78.フェニックス
リーヌはかなりの量の食事を食べた。
米が気に入ったみたいで、成人男性でも動けなくなるであろう量を食べた。
「美味い!美味いよ、テツジ!」
「それは良かったよ」
「やっぱりリーヌの魔力を吸った作物は美味だね!」
「ん?リーヌの魔力?」
「え!?気付いてなかったの?この島はリーヌの魔力が染みわたってるんだよ」
「どういうこと?」
リーヌに問いかけると、リーヌはスプーンを置いた。
「テツジは質問ばかりで子供みたいだね」
「いやごめんね。本当に色々知らないんだよ」
「じゃあ教えてあげるね」
リーヌは胸を張って喋りだした。
リーヌの話はとても複雑だった。
まずフェニックスはこの世界に1体しか存在できない。
フェニックスはこの世界の空気中にある魔力を吸収する。
そうすることで世界の均衡が保たれているらしい。
しかしフェニックスにも魔力の許容量がある。
この島は何故か魔力を放出しても土地がおかしくならなかった。
なので長年この島で暮らしていた。
魔力の吸収と放出を繰り返しても限界は来る。
限界になるとフェニックスは大量の魔力と自身の命を使って安全な場所で卵を産む。
卵を産み終わるとフェニックスは息を引き取る。
卵は長い時間をかけて魔力の吸収と放出を繰り返す。
限界が来た時、魔力を大量消費して卵は孵化してフェニックスは生まれてくる。
記憶や経験は受け継がれるらしい。
フェニックスは頻繁に生死を繰り返していたが、この島と相性が良くてペースがだいぶ穏やかになっていたらしい。
そのユイという女の子とは、この島に住み始めて数年の時に出会った。
この島で許容量を超える魔力を吸収してしまってフェニックスは暴走しそうになった。
それを助けてくれたのはユイという少女と一緒にいた男だった。
フェニックスは産卵し、その男に産んだ卵を火山の深い所に移動してもらった。
そこから数十年。
やっと生まれたのが目の前にいるリーヌ。
「なるほど」
全然理解できなかったが、ユイと言う少女がクラスメイトではないことは確実で安心した。
リーヌは食事を終えた。
「あー美味しかった!」
リーヌは満足そうだ。
「リーヌはこれからどうするんだ?残念ながら多分ユイって子は……」
「わかってる。探してたのは奇跡があるかもと少し期待していただけ。これからどうしよう…。どこか別の場所に行ってもいいんだけどね、この島を気に入ってるんだよね」
リーヌは悩み始めた。
「リーヌがいいなら僕達と一緒に暮らすか?」
「え!?いいの?」
リーヌは驚いていた。
「僕達の事情はあとで話すけど、みんなもこの島を気に入ってる。それにうちの米が美味しいのはリーヌのおかげでもあるからできれば島にいてほしい。だからリーヌ次第だけど、僕達はリーヌを家族として受け入れるよ」
小町はあとで説得するつもりだ。
元々僕達よりも先にこの島で暮らしたリーヌがどこか行くのは納得いかなかった。
旅に出るとかなら止めないが、気に入っているならこの島にいるべきだ。
「家族……。いいの?」
「ああ。いいよ」
「僕は恐れたり崇められたりするって聞いてたから…」
「誰に?」
「ベヒモスとリヴァイアサン」
「あーなんかすごい3体らしいね」
僕がそういうとリーヌはキョトンとしていた。
「ゆっくり考えていいよ」
「いや決めた。家族になりたい!」
「ああ。大歓迎だ」
僕がリーヌの頭を撫でたら、リーヌは驚いていた。
「テツジ。見た目は子供だけど、リーヌに受け継がれてる記憶や経験は数百年以上なんだよ」
「ごめんごめん。嫌だったか?」
「いやこれが家族なんだね」
リーヌは納得したみたいだ。
▽ ▽ ▽
小町達が別荘にやってきた。
みんなを集めてリーヌについて話した。
「可愛い!」
小町はリーヌを抱き上げて頭を撫でた。
「テツジ!こ、これはどうすればいいの?」
「ああ。僕の奥さんの小町。満足するまでは我慢して」
「え!?が、我慢!?」
リーヌは小町の可愛がり攻撃に動揺していた。
「小町、また勝手に決めちゃったけどいいかな?」
「いいよ。だってリーヌのおかげでテツコマチが美味しくなったんでしょ!!それに私達よりも前から島に住んでたなら拒否する必要ないよ」
小町はリーヌの頭を撫で回しながら言う。
「テ、テツジ!」
リーヌはどうしていいかわからないみたいだ。
「慣れなさい」
「テツジ!!!」
その様子を見て、みんなもリーヌを可愛がり始めた。
みんな最初はフェニックスと聞いて驚いていた。
だけど小町に翻弄される姿を見てたら気にならなくなったみたいだ。
アデスとドグドは既にお姉さんとお兄さん気分だった。
「テ、テツジ!ずっと気になっていることが」
「ん?どうしたリーヌ」
「さっきいた男が変なんだけど、どうして?」
「変?」
「うん。変な魔力の男。もし困ってたらリーヌがどうにかできるよ」
「ん?どういうこと?」
僕はリーヌを小町から救出した。
「変ってどういうこと?」
僕がそう聞くと耳元で話すリーヌ。
「海岸にいた男の魔力がおかしい」
「誰のことだ?」
「膨大な量の魔力が乱れていた。リーヌならあれを制御できるように出来るよ」
思い当たる人はランヴォックさんしかいなかった。
「あの人はモンスターの力を身体に取り込んでるんだ」
「バカ!なんでそんなことをしたの!人族が耐えられるものじゃないよ!」
リーヌは怒っていた。
僕はデレメメ王国の話をリーヌにした。
「そんなバカな奴らがいるの!?」
「ランヴォックさんは仕方なく取り込んだらしい」
「仕方なく…ならリーヌが制御できるようにしてあげる!」
リーヌは鳥になって僕の頭の上に乗った。
「テツジ!出発―!」
「はいはい。ランヴォックさんの所ね」
僕はノリノリのリーヌを頭に乗っけて海岸に向かった。




