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投げキャラVSドラゴン 『レバー二回転+PP』

 オーガの巨体を拳の先で転ばせた必殺技、あのクリスチャンラリアット。

 人十字の回転攻撃を受けたドラゴンは、オーガに同じく、したたかにふっ飛ばされた。

 この攻撃で両者の距離は離れ、また接近戦に持ち込むまでの危険な読み合いをやり直さなければいけないのかと、思われたその時。

 火竜の体は壁にぶつかって、地に落ちた。焼き払って何もないはずのこの土地で、火竜は壁に当たって、地を這ったのだ。

 いいや、それは壁ではない。

 いつの間にやらドラゴンの背後に、結界に守られたシスター・コインが、震える脚で回り込んでいたのである。


聖貨教せいかきょうが代々受け継ぐこの名、ワン・(チャンス)・コインの名にかけて……! わたしも、ひとつぐらい、お役に立ちます!」

「よくやったコイン! ワンチャン、もぎ取ったり!!」


 シスター・コインと言う名の画面端に引っかかったドラゴンは、それ以上吹っ飛ぶことなく、その場に倒れ伏した。

 ロザリオマスクのジャンプがちょうど届く絶好の距離。火竜の起き上がりに合わせて男は飛びかかり、ジャンプ中にコマンドを入力する。


 既に二度空中に逃げて、痛い思いをしていたドラゴンは、思わず地上にとどまってしまった。

 いわばこれは二択である。投げキャラが目の前に着地しようとしている。その時、飛んで逃げるか否か。

 ここまでの戦いでロザリオマスクは、「飛んで逃げる」の選択肢を、ドラゴンから排除しようとしていたのだ。限りなく二択が一択になるように。本命である投げ技が通るように。

 そして彼が描いた画図通りに、もっとも重要なこの局面でも、ドラゴンは読み負けた!


 火を吐く巨大な魔物を目前にして、覆面神父は両手を広げた。

 瞬時、世界が暗転する。男と竜の間に、十字の光が解き放たれた。

 これぞロザリオマスクの、超必殺技。

 近距離時レバー二回転+PPで、ファイヤー・ドラゴン・バスターだ!!


「ファイヤァアー……!!」


 ファイヤー・ドラゴン・バスターは、捉えた相手を続けざまに投げる技である。第一撃は、ロザリオマスクの通常投げに同じ。プリーストドライバーで相手を投げる。

 プリーストドライバーとは、巨体の彼が十字のポーズで、相手を押しつぶす投げ技だ。

 必殺技のようなスクリュー要素はないものの、200キロの巨漢がのしかかってくることを思えば、充分な破壊力があることは想像に難くないだろう。


 とは言えそれは、対戦相手が人間サイズであればこそ。ドラゴンの腹につかみかかり、押しつぶそうとするロザリオマスク。掛け声は力強いものの、ドラゴンは動かない。

 当然である。この火竜のサイズで言うなれば、例えばだ。大型トラックをプロレスラーが押し倒そうとしているようなものなのだ。

 果たしてそんなことが可能なのか?

 可能である!

 ロザリオマスクは異世界に呼び出される寸前、大型トラックに轢かれそうになった子犬を助けて、このトラックを投げ飛ばしているのだ!

 投げキャラの異常な握力と腕力と圧力に押され、ドラゴンは押し倒される!


「ドラゴン……!!」


 続いて「ドラゴン」の掛け声とともに放たれる第二撃は、ホーリー・オイル・レッグスルーの投げ方に同じ。倒された相手の足をつかみ、天高く放り投げる。

 ここで先ほどと同じ疑問がよぎる。この火竜のサイズで言うなれば、例えばだ。大型トラックをレスラーが放り投げようとしているようなものなのだ。

 果たしてそんなことが可能なのか?

 可能である!

 ロザリオマスクは異世界に呼び出される寸前、大型トラックに轢かれそうになった子犬を助けて、このトラックのタイヤをつかんで宙へ放り投げているのだ!

 押し倒された状態で、尻尾の先をレスラーにむんずとつかまれ、ドラゴンは無造作に空中に投げ飛ばされた。


「ぬぅうん……!」


 そして、ラスト! 第三撃は空中に放り出された相手を追いかけてジャンプし、その体をつかんでの、超高々度スクリュー・プリースト・ドライバーである。

 押し倒され、放り投げられ、ドラゴンはかつて味わったことのないダメージを受けてはいたが、致命傷には至らない。空中であれば竜のフィールドである。そのまま翼をはためかせて逃げることも可能なはずであった。

 だが、逃げられない! これは一連の投げ必殺技の途中である。つかまれてしまえば投げ終わるまで、もう逃げられないのだ。

 投げキャラの常識の前に、火竜は言い知れぬ敗北感を味わったという。


 気づけばレスラーは、空中の火竜にジャンプで追いついていた。火竜の頭に生えた角を、右手と左手で一本ずつつかむ。

 頭は上、足は下、腕は右、そして左に。上下左右に伸ばされた体は十字の形を正確に描き、火竜の頭をつかんで、離さない。

 グルグルグルグルと横回転で、天を衝かんばかりにともに上昇、上昇、上昇――からの一転、落下!!


「バァスタァーーー!!」


 地面にビターン! 火竜の全身ドスゥーン!! 角がボキィイー!!

 これが、ロザリオマスク最強の超必殺技。ファイヤー・ドラゴン・バスターだ!!

 焼かれた野にはドラゴンとともに、十字の形の落下跡(巨大)が残った。


「勝った……!」


 ロザリオマスクは、低くうめいた。投げ落としたドラゴンの上に覆いかぶさるようにして、寝転がる。

 絶命に足るほどの投げを受けたとは言え、なにせ相手はドラゴンである。いつまた起き上がってくるかもしれない。早くここから離れたほうがいいのは間違いないが、力尽きた彼は身動きが取れなかった。

 戦いの終わりを見届け、結界を解いて駆け寄ってくるシスター・コイン。

 激戦と、傷だらけで倒れる目の前の戦士を見て、彼女は言葉ではなく、涙を溢れさせていた。


「よう、シスター・コイン。信じてよかっただろう? 俺を、君を、神を。そして、プレイヤーを……」

「なんという人なのですか、あなたは、あなたは……もう……!」

「俺たちの勝ちだ、コイン。ははははは……」


 流石に限界と見えるロザリオマスクは、力なく笑う。

 そんな二人の前に、忍び歩きの音すら立てず。いつの間にやら姿を現す、まだらの色のローブの魔術師。


「……!? この殺気……! 何者だお前!」


 鋭い視線で魔術師を見やるも、頭からすっぽりとローブをかぶり、その顔は影の内で見えない。

 魔術師が手に持つ杖に魔力が集積し、何かが今、放たれようとしていた。

 起き上がれ、ロザリオマスク。

 異世界転移開幕五番勝負は、まだ終わっていないのだ。


 次回、異世界二回転!!

 対戦者、『謎のまだらのローブ』魔法使い!!

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