AIバブルなのか、それともドルバブルなのか
まえがき
この文章は、私が最近市場を見ていて感じている**違和感**を、自分なりに言葉にして整理したものです。
現在の世界で一般的に受け入れられている認識とは大きく異なる考え方であり、この文章は「この考えが正しい」と主張するものではありません。むしろ、自分が感じている疑問を整理し、一つの仮説として残しておきたいという思いで書いています。
市場では現在の過熱を「AIバブル」と呼ぶ声が多く聞かれます。
しかし、私には一つの疑問があります。
**本当にAIバブルなのでしょうか。**
あるいは、**AIバブルに見えているだけで、実際にはドルバブルなのではないでしょうか。**
近年、アメリカは日本よりも高いインフレを経験しました。一方、日本は比較的低いインフレにとどまりました。本来であれば、その物価差は長期的に為替へ反映され、ドルの価値も調整されるはずだという考え方があります。
しかし現実には、ドルは依然として強く、多くのドル建て資産も高い評価を維持しています。
この現象は、「基軸通貨プレミアム」「安全資産プレミアム」といった言葉で説明されることが多くあります。
しかし、ここにも私は疑問を感じます。
**「プレミアム」と呼ばれているものは、
本当にプレミアムなのでしょうか。
それとも、後になって振り返れば「バブル」と呼ばれるものなのでしょうか。**
歴史を振り返ると、多くのバブルには、その価格を正当化する説明がありました。
「今回は違う。」
「新しい時代が来た。」
「○○プレミアムがある。」
それらは一定の合理性を持っていました。しかし、その説明が「価格は適正である」ことを証明した例はありません。多くは、価格が崩れた後になって初めて、過大評価だったことが分かりました。
現在も、
* キャリートレードは合理的である。
* ドル高は金利差や米国経済を反映している。
* 基軸通貨にはプレミアムがある。
という説明がされています。
もちろん、それらは十分にあり得る説明です。しかし、それは**「バブルではないこと」の証明ではありません。**
合理的な説明が存在することと、バブルではないことは、必ずしも同じ意味ではないからです。
私がもう一つ気になっているのは、AIの存在です。
AIは市場分析や資本配分をこれまで以上に効率化します。
もし世界がドルへの強い信認によって成り立っているのだとすれば、AIはその構造をより合理的に利用するようになるかもしれません。
すると、
* AIがドルへの資金流入を効率化する。
* ドル需要がドル建て資産を押し上げる。
* ドル建て資産の上昇がAI企業の評価額をさらに高める。
* AI企業への期待がさらにドルへ資金を集める。
という**自己強化ループ**が生まれる可能性があります。
つまり、
**AIがドルを強化し、ドルがAIを強化する。**
もしこのような構造が存在するなら、市場が「AIバブル」と呼んでいる現象は、AIだけではなく、ドルへの信認も同時に膨らんでいる現象なのかもしれません。
だから私は、現在の市場に対して次の問いを持っています。
**今、本当にAIバブルなのでしょうか。**
**それとも、AIバブルに見えているだけで、実際はドルバブルなのでしょうか。**
そして、
**「基軸通貨プレミアム」と呼ばれているものは、本当にプレミアムなのでしょうか。それとも将来、「プレミアムの崩壊」と呼ばれる出来事の始まりなのでしょうか。**
現時点で、それを証明できる人はいないように思えます。
だからこそ、AIだけを見るのではなく、その価格を測る物差しであるドルそのものにも、同じように問いを向ける必要があるのではないでしょうか。
あとがき
もちろん、この考え方が正しいとは限りません。私の前提や仮説が誤っている可能性も十分にあります。
しかし、**もしこの前提が正しいのだとすれば**、「AIバブル」と考えられている現象の背景には、「ドルバブル」という、より大きな問題が存在している可能性があります。
さらに気になるのは、AIとドルが互いを強化し合う自己強化ループが成立している場合です。そのような構造であれば、時間の経過とともに市場のゆがみは拡大し、通常のバブル以上に調整が難しくなる可能性も考えられます。
そして、そのリスクに対応できるのは、各国政府や中央銀行などの政策当局くらいしかないのかもしれません。
一般の投資家や企業、そして個人は、そのリスクを十分に回避したり、防衛したりする手段をほとんど持っていないようにも思えます。
もしそうだとすれば、それは「市場が見落としているリスク」であるだけではなく、多くの人が**備えたくても備えることが難しいリスク**でもあります。
だから私は、「AIバブル」という一つの言葉だけで現在を理解したつもりになるのではなく、
**「本当に膨らんでいるのは何なのか。」**
その問いを持ち続けることが大切なのではないかと感じています。




