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歴戦将軍の二度目の無双 〜神に未来へ追放され少年になっても問答無用で我が道を行く~  作者: うららぎ


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9話 ワシは山で起きた爆発を見た


 巨鬼(トロール)の変異種を討伐しに来たというルードルたち。

 各地の冒険者が返り討ちに遭っているという報告を受け、ギルドから急遽派遣されたのだろう。


「一応、村長から話は聞いたんだけどね。倒されたってさ。それも、やったのは子供だって言うんだ。……さすがにそれは無理がある。そうだよね、レリア?」


 ルードルが試すような好戦的な視線をレリアに向けた。

 暗に『実際に倒したのは貴女だろう』と言いたいわけか。


「ええと……倒したのは……」


 レリアがワシの名を出そうとしたその時、村の周囲の草木を激しく掻き分ける音が鼓膜を叩いた。

 何が来たのか、ワシには既に分かっていた。

 だが、どうしてこうも懲りずに戻ってくるのか。


「村長さん、家に戻って絶対に外に出ないで!」


 気配を察したルードルが叫ぶと、村長は慌てて家の中へ逃げ込んだ。

 次々と姿を現す豚鬼(オーク)の群れ。

 明らかに前回よりも数が多くなっていた。


「雑魚が何匹来ようが、雑魚に変わりはねえだろ!」

「ジルガン、油断しないでください。数が多すぎる……数百は軽くいますよ」


 ホルミの忠告を、ジルガンは鼻で笑い飛ばしている。

 オークの大軍を前に戸惑うレリアが、ルードルに指示を仰いだ。


「私たちはどうしましょうか」

「二人は、家に向かってくるオークを相手にしてくれればいい!」

「はい、分かりました!」


 レリアはルードルたちとは反対方向へ視線を向け、周囲を警戒しながら後退した。

 ワシもやむなくレリアに続いて移動する。


「シド君、無理はしなくていいですからね!」

「……ワシの出番などないだろう」


 ワシらが距離を取ったのを確認すると、ルードルは不敵な笑みを浮かべて吼えた。


「オークごときが、我ら『暁の太陽』に牙を剥くというなら教えてやろう。ジルガン! ホルミ! 敵にする相手を間違えたということを教えてやろう!」

「だな!」

「承知しました」


 ルードルの宣言に二人が応える。

 二人が地を蹴ると同時に、後方でホルミが呪文を紡いだ。


光球(ライトボール)!」


 突如、虚空に現れた光の球が周囲を昼間のように照らし出し、オークどもの動きを止める。

 あまりの眩しさに、豚面どもが目を細めて怯んだ。

 そこへ、畳みかけるようにホルミの次なる魔法が放たれる。


氷嵐(アイスストーム)!」


 広範囲を覆う氷の嵐が豚鬼(オーク)の大群を貫き、瞬時に氷像へと変えていく。残った数体をルードルとジルガンが確実に仕留める。実に見事な連携だ。敵はほぼ壊滅したといっていい。


 ルードルたちの包囲を抜けて家に向かってきた数体に対して、ワシは一歩踏み出す。

 そして、気を込めた威圧を放ってやる。

 それだけで豚鬼(オーク)の動きが凍りつく。

 腕を振り上げたまま硬直した個体をレリアが不思議そうな顔をしながら、手にしたメイスで叩き伏せて終わった。


「やるではないか」

「……豚鬼(オーク)が一瞬、止まったように見えたのですが」

「そういうこともあるだろう」

「そうですか? まあ、倒せたからいいですけど」


 合流した暁の太陽の面々は、大群の割に手応えがなかったと口々に漏らしていた。


「手応えが無かったね」

「ただの雑魚だろ。そんなもんあってたまるかよ」

「私の魔法でほとんど全滅しましたからね。物足りなければ、別の依頼でも探しますか」


 実際に剣を振るったのが数体であれば、そう感じるのも無理はない。

 だが、雑魚相手とはいえ、その手際の良さ……さすがはAランクというべき手腕か。


「ありがとうございます! あの数の豚鬼(オーク)を、これほど早く倒せるなんて思いませんでした」


 レリアが感心したように頭を下げる。


「これくらい、どうってことないよ。ジルガンとホルミがいるからね。さすがに、あんな大群の豚鬼(オーク)を相手にしたのは初めてだったけどね」

豚鬼(オーク)は一度逃げたのですが、より大きな群れを連れて戻ってきたのです」


 レリアの言葉にホルミが鋭い視線を向けた。


「気になったのですが村から追い払われた豚鬼(オーク)は、巨鬼(トロール)の変異種を連れて戻り、それを君たちが追い払ったと聞きました。そして今回、また豚鬼(オーク)が戻ってきたということは……」


 薄暗い闇の中、さらに上空の影が濃くなった。

 直後、山の方で爆発のような轟音が響き黒煙が上がる。

 凄まじい振動と共に、巨大な何かが山を転がり落ちてくるような音が迫ってきた。

 何かに気付いたホルミが叫び声を上げる。


「いけません、岩が迫ってきています! 私が魔法盾(シールド)を張ります。漏れたやつはルードルとジルガンで頼みます!」

「おいおい、なんだよ岩って! なんであんな山から!」

「ジルガン、雪崩落ちてくる岩に備えてくれ! 魔法盾(シールド)だけじゃ防ぎきれるか分からない!」


 ホルミが詠唱を完了すると、半透明の分厚い膜が前方に展開された。

 ルードルが矢のような速さで岩へ駆け寄り、その剣の一振りで巨岩を切り裂く。

 その後ろではジルガンが大盾を構えて、残った岩に体当たりを食らわせて粉砕していく。

 小さくなった岩のつぶてをホルミの魔法盾(シールド)が受け止め、事態は何事もなかったかのように収束した。


「……なかなかやるではないか」


 ワシは小さく独りごちながら、シールドを抜けてきた人の頭ほどの岩を黒剣で事もなげに斬り落とした。

 レリアはワシの前で武器を構えて守る態勢を取っていたが、岩が止まったのを確認して顔を輝かせた。


「無事に、岩を処理できましたね!」


 安堵するレリアとは対照的に、ワシの意識は山の斜面に目を離さずにいた。


「シド君? どうかしましたか」


 ワシは山に岩が当たった方を見ると、埋め込んだ鱗が少し気になった。

 だが、それよりも前にやらなければいけないことが増えたようだ。


「残念だが……あの岩を投げた(・・・)本体がお出ましだぞ」


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