79.力の制御
海岸に到着した。
「テツジ。それにフェニックス様」
「え?」
ランヴォックさんがリーヌをフェニックス様と呼んでいて驚いた。
「リーヌがランヴォックさんに用があるみたいで」
「フェニックス様が?」
「なんかランヴォックさんのモンスターの力を制御できるらしく」
「え?本当ですか?」
ランヴォックさんはリーヌを見る。
「うーん」
リーヌはランヴォックさんの頭の上に乗る。
「モンスターの力が膨大すぎて危険だね。身体との相性が良くてよかったよ。頑張れば制御出来るかもしれないけど、いつか身体が耐えきれなくなって死んでしまうよ」
リーヌは真剣に語る。
「そもそも人族がモンスターの力を取り込むのがバカ。自分よりも力が低いモンスターならどうにかできるかもしれないけど、相性が相当良くないと格上のモンスターなんて制御できないからね!獣人族・魔獣人族・龍人族とかなら話は少し変わってくるけど…」
「私はどうすればいいのでしょうか?」
「リーヌが制御できるようにしてあげる」
「本当ですか!」
「暴走してテツジ達に迷惑をかけてほしくないからね」
リーヌはそう言うと少年の姿になった。
服もドグドが着ていたような服を着ている。
「じゃあ始めるね」
リーヌは目を瞑り、ランヴォックさんの身体に触れる。
「こんな危ない魔力は初めて見た。僕達に極めて近いモンスターの力を吸収なんて本当にバカ」
リーヌが触れていると、ランヴォックさんの姿が少しずつ変わっていく。
ガタイが少しずつ大きくなって毛深くなっている。
「お前がリーヌの魔力に勝てるわけないだろ。大人しく従え!」
リーヌは独り言を呟いている。
ランヴォックさん身体はどんどん変化している。
表情は少し苦しそうだ。
「リーヌに歯向かうことがどれだけ愚かかわかったみたいだね。大人しくこの男に力を貸せ」
リーヌの発言はとても物騒だった。
ランヴォックさんの身体は少しずつ元に戻った。
「ランヴォックだっけ?」
「は、はい」
「どう?そいつの意思を感じる?」
「…感じます」
「珍しいんだよ。魔石にこんなに意識の残滓が残ってるの。従うように言っておいたから」
「は、はい…」
僕は話をまったく理解できなかった。
リーヌはランヴォックさんから手を離した。
「どう?力を使ってみてよ。前よりも遥かに扱いやすくなっているはずだよ」
「や、やってみます」
ランヴォックさんが目を瞑る。
すると身体が3倍くらい大きくなって体毛が生えてきた。
そして身体の一部が金属に覆われる。
モンスターと人間のハーフのような見た目だった。
「おお!これは」
「ランヴォック!大丈夫なのか?」
スオンさんが心配そうに声をかける。
「スオン様。問題ありません。サーメットグリズリーの力を感じながらも意識を保てています」
「本当か!」
スオンさんはうっすら目に涙を貯めてながら喜んでいた。
「ランヴォック。本気出しても平気だよ」
「ほ、本気ですか」
リーヌの言葉を聞き、ランヴォックさんの身体がさらに巨大になる。
人間の面影はほとんどなくなり、完全にモンスターの見た目になっていた。
「ランヴォックさん。大丈夫ですか?」
「ああ。問題ない。むしろ気分がいい」
その言葉を聞いたリーヌはどや顔をしていた。
▽ ▽ ▽
リーヌと別荘に戻って僕達のことを話した。
リーヌの理解力はとても高くて、すぐに把握してくれた。
僕とアデスの記憶について伝えた。
リーヌは異変を感じていたみたいだが、さすがに記憶を戻すことは出来ないみたい。
リーヌを日本に連れて行こうか悩んだが、モンスターという事もあって落ち着いた時に試してみることになった。
小町は着せ替えをしたかったみたいですごく悔しがっていた。
しかしリーヌは人型になるときに服を自分で作れるらしく、それを聞いた小町にセルフ着せ替えをさせられていた。
色々あったせいで少し疲れていた僕は小町とリーヌの様子を見ながら休んでいた。
「テツジ様」
「ん?」
「リーヌくんにお願いがあるのですが」
「え?まあリーヌが良いと言うなら。リーヌ!」
僕がリーヌに声をかけると、小町から逃げるように僕の元に来た。
「ザンがリーヌにお願いがあるんだって」
「おお。ザンとは龍人族のお前か」
「リーヌ!家族をお前と呼ばない」
「え!あっ!そうなんだ。わかった」
リーヌは聞き分けの良い子だ。
「それでザン、リーヌに頼みたいことって何?」
「私の『龍化』を安定させてほしいんだ」
「バカ!さっきのランヴォックの件は特例だよ。龍人族の『龍化』を妨げているのは己の弱さ。さっきの件とはまるで話が違うから!」
「そうか…」
「『龍化』に怯えちゃダメ。龍化で得られる力はザン自身の力なんだから。特別な力だと思っているうちは安定しないよ」
「なるほど…。わかった。馬鹿なことを言って悪かったね」
ザンは何か納得したみたいだ。
▽ ▽ ▽
「あと2日で出発できます」
「そうか」
部下は出港準備の報告をした。
「捕縛されてる奴らも生きていたら連れ帰る予定だ。大きめの船を用意しておけ」
「はい」
部下は俺のことを心配そうに見ていた。
「どうした?」
「目は大丈夫ですか?」
「ここまでやられるとポーションや回復魔法じゃどうにもならない。今後は片目で生活だ。早めに慣れたいから出航まで戦闘訓練に付き合ってくれ」
「はい。任せてください」
部下は返事をして頷いた。
「エルシナ船長はどれくらい人員を連れて行った?」
「俺達10名以外は全員連れて行きました」
「なるほど。島に付いたらお前らは船にいろ」
「え?」
「島の連中も深手を負っているはずだ。大きな戦闘にはならない。それに島に船を近づけて、また壊されるようなことがあったら困る」
「なるほど。わかりました」
部下は納得したようだ。
「さっさと行って、島を制圧して終わらせる」
「はい」
「そういえばデュドドはどうしたんだ?」
「それが…。ずっと戦闘訓練をしています」
「そうか…」
前回の敗北がデュドドにはかなり効いているみたいだ。
「そのまま戦闘訓練に付き合ってやってくれ」
「はい。わかりました」
部下は返事をし、部屋から出て行った。




