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教えと学び  作者: ラム肉
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鉛筆

よし、今日は五時前に朝食も済ませて全ての準備を終えられた。


何故こんなに早起きをしてるかって?

それは私の復習と予習の為だ。


鉛筆の持ち方なんて、今までこんな真剣に考えようとした事が無かったし、言葉だけで説明しようとした事も無かった。


「やっぱり、持ち方はこうだよな」


持ち方は分かる、しかしそれを言語化する能力が私には無い。

昨日は実際に私の持ち方を見て理解してもらおうと思ったが、あの子達からすると全く理解が出来ないらしい。

一人だけ親指、人差し指、中指で持つところまではいったのだが、それでも書けなかった。

ということはだ、あの子達が鉛筆の正しい持ち方、書き方が分からない原因は説明不足や理解不足ではなく、感覚の問題なのだろうか。

そう思い立ち、私はあの子達がしていた誤った持ち方をしてみることにした。


「ぐっ、意外と難しい」


実際持ち方を変えてみようとすると、全く字が書けなくなったどころか、持っていられることすら難しかった。


「何がこんなに違うのだろう」


私が今やっているのはたしかに誤った持ち方だ。

しかしこの持ち方をした子は上手くは無いが、紙に線を描くくらいは出来ていた。

しかし私にはそれすらもできない。

あの子達もこんな気持ちだったのだろうか…


何があの子の持ち方と違うのか。

力の入れ方や鉛筆の重心の問題?

いや、もしかしてあの子達との手の大きさが違うのも関係しているのかもしれない。


「んあぁ、分からん!」


この程度の鉛筆に対する知識の量で人に教えようとはなんたる事か、あの子達はこんな状況でもなお、私の下手な教えで理解しようとしてくれていた。

にも関わらず、私が学ぶ側のことも鉛筆の事も理解した気になって、ここまで理解していなかったとは。

全く自分が恥ずかしくなってくる。


そうなってくると、私は何故鉛筆を理解していないのに持ち、書けているのだろうか。いや、そもそも私は鉛筆を正しく使えているのだろうか。


感覚的に鉛筆を使っているから他の持ち方は出来ないのかもしれない。そうなってくると、正しい鉛筆の持ち方を私も学び直さなければいけないな。


「まず、中指と人差し指をくっつけるようにする、そして親指と一緒に、鉛筆を挟み込むようにして持つ。」


おそらくこれが今まで私の理解していた範囲の全てだ。

この持ち方でいつもの鉛筆だとあの子達の手には大きく、長いせいで力が足りないのかな。

鉛筆を短いものに変えて試してみるか…待てよ、持つ位置を変えれば解決するかもしれない。

下だと…上の方が不安定になるな、私で書きにくくなるのならあの子達はもっと大変だろう。


「ならいっその事、発想を逆転して上の方を持ってみるか」


まぁ、流石にここまで安定しないと書く書かない以前の問題だな…


となると、やはり鉛筆を短くするのが今の最善手か。


上を持ったりしてみて気付いたが、もしやあの子達は鉛筆を持つ力が弱い、もしくは強すぎるのかもしれない。

鉛筆を持つ力の強さの教え方…


――ダメだ、思い付かない。時間は有限だ、思い付かないものは後回しにしよう。


そういえば、何故私はあの子達全員を、同じ様に教え方をしようとしているんだ。

思えばあの子達は失敗した時の持ち方もそれぞれ違った。問題点が全員同じとは限らないのではないだろうか。


そうだ、私は教師として一番大切な事を、いつの間にか忘れてしまっていた。


思えば正しい持ち方までできたあの子は、理解不足ではなく感覚不足なのかもしれない。

そうなると私に教えてあげられるのはなんだろうか…いや、この子はここまで出来たなら後は一人で色々試して正解を見つけ出すのが一番かもしれない。

よし、あの子はひとまず自分でやってみて聞かれたところを私が手伝う事にしよう。


手伝うというと、手で握る形で鉛筆を持っていたあの子はあの持ち方でも書いた線が濃くなかった。となるとまだ指か手の力が弱いのかもしれないな。

それならあの子の鉛筆は短いものを使ってみれば意外と出来るようになるかもしれない、後で来た時に色々な長さで試してみるとしよう。


問題はもう一人の子か。あの子はそもそも持って1000を書くところまで出来てなかったな。

そうなるとやはり、そもそもの持ち方を私が説明出来るかどうかの問題か。


「よしっ!」


私が今一人で考え、心配して悩んでいても仕方ない。きっとあの子にはあの子なりの教え方があるだろう。

いや、例え正しい教え方の答えが無くとも、きっと模範解答はあるはず。


私はまだあの子達三人に完全に教えられる自信はない。だが私は、昨日より確実に自信を持ってあの子達に教えてあげられる


まだ時間はある。

まずは私が予習をしておかねば。

教師が先頭にたって道を示してやらずして、何故教え子が迷わず道を進むことが出来るだろう。


だが今日の私は、昨日の私よりも確実に一歩前へと進んでいると胸を張って教え子に会えるだろう。

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