長の喉元へ、士郎の拳が止まっていた。


あと数センチ。

それだけで死ぬ。


騎士団長の顔が青ざめる。


誰も見えなかった。


レオンですら、ギリギリだった。


士郎は冷たく言う。


「弱いな」


騎士団長が震える。


動けない。


目の前にいるのは人間じゃない。


怪物。


士郎は拳を下ろす。


「興味が失せた」


その時だった。


ギルドの外から悲鳴が響いた。


「魔獣だぁぁぁ!!」


全員が振り向く。

街が騒然としている。


ダグラスが舌打ちした。


「今度はなんだ!」


冒険者が飛び込んでくる。


顔面蒼白。


「北門が破られた!!」


「何!?」


男は震える声で叫んだ。


「オーガだ!! しかも群れだ!!」


ギルドが騒然となる。


オーガ。


B級危険種。


普通の兵士では相手にならない怪物。

それが群れ。

街へ侵入した。


リゼが青ざめる。


「まずいよ……!」


だが。

士郎だけは静かだった。


むしろ。

少しだけ笑う。


「丁度いい」


騎士団長が振り向く。


士郎は黒いコートを翻した。


「討伐依頼だったな」


黒い瞳が細くなる。


「先に化け物を殺してくる」

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