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雀の声がする。嗅いだことのない濃い空気の臭いが鼻を刺す。目を開けると、信じられないほど高い茅葺の天井が天に向かって窄まっている。ガラスのはまっていない格子窓からは、朝の白い光が差し込んでくる。
布団の中は快適で、真広はもう一度夢の世界に落ちていこうと決め込んで頭からかぶりなおすが、体が光に反応してしまってどうにも寝られない。仕方なく、上半身を起こす。板壁、かかまど、土間の順番に、古いはずなのに真広にとっては目新しいものが目に飛び込んでくる。
そこはまるで、東洋の昔話の世界だった。
囲炉裏では、昨日の残り火がくすぶり、自在鉤にかかった鍋の中では、残り物の汁が味噌の香りを放っている。現実とはかけ離れた光景。
布団の上で上半身を起こしたはいいが、真広の体は疲労に沈んで、ここがどこだったかとか、なぜここにいるのだったかなど、大事な記憶が全て抜けている。
ぼうっとした頭のまま鍋の方へと這い寄った真広は、その辺に転がっていた木製のお玉で、鍋の一口中身をすする。布団から囲炉裏までの間にイリックを踏みつけたような気がするが、一瞬苦しそうな声が聞こえただけで、あとは変わらず寝息を立て続ける。
熾火でゆるゆるとあぶられていたせいか汁はぬるいが、静謐で清浄で、差すように冷たい朝の空気のせいか、非常にうまい。胃の中から温まるようだ。
胃の中に食べ物を入れたせいか、だんだんと頭が働いてくる。ここがどこか、どうしてここまで来たのかなどが、次第に思い出される。
ここは、リーシャの村で、真広たちは昨日の午後、約一週間の強行軍の後、気を失ったリーシャを抱えて這々の体でようやくたどり着いたのだった。よく見れば、体中あちこちに細かい傷ができている。足も、筋肉が悲鳴を上げている。
我ながらよくたどり着けたものだと、少し感心する。
気になるところが多々出てきてしまったので、しばらくは新規・修正の2足の草鞋で行こうかと思います。




