第2話 宵待杏子
「イタコって、どういう事ですか?」
「最近の子はイタコの事なんて知らないかい?」
楯川霊霞の疑問に宵待杏子は質問を質問で返す。
「確か、霊媒師か何かでしたか?」
「そんなところだ、主に青森の辺りで活動する女性の降霊術師だよ」
そうなのか。名前ぐらいは聞いたことがあったが、ずっと関西で育った霊霞にはイタコなど縁遠い存在だ。
「いや、私が訊きたいのはイタコになるというのは、どういう意味なのかって事なんですけど」
「そのまんまの意味さ。イタコってのは盲目の女性がなるものだからね」
「盲目......それで私にですか。でも、今時イタコって」
「くっくっく......」
胡散臭そうにしているだろう霊霞に、宵待は突然笑い出す。
「な、何が可笑しいんですか?」
「いや、あまりにありきたりな反応でな。若い子はみんなそんな顔をするんだよ」
(若い子って......)
杏子が何歳なのかは顔が見えないので知る由もないが、彼女もそんな歳ではないだろう。声から判断するに二十代か三十代くらいのはずだ。
それでも、今年15歳になる霊霞より年上なのは確かだろうが。
「いずれにせよ、私は霊魂なんて信じていませんよ。人は死ねばそれまでです」
「人が死んだらそれまでってのはあたしも同感だ。イタコってのはね、残された人のために居るんだ」
「......良く分かりません」
「だろうね。......魅せてやるよ、闇の中でも見えるものがあるって事を」
そう言って、杏子は霊霞の手をとった。




