73.聖盾ビナイギス
昨日は考えることが多すぎて、疲れて寝てしまった。
今日は決断をするつもりだ。
無くなっていた記憶の一部が戻ったことで、僕の考えが少し変わった気がしていた。
人とは戦いたくないのは変わらないが、家族を危険に晒すかもという不安は薄れていた。
むしろ僕なら守れるという自信のようなものが沸き始めた。
僕は別荘に移動する。
外に出るとみんなが集まってきた。
昨日のこともあったから、心配してくれてるのだろう。
「テツジ様、お身体は大丈夫ですか?」
「うん。みんなに話したいことがあるんだ。昨日の気絶してた時のこと」
みんなが困惑すると思ったけど、真面目に僕の話を聞こうとしてくれた。
別荘に移動して、昨日のことを話した。
みんな理解するまでに時間が掛かっているみたいだ。
「ヘイルラーダ様と仲が良かったってことですか?」
「うん。多分仲が良かった。具体的には思い出せてないけど」
「九神とテツジ様が…」
「みんなからしたら神様だもんね。僕の認識では神様と言うよりかは友達みたいな感覚なんだよね」
「なるほど…」
みんなはがんばって理解しようとしてくれている。
「あとこれの使い方も何故か何となくわかるんだよね」
僕は聖盾ビナイギスの腕輪に触れる。
「だからちょっと付き合ってよ。ザンとクリフ」
「え!私達ですか?」
「うん」
僕達は外に出る。
「クリフ、遠くからスナイパーで誰でもいいから撃って」
「え!?それはどういうことです」
「クリフの攻撃を僕が防ぐ。『同志討たず』で怪我はしないから」
「テツジ様、スナイパーライフルの攻撃の速さは防げるものでは…」
「まあ信じてよ。展開!」
腕輪が光り、両手に小盾が現れた。
平凡な小盾が両腕に1つずつ装着されている。
「それが聖盾ビナイギスですか」
「うん。まあ信じてよ」
「わかりました」
クリフは離れていく。
そして残ったみんなは僕の周りに散らばる。
「起動!」
僕がそう言うと聖盾は腕から離れて浮遊した。
パシュ!
カキン!
「え?」
飛んできた弾丸はザンに当たる前に聖盾を中心に現れた魔力のシールドに弾かれる。
パシュ!
カキン!
次はプンに向かう弾丸を弾く。
僕には弾丸の軌道も見えている。
クリフが何度も撃つが、全て浮遊する2つの聖盾を操作して防いだ。
「テツジ様、これが…」
「うん。聖盾の力。まだまだあるから付き合ってね」
「は、はい」
ザン達は驚いていた。
「次はクリフだけじゃ大変だから、みんなも使える武器使ってね」
「え?どういうことですか?」
僕はみんながいる方向に両手を向ける。
「壁盾!」
聖盾は移動し、大きな魔力の壁を作り出す。
ザン達は僕がしてほしい事を理解したのか壁盾に攻撃を始める。
「完全防御ってわけじゃないけど、並の攻撃じゃ壊せないよ」
僕は何故かこの壁盾が完全防御ではないことを知っていた。
たぶん過去に破壊されたことがあったんだろう。
「これは壊せません」
「オイラ達のハンマーでも無理です!」
ダルンとドルンは息を切らしていた。
僕はクリフを呼び、感想を聞く。
「どう?」
「全く無理でした。この盾は自動で防ぐんですか?」
「ちがうよ。僕が操作してる」
「スナイパーライフルの攻撃に反応できてるんですか?」
「うん。なんか反応できた」
「え!?」
クリフは驚いていた。
スキルを取得しているとヘイルラーダは言っていた。
ステータスを確認すると、『体術』『拳術』『盾術』『反射神経』『危険察知』を取得していた。
スナイパーライフルの攻撃に反応できたのは『反射神経』と『危険察知』のおかげだろう。
「拳術か。もしかして……」
僕は記憶の中でヘイルラーダに要望を出していた。
要望の内容は覚えていないが、昔の自分が言いそうな要望は何となくわかる気がする。
「拳盾!ちがうな、殴盾!」
僕がそう言うと、聖盾が僕の拳に装備された。
「ダルン、ハンマーで僕を攻撃してみて」
「え?いいんですか?」
「うん。防御力はさっき見たでしょ?」
「わかりました」
ダルンはハンマーを振りかぶる。
僕は振り降ろしの瞬間、拳でハンマーを殴る。
ガキン!
金属音が鳴り響き、ダルンのハンマーの柄の部分が折れた。
「おお!」
ダルンは手に衝撃が伝わったようで驚いている。
「やっぱり攻撃もできるように要望したみたいだ」
やっぱり記憶は本物みたいだ。
過去の僕の思考がちゃんとわかる。
「じゃあこれもできたりするのかな。ドームシールド!」
何も起きなかった。
「うーん。殻盾!球盾!檻盾!籠盾!」
聖盾から半球状のシールドが現れた。
「やっぱり全方位の防御も要望するよね」
本当に過去の自分が予想通り過ぎて、逆に怖くなった。
僕を見ているみんなはずっと驚いていた。
▽ ▽ ▽
人を殺してしまうかもしれないのは、まだ抵抗がある。
多分僕の対人戦に対しての恐怖心は過去の記憶が関係しているのだろう。
だけど記憶が少し戻ったことで恐怖心が僅かだけど薄まった気がする。
僕は海賊の拠点に行こうと思っている。
帰還のポラロイドカメラと聖盾があれば無事に生還できる気がした。
今の僕ならみんなを危険な目に合わせないことが出来る自信があった。
僕はみんなに自分の意思を伝えた。
「私はテツジ様と共に海賊の拠点に行きます」
「私も行きます」
「オイラも」
ザンとクリフとデルンは答えた。
「ありがとう。他のみんなには島で支援してほしい」
「テツジ様。僕は戦闘に自信はないですが、船での戦闘で参加するのはどうでしょうか」
プンは真剣な目でそう言った。
「いいけど、船も襲われる可能性があるよ」
「それこそ写真を使って帰還をすれば問題ないです」
「プンがいいならいいけど、無理はしないでほしい」
「大丈夫です。色々検証したいので帰還のポラロイドカメラを借りてもいいですか?」
「いいよ」
僕はプンに帰還のポラロイドカメラを渡した。
その後もみんなの意見を聞き、ダルンとペペンとプロールは島で支援をすることに決まった。




