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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第1章 『黒衣の転生者編』

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第12話 森の異形

森の奥。


暗闇の中で、“それ”は立っていた。


異様だった。


人型。


だが人間じゃない。


全身は黒い皮膚に覆われ、腕が異常に長い。


顔には目も鼻もない。

ただ裂けた口だけが存在していた。


そして。

濃密な魔力。


レオンの顔色が変わる。


「……魔族?」


士郎は黙って見ている。


強い。


今までの魔獣とは違う。


殺意に理性が混ざっていた。


異形は、ゆっくり口を開く。


「……ニンゲン」


掠れた声。


リゼが震える。


「しゃ、喋った……」


異形の視線が士郎へ向く。


その瞬間。

空気が変わった。


まるで猛獣同士が睨み合ったような圧力。


異形が低く唸る。


「……キケン」


士郎の口元が、わずかに歪む。


「そうか」


次の瞬間。


異形が消えた。


速い。


ブラッドベアとは別次元。

レオンが反応すらできない。


だが。

士郎は動いていた。


拳。


轟音。


空中で衝撃が炸裂する。

異形の腕と士郎の拳が激突していた。


地面が割れる。


木々が揺れる。


リゼが悲鳴を上げる。


「はやっ!?」


異形の口が裂ける。


笑っているようだった。


そして。

腕が増えた。


背中から黒い腕が二本伸びる。


レオンが目を見開く。


「変異種か……!」


異形が連撃を放つ。

四本腕による猛攻。


速い。

鋭い。


だが士郎は全部見切る。

最小動作で避ける。

受け流す。


そして。

踏み込む。


肘打ち。

異形の肋骨が砕ける。


だが。

異形は笑ったまま。


痛みを感じていない。

そのまま士郎の肩へ噛みつこうとする。


士郎は顔面を掴んだ。


握力。

骨が軋む。


だが異形は止まらない。


レオンが叫ぶ。


「そいつ再生するぞ!!」


実際、砕けた骨が蠢き始めていた。


士郎の目が細くなる。


「厄介だな」


異形が黒い魔力を放つ。


衝撃波。


士郎の身体が吹き飛んだ。

木々を砕きながら滑る。


リゼが駆け出しそうになる。


だがレオンが止めた。


「行くな!」


その瞬間。


煙の中から士郎が歩いてくる。


額から血。

コートは裂けていた。


だが。

笑っていた。


「いい」


低い声。

楽しそうだった。


異形が初めて動きを止める。

本能が警鐘を鳴らしていた。


危険。

目の前の人間は危険。


士郎が歩く。


一歩ごとに圧が増していく。


レオンが息を呑む。


まただ。

この男、本気になるほど空気が変わる。


まるで。

人間じゃない何かが出てくるみたいに。


異形が咆哮した。


黒い魔力が膨れ上がる。


地面が腐る。


リゼが震える。


「なにあれ……!」


レオンが険しい顔をする。


「魔族特有の呪力だ……!」


異形が突進。

黒い腕が士郎を貫こうとする。


だが。

士郎は避けない。

真正面から踏み込む。


拳。


ドゴォォォォン!!


異形の上半身が吹き飛んだ。

木々を突き破り、地面を転がる。


沈黙。


リゼが呆然と呟く。


「……え?」


レオンも絶句していた。


今の一撃。

明らかに威力が違った。


異形は上半身を再生しながら立ち上がる。


だが。


その目に初めて恐怖が宿っていた。


士郎は静かに言う。


「お前、弱いな」


異形が後退る。


ありえない。


魔族である自分が、人間に恐怖している。


士郎はさらに前へ出る。


「終わりか?」


異形が叫ぶ。

怒りとも恐怖ともつかない声。


そして。


逃げた。


森の奥へ。


リゼが目を見開く。


「逃げた……?」


レオンは顔をしかめる。


「魔族が……」


士郎は追おうとして、止まった。


違和感。


森の奥。

もっと深い場所から、別の気配を感じたからだ。


重い。

冷たい。

異常な“何か”。


士郎の目が細くなる。


その時。

頭の奥で、声がした。


――見つけろ。


士郎の動きが止まる。


レオンが気づく。


「どうした」


士郎は数秒黙った。


そして。


「……いや」


気のせいか。

だが妙だった。


今の声。


どこか、自分の内側から聞こえた気がした。

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