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第1話 楯川霊霞

 くらい、くらい、くらい、くらい、くらい。

 視界には一筋の光も無い。真っ暗だ。私の人生同様に。

 


 結局最後まで馴染めなかった部活動を引退し、嫌々ながら高校受験の勉強を本格的に始めようとしていた、そんな時だった。楯川霊霞たてかわりょうかがその事故に遭ったのは。

 あの日の事故により霊霞の人生が一変した。……なんて語るつもりもない。

 トドメを刺されたと言うべきだろうか。引導を渡されたと言ってもいいか。

 霊霞は一命を取り留めたものの、事故の後遺症により視力を完全に失ってしまった。


(どうせなら、そのまま終わらせてくれれば良かったのに)

 事故の前から先行きの見えない不安は感じていたが、まさか物理的に見えなくなってしまうとは思いもしなかった。



 病室を抜け出した霊霞は屋上に来ていた。

 確かこの病棟は6階建のはず。飛び降りれば充分に死ねる高さだろう。


「……死のう」

 霊霞が呟いた、そんな時だった。


「そう早まるなよ」

 いつの間にか背後に立っていた人物に声をかけられた。


「!」

 驚いた霊霞は咄嗟に振り向く。振り向いたところで、その姿を見ることなどできやしないのだが、癖というのはそう簡単に抜けない。


「……誰?」

 声からすれば女性のようだが、この病院の医師や看護師のものではない。いや、霊霞もこの病院に勤めている全員を知っているわけではないのだが、少なくとも聞き覚えはない。


「あたしは宵待杏子よいまちきょうこ。よろしくな」

 霊霞の質問に彼女は馴れ馴れしくそう名乗る。


「……止めないでよ」


「止めるも何も、どうやって死ぬんだ? 投身自殺をしようにも、その目じゃ、フェンスは乗り越えられないと思うけど」

 そうだ、こうも簡単に屋上に出られたということは、落下防止用の柵が設置してあるのは当然じゃないか。

 だが、そんなことよりも。

 彼女は霊霞が盲目だと知っていた。ならば病院の関係者だろうか、面倒なことにならなければいいが。

 そんな霊霞の思索は、杏子が続けた言葉で吹き飛んだ。


「あんた、イタコにならないか?」


「……はい?」

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