76.シゲ爺の煽り
翌日。
ダルン達はすぐに肥料作り用の小屋を作り始めた。
木材は残っていた分で足りるらしい。
追加発注しなければよかった。
僕と小町とアデスは豚舎に来ている。
豚舎はとても綺麗で、匂いなどもしなかった。
多分ピュアスライムが綺麗に維持してくれてるんだろう。
「ブッちゃーん」
小町がブッちゃんを抱きしめると他のバウンドピックも寄ってきた。
僕とアデスはバウンドピック達を撫でてあげる。
「ブッちゃんがこの群れのリーダーなんだよね?」
「そうだよ。ブッちゃんはボスバウンドピッグって種類なんだよね」
「え?」
「なんだっけ。上位種?ってやつだよ」
小町のカミングアウトに驚いた。
ブッちゃんが上位種だとは知らなかった。
確かにピュアスライム達よりも統率が少し感じられる。
上位種のリーダーがいるとこうなるのか。
▽ ▽ ▽
午後になり、訓練の時間になった。
「ランヴォックさん。この4人も一緒に良いですか?」
「いいが…。大丈夫なのか?」
ランヴォックさんは小町とシゲ爺とアデスとドグドを見て戸惑っていた。
そんなランヴォックさんの様子を見て、スオンさんが口を開く。
「テツジさん。協力をしてくれることは本当に感謝している。だが遊びではないんだ。子供や戦闘が出来なさそうな女性や老人を連れて行く気ではないだろ?」
「あー。いや、連れて行きます……」
「は?エルフや小人族やドワーフとは違うんだぞ?」
ドグドは身体のサイズを小さくしてるから巨人族には見えない。
アデスも新潟から帰ってからずっと角と羽根や尻尾を隠している。
「あのー2人は…」
僕がアデスとドグドについ説明しようとすると、シゲ爺が口を挟む。
「お嬢ちゃん。なら模擬戦で試してみればいい」
「え!?お、お嬢ちゃん!?」
「そうじゃな。ドグドはそちらの騎士団長さん。アデスはそちらのお嬢ちゃんと戦ってみなさい」
シゲ爺は2人の戦闘力を見せて納得させるつもりだろうけど、少し不安だ。
「構いませんよ。ランヴォック、いいですよね?」
「わかりました」
2人は少し離れた。
「ドグド、アデス、大丈夫?」
「うん!大丈夫だよ」
「俺も頑張る!」
2人はやる気みたいだが心配だ。
「あ、危ないと思ったら止めますからね」
「そこはテツジさんの判断に任せます」
シゲ爺の提案が煽りに感じたのか、スオンさんは少しイライラしているように感じた。
「じゃあわしは残ってる騎士様達に相手をしてもらおうかな」
シゲ爺はそう言って騎士達の元に向かう。
アデスとスオンさん、ドグドとランヴォックさんが向かい合う。
「テツジさん。掛け声をお願いします」
「で、では開始!」
ドグドはブラックグローブを鞭のようにしてランヴォックさんに巻き付ける。
「は?」
ランヴォックさんは剣で斬ろうとするが切れない。
ドグドは勢いよく引っ張り、ランヴォックさんは宙に浮く。
ドグドは巨大化をし、宙に浮いているランヴォックさんを砂浜に両手で叩きつける。
アデスの方を見ると、クロデコステッキが急に大きくなってリーチが変わった。
それに対応できなかったスオンさんが岩壁に叩きつけられた。
「しゅーりょー!!!!!アデス!ドグド!終了!!」
想像以上の圧勝に僕はすぐに終了の合図をかけた。
▽ ▽ ▽
僕はスオンさんとランヴォックさんにホワイトポーションをかける。
アデスも申し訳なさそうにヒールをかけていた。
2人は目を覚ました。
自分の状況を理解できていないのか動揺している。
「テ、テツジ。あの2人は一体?」
「僕の息子と娘です。元々は他のみんなと一緒にこの島に来た巨人族と悪魔族の子供です」
「な、なるほど……」
「ねー。僕達強かった?」
「…ああ」
アデスの質問に2人は動揺しながらも答えた。
「うちで一番強いのはあの2人だと思います。ザンも1対1だと勝てないかも?」
「工夫をしないと勝てないです」
ザンは悔しそうに言った。
「あのーテツジさん。あの2人も海賊の殲滅には…」
やはりスオンさんはそこが気になるみたいだ。
「連れては行きます。でも2人が嫌がることはさせないつもりです」
僕は強く言った。
「わかってます。協力してもらえるだけでありがたいですから」
スオンさんは言葉とは裏腹に少し悔しそうにしていた。
悪いがうちの子供達をただの戦闘兵器のようには使わせない。
自分の意思で動いてもらうつもりだ。
「す、すみません!!」
騎士がやってきて僕達に話しかける。
「あのご老人を止めていただけませんか?」
「え?」
「何かを飲みながら、永遠に戦いを求めているんです」
「は?」
騎士達を見ると、シゲ爺はスキルを使わずにずっと戦っている。
「あの老人は一体…」
スオンさんは自分を煽った老人が、騎士達と楽しそうに戦ってるのを見て引いていた。
「すみません。1番強いのはもしかしたらあの人かもです」
「「え?」」
スオンさんとランヴォックさんは声を出した。
「ちょっと待っててください」
僕は急いでシゲ爺の元に向かう。
「シゲ爺。そこらへんで終わりにしましょう」
「ああ。テツジくんか。いや、この身体でどこまで動けるか見てみたくてのう。それに昔の血がうずいてな」
シゲ爺は騎士達の攻撃をいなしながら喋る。
「シゲ爺も海賊の殲滅にがっつり参加するつもりなんですか?」
「ああ。どうしようかの。騎士達があまり強くないから行った方がいいかもしれんのう」
それを聞いた騎士達の攻撃が早くなる。
さすがにこれは煽りだ。
「連れて行くことを反対されそうですよ、シゲ爺が煽るから」
「煽っている?そんなことはしてないんじゃけど」
騎士が足払いで倒れる。
「わしの力はこれを見ただけでも伝わるじゃろ。それよりも小町の実力を見せた方がいいんじゃないか?」
「え?小町はいいですよ。連れて行っても戦わせるつもりはないですし…」
「本当にそれで大丈夫か?」
「どういうことですか?」
シゲ爺はニヤッとしながら騎士を突き飛ばす。
「拗ねるぞ。ものすごーく拗ねるぞ。それにドグドとアデスは戦っているのに見てるだけだと納得しないぞ。小町は」
僕は頭をフル回転させた。
5つほどの可能性を考えたが、5人の小町が可愛くものすごーく拗ねていた。
「わかりました。でも小町には戦う力はエアガンしかないですよ」
「圧倒的な防御力を見せつければいいんじゃ」
「え?」
「小町!!こっちに来なさい!!」
シゲ爺は大声で小町を呼ぶ。
「何?おじいちゃん。てかおじいちゃんって本当に強いんだね」
「そんなことはいいんじゃ。小町、このままだとお前は海賊殲滅に参加できないぞ」
「え?なんで?」
シゲ爺は騎士を投げ飛ばして答える。
「さっきあそこにおるお嬢ちゃんが言ってたじゃろ?遊びじゃない、戦闘が出来なさそうな女性は連れて行けない」
「…言ってた」
「ドグドとアデスとわしは今の戦いで連れて行ってもらえるはずじゃ。じゃあ小町は?」
「私も戦うの?」
「戦わなくてもいい。お前には哲治くんからもらったスキルがあるじゃろ?それの凄さをわからせばいいんじゃ」
「え?」
「ということで騎士諸君。わしの孫に攻撃を当てた奴から休憩じゃ!」
シゲ爺は指導者のように声をかける。
騎士達もシゲ爺が指揮していることに違和感なく小町に向かって行った。
「きゃっ!」
カキン!
『過保護な防壁』が小町を守る。
久々に見ると聖盾のシールドの様だ。
騎士は次々と攻撃をするが全て防がれる。
「これならいいじゃろ」
シゲ爺は満足そうに笑っていた。




