表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空白記号~機械仕掛けの女神と幻想世界~  作者: 凉月
幸福な街と機械仕掛けの女王
16/43

5-1

「え……っと? 一体何を……」

 家の中を水浸しにして真広たちを溺れさせたかと思えば、突然態度を一変させたリーシャに戸惑い、真広が恐る恐る口にしたその言葉は、尻切れトンボで終わる。

 コンコンコンと、規則正しく扉をたたく音が、玄関の方から聞こえてきたのだ。その音は、まぎれもなく来客を知らせるノックの音だった。こんな状態のところに、誰が何の用だというのか。それに、用事ならノックをするのではなくチャイムを鳴らせばいい。

 コンコンコン。またノックの音が聞こえる。普通のノックよりもなぜだかよくとおるその音に、誰も動けない。

 ガン! ガシャン! カランカラン……

 三度目に聞こえてきたのは、ノックではなく、明らかな破壊音だった。風雲急を告げる事態に、まったく頭がついていかない。そうこうしているうちに、来訪者が、扉をくぐって真広たちの居る部屋に姿を現す。最初に見えたのは、無骨な銃口だった。人間が扱うには少し大きめなそれの後には、当然銃本体と持ち主の姿が続く。扉から現れたのは、手や足、体のうち、体の動きを邪魔しない部分にはプラスチックが張られ、関節部分からは防弾板の端がはみ出ていて、その奥にはカラフルなケーブルの束や、金属の骨格(フレーム)が見え隠れしている。一言で言い表すならば、筋骨隆々な戦隊ヒーローと言ったところだろうか。ただし、筋肉が発達しすぎているせいで、ユニフォームが破ける寸前だが。

 バグだった。威圧感を消す為に本体の上から張られた色とりどりプラスチックの化粧と、これまた威圧感を抑える為にプラスチックのカバーで覆われた銃と言う組み合わせが、何度見てもシュールで金属むき出しの状態よりも威圧的に見える。それが、屋内なればなおさらだ。

 一体何の用事があって来たのか。その問いが、再び真広の頭の中に浮上してくる。そして、問に答えるかの如く、バグは抱えていた巨大なサブマシンガンの遊底を大層難儀そうにゆっくり引く。そして、狭い場所に特化した装備なのか、街中で見るマシンガンよりも大分短い銃口を、真広たちに向ける。警察機構であることを示す為に胸に取り付けられた徽章が、窓からの光を受けてキラリと輝く。真っ暗な銃口の中に、魂が吸い込まれてしまいそうだ。

「ハァア!」

 死神の口に魅入られていた真広の意識を現実に引きも押したのは、リーシャだった。剣を床に置いたまま、素手でバグに飛びかかっていく。テレビを見るように現実感の乏しい頭でその動きを追う真広。その後ろでは、同じようにクシャナ、伊織、イリックの三人の顔も、リーシャの動きに合わせて横に動いている。

 バグのましたまで一足飛びに飛んだリーシャは、キュキュッという靴とすっかり水の引いた床が擦れる音を残して、真っ直ぐ上に飛び上がる。驚異的な脚力を発揮し、見上げるほどもあるバグの肩に飛び乗ると、ポケットに手を入れて先ほどのガラス玉の内赤いものと、飴をいくつか手に取り、プラスチックと防弾板の隙間からバグの右肩に放り込む。当然、バグは腕を振り回してリーシャを肩から落とそうとするが、その頃にはリーシャは床に帰還して、何やら小さな声で唱えている。リーシャにさらなる追撃を加えようと、バグがサブマシンガンの銃床を振りかざすが、その途中で、パリンと小さな音が聞こえた。おそらく、リーシャの放り込んだビーズが関節の動きに巻き込まれて割れたのだろう。

 耳と目を聾する爆炎と爆音が吹き上がったのは、その時だった。バグの上半身にあるありとあらゆる関節からオレンジ色や青色の炎が吹き上がり、活火山のような様相を呈すると同時に、鼓膜が破れそうな音と衝撃が襲ってくる。上半身を松明にされたバグは、慌てふためき火を消そうと暴れるが、動けば動くほど火の粉が飛び散り、表面にあるプラスチックの化粧板につい次と燃え移る。

 この世の終わりが来たような勢いで全身を叩きまくるバグとは反対に、リーシャは落ち着き払って部屋を出て行く。どこに行くのか、止めた方がいいのかと思案するが、どのみちどちらも不可能だ。それよりも、火を消そうと必死のバグがこちらに意識を向けないように祈るしかない。

 リーシャは、すぐに帰って来た。ただし、手にはお土産を抱えている。それは、玄関の靴箱に入れてあったはずの、真広の運動靴だ。それを持って真広たちのそばまで来ると、リーシャは何事もなかったように、靴を履き替え始める。今まで履いていた伊織の靴を脱ぎ棄て、ついでに靴下も脱ぐ。靴のサイズがあっていないことは、それを用意した真広たちも知っていたが、リーシャの足はあちこちが赤くなり、相当無理をしていたことがうかがえる。その足を真広の靴に突っ込み、靴紐を思い切り縛り上げて、大きめの靴を無理やり足にフィットさせる。

 そして、右手だけで器用に服の右側にある縫い目を壊していく。やはりサイズが小さかった伊織の服を、脇腹から首まで引き裂き、ただの布に戻してしまう。それを臍の上までまくり上げ、布地に余裕を作ってから肩、あばら、脇腹のあたりに結び目を作って、もう一度服に戻す。服が出来たところで剣を拾って杖にして、リーシャはニッコリを笑う。

「お待たせいたしました」

 水に擦れたその姿色っぽく、どう返せばいいのかわからない真広は、ぽかんと口を開けていることしかできない。リーシャの後ろで、ついに配線が焼き切れたのか、バグが家を震わせながら、倒れた。

修正だけで終わらせるつもりが、結局5部も全て書き直しましたとさ。

純度100%の書き直しを果たして修正と呼ぶのか・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ