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【1章完結】歴戦将軍の二度目の無双 〜神に未来へ追放され少年になっても問答無用で我が道を行く~  作者: うららぎ
2章 剣聖アレス

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12話 シドのレベルを盗み見た


「だが、原因さえ分かればいくらでもやりようはある。対処法は、これからおいおい考えていこう」


 オレが静かに言葉を紡ぐと、アリアは涙を溜めた目でじっとオレを見上げてきた。

 そして、恐怖を押し殺すように小さく深く、何度も頷いてみせた。


「うん。そう言ってくれるなら分った……」


 必死に前を向こうとするアリアの態度に、オレは小さく口元を緩める。

 そんなオレたちの様子を、クロウはマフラーの隙間から細い目をさらに細めて眺めていた。


「おいおい、聞いたこともねえ異常の正体を一瞬で見抜いたと思えば、今度は大神殿すら否定するか。……まぁ、お前たちがここからどうするつもりかは知らねえがな」


 クロウはカウンターから肘を離すと、大袈裟に肩をすくめてみせた。

 彼自身の『看破の魔眼』をもってしても、これ以上の進展は望めないと判断したのだろう。


「お嬢ちゃんのその爆弾が、破裂しねえようにせいぜい頑張ってくれや。じゃあな、面白い坊主」


 クロウはひらひらと軽薄に手を振ると、オレたちの横を通り抜けていく。

 引き止めようとオレが視線を動かした次の瞬間には、彼の姿はロビーの薄暗い夜の闇へと文字通り音もなく溶けるように消え去っていた。


 さすがはS級の盗賊というべきか、こちらの索敵すら欺く完璧な気配の断ち方だった。

 オレはクロウが消えた出入り口を睨み据えたまま、腰の黒剣からようやく手を離す。


「シドくん?」

「……気にするな。ひとまず今日は宿に戻って休むぞ」


 アリアの寿命という明確なタイムリミットは突きつけられた。

 だが、慌ててこの街を飛び出したところで、現代の魔法の常識しか持たない他の土地で手がかりが見つかるとは限らない。

 まずはサンブロスに留まり、明日トロールの報酬を受け取ってから、アリアの身体をどうにかするための手段をこの街でじっくりと探そう。


 オレはアリアを促して歩き出し、ギルドの重い扉を押し開けて夜の街へと踏み出した。


 ◇


 深夜の静寂に包まれたサンブロスの町から、遠く離れた街道の闇。

 完全に気配を消した状態で、荒い呼吸を整えるように深く息を吐き出した。


 背後に広がる町を見下ろし、改めてシドとアリアという存在を明確な脅威として感じていた。

 正直に言えば、ギルドのロビーにいたあの時間は生きた心地がしていなかったのだ。


 姿を現す前からただのガキだと思っていたシドからは、肌を刺すような濃厚な威圧を感じていた。

 だが、実際に目の前に立ってからは凄まじい『威圧』に加えて、その奥に隠すように本物の『殺気』まで混じっているのを察知して焦る羽目になった。

 あの瞬間は、冗談抜きで気が気じゃなかった。


 他人の詳細なステータスを魔眼でわざわざ覗くような真似はしない。

 情報を得れば戦いは有利になるが魔眼による看破は相手のレベルが高いとそれなりの魔力を消費するため、勘の鋭い強者には『何かをした』と一発で露見する。

 隠密が生命線の身にとって格上のバケモノを覗き見る行為は、その場で首を刎ねられかねない自殺行為でしかなかった。


 しかも、固有の看破でレベルや能力の底まで見抜くには、対象の『半径2メートル以内』という至近距離まで接近しなければならないという絶対の制約がある。


 異様ともいえる『威圧』を放つシドに、理由もなく近づくなど絶対に不可能だった。

 だからこそ、『アリアの体内を診る』という大義名分を利用したのだ。


 アリアを視るためという名目で二人の懐へと堂々と近づき、半径二メートルの内側へと滑り込む。

 そうしてアリアの身体に魔眼の焦点を合わせながら、その視界の端で本命であるシドのステータスを同時に盗み見ることに成功した。


 近づいて読み取ったアリアのレベルは42であり、冒険者の基準で言えばそれほど大した数値ではない。


 だが、その直後に視界に浮かび上がった魔力量を見た瞬間、ただ絶句した。

 現在、世界に君臨するS級の魔法使いですら、その魔力総量は900で限界だと言われている。

 それなのに、あの少女の魔力量は『2万』を軽く超えていたのだ。


 桁が二つも違う異常事態だ。

 しかも、シドの理屈が本当で魔力を制御するための蓋とやらが壊れているのだとしたら、もう何が起きるか全く分からない。

 そんな規格外の人間爆弾がのうのうと歩いているなど、恐ろしすぎてこの町から今すぐ離れるしかないと本能が叫んでいた。


 しかし、本当の衝撃を与えたのは、もう一方のステータスだった。

 ただの口が生意気なガキだと思っていた、シドの数値だ。


 アリアをダシにして視界に収めたシドのレベルは『4042』を示していた。

 頭の芯が激しく揺さぶられ、目眩さえ覚えるほどの異常値だった。

 あまりの動揺にバレそうになり、他のステータスが確認できずに不覚としかいいようがない。


 これまでギルドの各拠点を回ってきたが、階級には大体のレベルの目安というものがあった。

 F級ならレベル1以上、E級なら20以上、D級で40以上、C級で60以上、B級なら80以上。そして、A級が100以上で、S級ともなれば300以上。

 特にA級とS級の差は大きく、S級以降は文字通り国家レベルの戦力になる。

 それでもS級の内部で強い者と弱い者の差が非常に大きいのは、本人の持つ能力による部分が大きいからだ。


 レベルの上限は999だろうというのが、すべての冒険者の共通認識であった。

 それが、今まさに根底から崩れ去ったのだ。

 

 現在のS級で最強と呼ばれているあの男ですら、レベルは『917』止まりだ。

 レベルだけで強さが決まるわけではないが、強さの指標として間違っていたことはほとんどない。

 隠密特化であるこの身ですら、血の滲むような死線を潜り抜けてようやく『619』に到達したというのに、そんなバカげた数値があり得るのか。


 そしてふと思い出す。

 最近、変異種を倒したアレスという奴が冒険者ギルドに登録されていた。

 変異種を倒した実績でA級に登録されたがレベルは『142』だったからだと聞いている。

 だが、S級に近い『暁の太陽』の3人ですら変異種に敵わなかったとギルドの調査で分かっていた。

 142程度のレベルで倒せるとは到底考えられない……。


「何がどうなっていやがる。レベルは簡単に上がるもんじゃないんだぞ。ワケが分からねえよ!」


 誰もいない夜の荒野で、自身の震える両手を見つめながら乾いた笑いを漏らした。

 F級の新人などという肩書きは、あの怪物にとってただの薄っぺらい飾りに過ぎない。

 やはりギルドの階級よりも、看破によるステータスの開示が一番信頼できる。


 これ以上あの二人に深入りすることは不要だろう。

 音を殺しながらエルナザムの方向へと、弾かれたように夜の闇を駆け抜けていった。


ココだけの小ネタ。

基本的に人間と魔物では同じレベルでも強さは異なります。(指標にはなるというのはそのため)

ちなみに100年続いた過去の魔王戦では魔王のレベルは1840です。

聖水の効果でレベル840となってしまい、人類はかろうじて魔王を封印できました。

トロール変異種は魔王の血を受け耐え抜いた個体でレベル300です。

通常のトロールはレベル90でB級の冒険者がPTで倒せる程度の強さです。

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