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第十話 何まじになってんの?

 四月二六日、〇一時二五分。

『そんな救いなんて、この世界には存在しないんだよ』

 こんな世界、こんな乱れた世界で。途方もない冥府を彷徨う魂は、自身の本質を理解する。

 彼は護り抜いた。守ってきた。

 抱えてきた──

 ────《幼い夢》を。

 彼の異能因子も、彼の意志の本流も、まだ休眠状態にある。

 殻に守られ、形さえ存在しない卵黄のような状態にあった。

 ──だが、目覚めた。目覚めてしまった。

 宵闇に這い寄る死は、常に生の背後に佇むものであり、生者は死に侵されることを恐れる。

 死神は風によって生者へと運ばれ、死の踊り子は世界を満たし溢れる。

 彼は告げる。終わりを告げる。名を告げる。

 名を──《    》。

 抱えたモノは、最初から存在しなかった──。

 四月二三日、二二時三〇分。

 木箱が積み重ねられ、一本の蝋燭が港の倉庫内を薄暗く照らす。箱の中には大量の銃──そして、赫能型移植メモリー。

 精鋭部隊であった『村雨』が壊滅し、残る指揮権を与えられたのはオレだけとなった。

「あの三人さえ、灰神レイトを殺せないか」

 手元にある資料に目を通し、何度も理解を試みるも、やはり納得できない。

 異能科学の分野において、能力を扱う力の源がどこから生み出されるのかは既に判明している。

 異力は、心臓から生み出される。

 ならば、この資料に記されている文書は何だ?

 まだ科学では解き明かせていないブラックボックスがあるとでも言うのか? それとも、他者からのエネルギー供給なのか。


 資料抜粋

 対象:レイト

 現象:瞳の第二覚醒


 当該個体の眼球において、発火現象を確認。

 しかし涙の蒸発や組織の炎症反応は一切見られず、通常の熱エネルギーとは性質が異なると推測される。

 これは当該個体以外では確認されていない反応である。

 また、観測されたエネルギー出力は既存の発電技術を遥かに凌駕しており、その供給量に明確な上限は見られない。

 現在、当該エネルギーは三力(異力・魔力・霊力)として肉体へ還元されているが、短時間の維持でさえ個体の崩壊を引き起こす可能性が高い。


 ──これを手にできれば、村雨の思想は叶う。

「……時間ぴったりだな」

 ギィィ……と重い物音を立て、巨大な扉が開く。

 アジトが月明かりに照らされ、場違いな豪華な衣服に身を包み、王冠を被った男が青年──連徒れんとに声をかける。

「やぁ。君がリーダーかな?」

「いや、オレは代行者だ」

「そうかい。では代行者、君の目的をまずは聞きたい」

「そうか。俺は復讐者(リベンジャー)だ」

 ──世界。

 それは絶望の器。

 それは希望の器。

 ゆえに憎しみが混濁し、羨望が止まぬ檻となる。異能という恐怖の象徴は、時に持たざる者の嫉妬を向けられる標的となる。

『この甲斐性なし! なんでお前なんて生きてんだよ』

 オレは、この世界に復讐する──。

「なるほど。では自己紹介しようか。ワタシの名前はシャル・リーク。ムー大陸の王だ」

 太平洋の奥深くに存在する、八つ目の大陸──ムー大陸。

 リーク王国はアメリカ合衆国とは違い、王家が大陸全土を支配下に置く、数少ない王権政治の国家である。

 そして、異能震災が多く発生する場所としても有名であった。

「お前の目的は?」

「世界に《《神》》を降臨させる」

「は?」

「ガイア理論を知っているかな?」

 ガイア理論──。

 地球と地球上の生物が相互に影響し合い、地球全体がまるで一つの《巨大な生命体》のように自ら環境を整えるという考え方。

「下賤な凡人共は、愚かなことに神を偶像視し、崇拝する進化の道を歩んだ」

「……」

「神は既に見えている。母も父も、先祖も、全て地球──神によって与えられた命だっ!!」

 一国の王とは思えない思想と覇気。

 こんな終末世界であっても受け入れ難いものだ。だが、その瞳には──熱と狂気が確かに宿っていた。

「で? 結論を応えてくれ。ボスは知ってるかもだが、オレは聞いてない」

「地球の《意思》を器に降ろす」

「器はなんだ? お前か?」

「説明しよう。とある一時的異能保護施設で行われた実験があった。ガイア理論を基礎として発展した思想──地球を一つの生命体、すなわち創造神と定義する実験だ。

 地球(アース)の意思を具現化、さらに物質化させて未熟な子供に取り込ませる。それにより、ある種の創造神を顕現させる。

 地球は膨大な異力・魔力・霊力の通り道であり、流れる三力すべてを扱えば、実質的な《《世界創造》》さえ可能となる。

 ──結局、その実験は失敗に終わったがね」

「ふむ。で、どうする?」

「だが、器は完成している。そして、こちらの手の中にある」

「ああ、なるほどな。だが七家には、未来予知のごとく先手を打ってくる捜月がいるぞ?」

 世界の歌姫──柔幸衣明の誘拐、および灰神零人の殺害は、紅井捜月がいなければ、戦力差や得た情報から百パーセント可能だったはずだ。

 零人(ヤツ)が最後に見せた切り札だけでは、突破できない壁だった。

 だが、捜月が最高戦力を潰し、空間操作能力者が外に出た瞬間に殺した。プランを練り直すだけでは足りない。

「そこは問題ない。断言できるよ」

「へー? その根拠は?」

「器はひとつじゃない。《《灰神レイト》》も神の器だ。客船が破壊されない限り、百パーセント達成できる」

「……ははっ、なるほどな! 捜月はどうする? 奴は厄介極まりないぞ」

「奴の能力の弱点──それは『水』だ」

 紅井家相伝──血を操り、媒介として血以外の物を創造する能力。

 紅井捜月の自傷血漿(じしょうけっしょう)は、先代のものに特性が追加され、血に触れている部位を作り替える効果がある。

 強力ではあるが、赤血球量が一定量以下に低下した場合、操作対象から外れてしまう。

「私の異能を教えよう。天候操作だ」

「なら、紅井捜月をメタれるな」

「紅井捜月は客船内で確実に葬る」

「第三勢力の参戦は否定しきれないが──『百足』や七つの大罪(S.D.S)以外は何も変えられはしないだろう」

「では、顔合わせと目的の共有は済んだ。以降の連絡は部下を通してくれ」

 シャル・リークが港の倉庫を後にすると、木箱に置いてあったPCが起動する。

 砂嵐を映すモニター。マイクを通して、ノイズ混じりの男の声が静かな倉庫内に木霊した。

『餌は釣れたな。準備を怠るな』

「了解です。七家を抹殺し、世界に支配を轟かせます。そして──戦争を」


用語解説+設定解説 ムー大陸とリーク王国について。

ムー大陸。都市伝説の嘗て存在した大陸が、この世界では存在しています。

本編で説明した通り、太平洋に存在します。リアルだったらアメリカ領土になってそうですけどね……。

ムー大陸、リーク王国は世界的に異能災害が多く、国の管理外の宗教家達が、子供を神と祭り上げる事もあり、治安はあまりよろしくなく、現代アメリカと同じく弱肉強食で、貧困層と富裕層の差が酷いです。ホームレス4割り程度います。





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