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父とぶどうジュース  作者: kumako


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(4)父のリハビリ

父が骨折してからの日常です。

 父は最近、1冊の小説を読み終えた。山本周五郎の「季節のない街」。

 今は、夏目漱石の「三四郎」を読んでいる。


 骨折して外に出られなくなった父は、縁側で日向なぼっこをする時間が多くなった。

 それ以外の時間は、介護ベッドで寝ている。

 最近は、警戒していた在宅リハビリなども受け入れるようになって、ベッドでマッサージなどをしてもらうと、気持ちよさそうにしている。


 父がどんどん介護や看護を受け入れるようになってくる……そのことにたいして、わたしは微妙な気持ちである。

 父が「立って歩きたい」とか「絵を描きたい」という気持ちを失ってしまったら、それは父にとっては、緩慢な死である──と、わたしは思う。

 わたしは、父が看護や介護にたいしても反抗的な気持ちでいつづけることを望んでいる。

 だから、父が介護や看護を受け入れることにたいしては微妙な気持ちなのだ。

 例えば、父はリハビリで歩行器を使うことについても、当初は難色を示していた。

 それを……わたしは、良いと思う。

 せめて杖をつくだけで歩けるようになったら、というのはわたしの思いでもあるのである。


 父は、しだいに看護や介護も受け入れるようになったが、わたしは依然として父をほとんど手伝わない。

 夜の間は、入浴の介助やトイレの介助をする。

 でも、昼間のあいだは、父がよたよたと歩くのを残酷に見守る……だけ。

 手伝わない。

 手伝ってしまったら、父が弱くなってしまう。

 父がわたしをどう思っているのかは、分からない。

 冷たい娘だと考えているかもしれない。

 ただ、父を今手伝ってしまったら……父はほんとうに弱くなってしまうのではないだろうか? そのことが怖い。


 今日は、親子丼を作った。

 父は、最近食欲がめっきりと衰えているのである。

 そんななかでも、親子丼のような消化の良いものであれば、父は肉類でも食べてくれる。

 父は肉が嫌いだ。そんな父が、唯一食べてくれる肉料理が、親子丼。

 父には、なるべくたんぱく質を多く摂ってほしい。

 でも、なかなかそうはうまく行かない。なだめたり、すかしたりしないと……

 親子丼を、今日はぜんぶ食べてもらえた。

 最近食欲がなかった父にとっては、意想外のことでもある……。


 父が眠りにつく。

 夜、トイレの介助に起こされる。

 わたしは、眠っていても逆につらいから、起きている。

 起きていて、父が介護ブザーを鳴らすたびに「今行くよー!」と、父のもとに駆け付ける。

 父は、寝ぼけていて、今何時かも分からない。昼なのか? 夜なのか? という状態である。

 足取りはおぼつかない。

 昼間はなんとか自分でトイレにも行けるが、夜はそうは行かない。

「だいじょうぶ? 今日はちょっと足取りがしっかりしているね? 元気だよ?」

 そんな言葉をかけるのにたいして、「うん」「ああ」と言葉少なに答える。


 父を抱えてトイレに連れて行ったあとは、お湯を湯飲みで飲んでもらって、父が落ち着いたあとに布団をかける。

 この間、15分くらい。

 たいした時間ではない。

 でも、わたしのこころはぐったりと疲労している。

(父はほんとうに大丈夫なのか?)という思いが、わたしの心をさいなむのである。

 父は眠る。

 そしてわたしも眠るのだが……眠れない。

 そして、朝と昼を迎えるのである。


 ──


 父の朝食を作り、わたしは仮眠。

 父は朝食を食べ終え、しばらく座椅子に座っている。

 テレビがついていることもあれば、ついていないこともある。

 わたしは眠る。

 父が朝食を食べた後の時間が、わたしの本当の睡眠なのである。

 その間、1時間か2時間……

 わたしがうとうとしていると、父は立って縁側に行っている。

 さしている日差し。あたたかな縁側。

 父は、何を思っているのか、日差しを浴びている……

 わたしは、また目を覚まして、父のところへ行く。

「今日の調子はどう? あんまり元気ない?」

「そうでもねえど?」

 わたしは安心する。

 そして、しばらく静かな時間が流れる。

 わたしは、父の顔、父の目を見る……

ほっとすることも多いです。^^

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