第十二話 裏舞台
二日に一話は最低でもね、投稿したいなぁとかほざいてましたが、三日経ちましたね。
熱出てました!!!あと、あとがきクソ長いです!!
現在日時:二〇二二年 四月二五日 〇四時〇四分
場所:東京港
──霜止出苗。
霜が降りなくなり、稲の苗がすくすくと育つ頃。本来、静まり返った港で響くはずのない音がした。──銃声。それも二発。
コンテナクレーンの上に陣取る青年が、呆れたように呟いた。
「まったく。威嚇射撃なんて、今となっては遅すぎるだろ」
──花霞植捕。
花霞家次男であり、テロリスト『村雨』の残党狩りを任された実力者の一人。彼は右手で携帯を操作し、麗咽に随時連絡を入れるようメッセージを送った。
跳躍。
全長八〇メートルのクレーンから迷いなく飛び降り、空中で能力を発動する。巨大なハエトリグサが顕現し、半径五メートルの範囲を無慈悲に噛み砕いた。
「なっ!」
銃を持った男が殺気に気付き、辛うじて背後へ跳ぶ。だが、遅れて気付いた女に幸運はなかった。次の瞬間には、彼女のいた場所は飛び散る肉塊と化していた。
月明かりの下、コンクリートブロックと深紅の血肉をバリボリと咀嚼する植物型の怪物が、不気味に照らし出される。男は気圧されたのか、半歩下がりながら銃口を向けた。
「あんまり、俺も能力は使いたくないんだよね」
男の背後から、植捕が静かに声を掛ける。
植捕の異能**【人体農園】**は、自身の一部を植物化させ、細胞分裂を加速させることで植物型の器官を創り出す能力だ。だが、生成された器官は自身の肉体を苗床とするため、使用のたびに寿命を削り、肉体構造に多大な負荷を蓄積させていく。
「どう? 残党の居場所を教えてほしいんだけど」
「……仲間を売る馬鹿に見えるか?」
「見えるね。でも、思っていた以上に全員口が堅い。洗脳でもされてるのかと思うくらいにね」
パンッ! と植捕が掌を強く叩き合わせる。怪物の牙を男へと向け、宣告した。
「最後の警告だ。残党はどこだ?」
「言うはずねぇだろうが──ッ!!」
男の能力は至ってシンプル。ゆえに、特定の条件下では最強クラスの威力を誇る。
──まんまと引っかかったな!
足元の海水が唸りを上げた。
水を操る能力によって数十トンの水塊が極限まで圧縮され、半径三〇メートルを超える海水の刀身を形作る。
それは「斬る」ためのものではない。鉄を超える質量をもって、すべてを叩き潰す高密度の質量兵器そのものだ。
「潰れちまいなぁ!!」
その一撃を浴びれば、誰もが青年の即死を疑わなかっただろう。肉は潰れ、血溜まりさえ海に中和されて跡形も残らないはずだった。男は一人、高笑いした。恐怖から解放された、子供のような笑顔を花霞植捕に向けたのだ。
「ねぇ。ニヤニヤして、この人は何を見ているの?」
十一歳の少女、**香風麗咽**が、拘束された男を指差して質問した。
連絡を終えた植捕は麗咽を振り返り、優しい声色で答える。
「さぁ? どんな夢を見ているんだろうね」
植捕の能力の本質は、現存する植物のDNAを摂取することで、それを完全再現できる点にある。当然、幻覚作用を引き起こす危険な植物さえ再現可能であり、植捕自身はあらゆる植物の毒性を受け付けない。
男に散布したのは『チョウセンアサガオ』。全草に強い毒性を持ち、幻覚や意識混濁を引き起こす。重症の場合は死に至る猛毒だ。
「即効性を重視して霧状にしたけど……効きすぎだな。焦点が合っていない」
「拘束は完了。この人の喋り方はどんなだった?」
「偉そうだったよ。そして──狙いはこれ、**【赫能型移植メモリー】**だな」
女の死体から飛び出た、USBメモリーに酷似した物体。これを直接刺すことで異能因子と適合できるらしいが、よくもまあ、こんな不気味なものを体内に入れられるものだと植捕は毒づいた。
──『反転した力ッ!!』
その時、植捕の耳に見知らぬ少女の声が届いた。聞き覚えのある技名と共に、港に響き渡る轟音。
灰色に煌めく一閃。ギギギ……と、巨大な鉄の塊が軋み、空を裂いて倒れ込む。
地盤を激しく揺らす衝撃が港全域を支配した。コンクリートの地面が波打つ錯覚さえ覚えるほどの異常事態に、実戦経験豊富な植捕でさえ驚愕する。
「あっ、壊れた」
「反応が薄すぎるだろ……って、言ってる場合か!!」
植捕は麗咽を抱き抱えると、風圧で飛んでくるコンテナを蹴り飛ばし、感知した異力反応から全力で逃走を開始した。
──あの気配は零人だ! でも、あいつは今シェアハウスで寝ているはずだろ!?
記憶した地図を必死に手繰り寄せ、最短ルートで港からの脱出を目指す。
「クソッ──」
植捕の悪態を遮るように、上空へと舞い上がる数十トンのコンテナ群。彼はそれらを一つひとつ蹴り技でいなし、腰から生やした巨大なハエトリグサで遠くへ吹き飛ばした。
「Excellentッ!!」
リーク国王、シャル・リークが滞空中の植捕を捕捉した。と同時に、天から一筋の雷撃が落ちる。彼は地に着弾した雷をその手で掴み──投擲した。
────「雷速の神槍」
麗咽が声を上げる間もなかった。植捕は射線から彼女を外すため、その小さな体を地面へと放り投げる。
直後、植捕の全身を苛烈な雷撃が貫いた。
麗咽は着地と同時に地面を蹴り、敵の死角を縫って移動を開始する。その様子を確認し、シャル・リークは隷歌に似た少女の頬を優しく撫でた。
「素晴らしいな、隷シリーズ」
「……」
「だが、七家がアジトの近くまで来るとは……フフッ」
シャルは、植捕もまだ死んではいないだろうと確信していた。
「私の固有魔術を少し見せてしまったな。だが、こちらにはテロリストから譲り受けた『隷シリーズ』と仲間がいる。そして今日、私の影武者が日本に到着する」
もう、紅井捜月に計画の邪魔はさせない。必ず殺す。
「今、さっきのは何?」
「ふむ。確か、戦闘学習プログラムだったかな。今のは異能と固有魔術を組み合わせた一撃さ」
魔術。この世界では人口の七割が魔力を持って生まれてくる。特定のテーマで解釈を広げる「異能」に対し、「魔術」は学習によって手札を増やすことができる技術だ。そして「固有魔術」とは、魔力を持つ者全員が生まれながらに保有する独自の術式である。
「分かった。どうやって使えるの? その魔術は……」
「魔力も固有魔術もそうだが、術を一つでも習得しなければ、魔力を自覚することすらできないんだよ」
現在、魔術は世界から秘匿されている。
本来、魔術とは固有魔術を指す言葉であった。だが二十年前、大阪で起きた異能大災害の後、スラム化した街で頻繁に「魔導書」が見つかるようになった。それらは日本政府と御大七家によって殆どが回収されたが、テロリスト集団『村雨』や『七つの大罪』がその写しを世界にばら撒いたのだ。
「おい、お前ら……香風麗咽が港から出た。殺せ。死体はどう扱っても構わない」
御大七家は敵だ。神を名乗るのもおこがましい、低能な存在にすぎない。
「さて、始めようか。隷亡」
用語解説 魔術解説1
魔術には大きく分けて三種類あります
固有魔術
共通魔術
後天的魔術
固有魔術は本編で説明した通ですが、共通魔術に関して魔力を自認、覚醒してから誰でも使える魔術です。
強化術等がそれに当たります。
後天的魔術について、これはイメージ通り、炎や水等を操るザッ魔法って奴らですね。
本編でサラッと使用されているのだと、捜月対テロリスト集団で使われた魔術防御術式等がソレに当たります。
(習得難易度がくっっっそ高く、上位人数名があの一瞬で死んだとか言う世界の損失シーンだったりする)




