十話 家来の犬と戯れる桃太郎
竹仲を連れて戻る二人
柴を乗せた馬の様な生き物を引きながら、桃太郎は兵庫側に向かって歩いて進む。
その後をヒィヒィ言いながら、竹仲が付いて来る。
「おぅ!?おー!うぉっ!?ふぅ……」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「そりゃっ!うわっ!ぎゃっ!」
「ヒィーーーッ!」
竹仲はずっと騒いで移動している。
「おぬしも騒がしい奴じゃな」
と、桃太郎。
「いやいやいやいやいやいやいや……楽勝で進む貴方がおかしいのよ……」
と、呆れて言う柴。
「だよね?だよね?だよね?うわっ!ふぅ……」
と、同意を求める竹仲。
たまに巨大な獣が襲い掛かってくるが、桃太郎は難なく叩き斬る。
「頼りにならん家来じゃのぅ……」
と、ため息を吐きながら言う桃太郎。
「そう思うのなら家来を辞めさせても良いから」
不服を申し立てる柴。
「さて、そろそろ森を抜け出る頃じゃぞ」
そう二人に告げる桃太郎。
「「本当に!?」」
同時に喜びの声をあげる柴と竹仲。
「良かったぁ……」
柴は涙ぐんでいる。
「うっ……うぅうっ……グズッ……」
竹仲は既に涙を流しながら歩いている。
「ほら、見えてきたぞ」
そう告げる桃太郎。
「やった!助かった!よ……よ゛がっ……だぁ……」
竹仲は大森林の木々の隙間から見える正常な日本の地を見て、顔を崩して大泣きになった。
「もっ……もう…二度と……来ない……」
柴も涙を堪え切れなくなって涙を流している。
「大袈裟な奴等じゃ……」
と、ため息を漏らす桃太郎。
大森林を抜け出ると、警備の自衛官の碇矢達や警察官の内村達が居た。
自衛官の面々は、巨大な獣の襲撃前と較べると、かなり重装備に変わっている。
小銃だけで無く、ロケットランチャーやバズーカ砲も準備されていた。
戦車も一台 見えている。
「内村さん……」
内村を見て、安堵して声を出さずに泣き崩れる柴。
それを見て、自衛官や警察官は、かなり大変な状態だったのを察する。
「おかえりなさい。柴巡査部長」
笑顔で迎える内村。
「いっ…生ぎで…がえ゛れ゛ま゛じだぁ……」
涙を抑えて話そうとするが、涙の止まらない柴。
「こちらの人は?」
と、竹仲を見て言う内村。
はっと我に返る柴。
「ジャングルで遭難されていた竹仲さんです。救助したので、戻って参りました」
と、内村に答える。
「竹仲です!今回はありがとうございました!」
周囲の警察官や自衛官にペコペコと頭を下げながら言う竹仲。
「助け出したのは儂じゃがのぅ……後 そろそろ降りろ」
そう呆れながら言う桃太郎。
「あっ!ごめんなさい!」
と、馬の様な生き物から降りる柴。
「飯でも食ってから、また戻るかのぅ……」
そう柴に桃太郎が告げる。
「え゛っ……戻るの?」
と、柴が最大限の嫌な顔をして桃太郎に聞き返す。
「おぬしが行きたいと言ったのじゃぞ」
怪訝な顔で応える桃太郎。
「確かにそう言ったけど……」
やっと泣き止んだのに、半泣きの顔になる柴。
そのやり取りを見ていた内村が二人に声を掛ける。
「取り敢えずご飯にしましょうよ」
「そうじゃの……」
と、桃太郎。
クゥ〜〜〜〜〜ッ
「そっ!そう言えばお腹が空いたよね!」
と、腹の虫を鳴らしながら応える柴。
「こちらにどうぞ」
二人を案内する内村。
「あ、はい」
と、桃太郎を伴って柴は付いて行く。
「お弁当です。好きなのを選んで食べて下さい」
積み上げられたお弁当の前で内村が言う。
「丁度 私達もご飯にしようと思っていたんです」
と、内村もお弁当を取る。
「そんな事が有ったんですか……」
ご飯を食べながら、大森林での出来事を聞いて絶句する内村。
「巨大な鬼など、恐ろしい怪物の巣窟ですか……」
と、内村。
「はい。そいつらが何度も何度も何度も何度も……」
と、柴が答える。
「よく生き残れましたね……」
と、柴に声を掛けながら、柴の横に座る桃太郎を見る。
「はい。私一人なら死んでいました……」
そう素直に認める柴。
「そして、本物の桃太郎ですか……三代目の桃太郎……」
そう桃太郎に問い掛ける内村。
「だから、ずっと桃太郎だと申しておったろう」
と、怪訝な顔をする桃太郎。
「そして、【きびだんご】を食べて家来になったと……」
柴を見て言う内村。
「はい。それでこんな物が首に……」
と、内村に首を見せながら言う柴。
「【きびだんご】とは、家来を作る為の従属の魔法と言う事ですね?」
桃太郎に問い掛ける内村。
「そうじゃ…【キビダンゴ】とは、主従の繋がりを作ってくれる魔法じゃ」
そう内村と柴の二人に答える桃太郎。
「魔法ねぇ……」
と、半信半疑な内村。
「こんな事も出来るぞ」
桃太郎は、そう言って柴を見て
「お手!」
と手を差し出して言う。
パシッ!
その差し出された桃太郎の手に、自分の手を重ねる柴。
「えっ!?なっ!?なにぃ〜〜〜〜っ!?なんなの!?」
無意識にしてしまった自分に驚く柴。
「おすわり」
と、柴に言う桃太郎。
すると、大急ぎで座っていた椅子から降りて地べたに座る柴。
「!?!??なっ……!?!?なっ……」
自分の行動にわなわなと震えて驚く柴。
「『死ね』など絶対に嫌がる事はさせられんがの……この程度の事なら強制させられるぞ」
と、笑いながら言う桃太郎。
「こんな事だって嫌よ!」
半泣きの柴。
それを見ていた内村がボソリと言う。
「これって法律的にどうなんだろう?!」
苦々しい顔を、柴と内村がする。
「まっ……魔法って時点で、証明が難しいよね……」
と、間を置いて言う内村。
「そうですね……」
諦め加減の柴。
「取り敢えず、今日は後は本部に報告に戻られたらどうでしょう?」
と、柴に提案する内村。
「そうですね。そうします」
落ち込みながら言う柴。
「本部か?よく解らんが面白そうじゃの……」
そう言いニヤニヤしている桃太郎。
「はぁ………………」
大きなため息を吐く柴。
大森林からは、正体不明の獣の鳴き声が、無数に木霊している。
今度は大森林から兵庫に場面を移します。




