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72.消えていた記憶

「テツジ!テツジ!」

誰かの声で目を覚ますと、真っ白な部屋にいた。

部屋には僕しかいない。


誰かに起こされた気がするが、勘違いだったのだろうか。


僕はとりあえず大声で人を呼ぶことにした。

「えーっと、すみません!誰かいますか?」

「いるぞ」

周りを見るが誰もいない。

声だけは聞こえる。


「すみません。僕は死んだんですか?」

「違う。聖盾ビナイギスに触れたことで、記憶の一部がテツジの身体に戻った。その影響で気絶をしているだけだ」

「記憶ってどういうことですか?なんで僕はこんな場所にいるんですか?」

僕は自分の状況を全く理解することが出来ていなかった。


「記憶が戻った時にテツジが混乱をしないために俺がいる」

「あなたは誰なんですか?」

「俺はヘイルラーダ」

さっきプンが教えてくれた神様の名前だった。


「神様…」

「そうだ」

「あの……」

「時間が無い。俺に喋らせろ」

「すみません」

圧を感じるが、どこか懐かしい感じがした。


「お前は目を覚ますと過去の記憶の一部を思い出す」

「…はい」

「そしてこれから生活を続けていくと記憶が少しずつ蘇るだろう。信じられない部分もあると思うが全て現実だ」

本当にどういうことかわからない。


「なぜ僕は記憶が無くなってるんですか?」

「俺に喋らせろ」

「すみません」

質問は禁止の様だ。

ヘイルラーダの口調はきついのに安心感があった。


「記憶が戻ったことで聖盾の使い方も思い出すだろう。要望もちゃんと叶えた。それにスキルも取得するはずだ。上手く使ってくれ」

「はい…。もしかしてなんですけど、僕には何か使命があるんですか」

「……」

ヘイルラーダは黙ってしまった。


「俺は…お前が幸せに暮らしてくれればいい」

「え?」

「使命が無いとは言えないが強要するつもりはない…」

「どういうことですか」

「すまない、時間だ」

「え?全然わからないんですけど」

僕はヘイルラーダを引き止めようとするが、少しずつ意識が薄くなっていく。


「テツジ、久々に会えて嬉しかった。今度は大丈夫だ」

ヘイルラーダの最後の言葉と共に意識が完全に無くなった。




▽ ▽ ▽




僕の目の前には上裸の筋肉質なおじさんがいた。

「えーっとあなたが僕のパートナー?」

「ああ。守護の神ヘイルラーダだ」

「よろしくお願いします!えーっとこれから何をするんですかね?」

「おい。俺に喋らせろ」

「あっ。すみません」

「お前には仲間を守るための術を俺が授けるから楽しみにしておけ」

ヘイルラーダは誇らしげに言った。



▽ ▽ ▽



「テツジ、大丈夫か?」

「大丈夫なわけないだろ!」

僕はヘイルラーダを怒鳴りつけた。


「なんでこんなことになるんだよ!僕の力は仲間を守るためにあるんだろ!!」

「そうだ…」

ヘイルラーダは申し訳なさそうな表情をしている。


「なんであんなことが…」

「すまない…」

ヘイルラーダは頭を深く下げた。



▽ ▽ ▽



ヘイルラーダは大盾レイギスを持ちながら口を開く。

「本当にすまない」

「いいよ。僕がやらなきゃダメなんだろ」

「……」

「ヘイルラーダ。僕も頑張るから仲間を絶対に守れる力を頼む。もう後悔したくない」

「わかった……」


ヘイルラーダが大楯レイギスに触れる。

すると形が変わり、2つの腕輪に変わった。


「お前に合わせて改良した。要望を全て叶えることはできなかったが……」

「…大丈夫。ありがとう」

ヘイルラーダから腕輪を預かる。


「聖盾ビナイギスだ。これを使って世界を救ってくれ」

「うん」

僕は腕輪を両手に着けた。




▽ ▽ ▽




目を覚ますとみんなが心配そうに僕を見ていた。

「「「「「テツジ様!!!」」」」」

「ごめんごめん」


みんなが心配そうに詰め寄ってくる

「大丈夫なんですか?いきなり気絶をされたので、私達は心配で……」

「大丈夫なはず…。ちょっと色々あったんだ」

「色々あった?」

クリフ達は首を傾げた。


「僕も整理しないとみんなに説明出来なそうだから。今日は家に帰るよ」

「わ、わかりました」

「あ!ランヴォックさんに海流の話をしておいて」

「はい」

僕はみんなと別れて、家へ帰った。


▽ ▽ ▽


家に帰り、使っていないノートを取り出す。

手で書きながらじゃないと理解できない。


「所々途切れてるし、僕の記憶と一致してないところが多いんだよな…」

僕はノートにまとめ始めた。


まず僕は高校生の時に異世界に転移した。

その異世界はあの島と同じ世界かはわからない。


僕にはパートナーの神様がいた。

それが守護の神様ヘイルラーダ。


僕はある国を拠点にして生活していた。

ヘイルラーダが作り出した大盾レイギスを使ってパーティのタンク役を務めていた。


ヘイルラーダとはたぶん仲が良かったはずだ。

ヘイルラーダの発言や喋っているときの居心地の良さを感じていた理由はそれだろう。


そして何かがあった。とても悲しいことが。

まったく思い出せないが、思い出そうとすると心の奥が苦しくなる。


最後の記憶はヘイルラーダに大盾レイギスを強化してもらった。

なんでそんなことをしていたかは思い出せないが、何かと戦うために強化してもらったはずだ。


記憶が途切れている状態はものすごく気持ち悪い。

色々引っかかるし、自分の記憶のはずなのに映画を見ているような感覚だ。


僕は腕に付けている聖盾ビナイギスを見る。

これを使っていた記憶はないのに、使い方はわかる気がする。


「これがあれば僕もみんなを守れるのか…」




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