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林田藩  作者: 林田力
建部寿徳
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長久手の戦い

恒興と長可は長久手で家康に戦いを挑んだ。鬼武蔵の勇猛は三河武士にも通用した。

「鬼武蔵だ!!退けーっ」

徳川の兵達は次々と逃げ出し始めた。

「なに?どういうことだ?」

長可は一瞬混乱した。

「これは好機!追撃せよ」

すぐに持ち直し、攻勢に出た。しかし、攻め込んだところを井伊直政隊に狙撃されて討ち死にした。家康は武田家の遺臣の多くを直政の配下にした。旧武田家臣は長篠の合戦の敗戦から学び、鉄砲の技術を極めた者が多かった。その技術が発揮された。


長可の討ち死によって徳川が優勢になった。徳川勢は鉄砲を撃ちながら突撃した。

「殿、ここは我らに任せて撤退くださいませ!」

「ならぬ! ワシはまだ負けぬわ!! 逃げるのは輝政だけじゃ」

恒興は次男の輝政を逃がそうとした。

「し、しかし……」

「いいか。輝政が家督を継ぎ、池田家を建て直すのだ。分かったな」

「……承知しました」

輝政は渋々納得したが、内心では悔しい思いだっただろう。

「父上ー!」

輝政は涙を流しながら、馬を走らせた。

「追え! 逃すでないぞ!」

「討ち取れー!」

「うおおおぉぉぉ!!!」

徳川勢が追撃する。しかし、池田勢の一部も反撃してきた。

「敵が引き返してきます!」

「何だと!?」

井伊直政が振り返ると、そこには池田軍がこちらに向かってくる姿があった。

「おおおぉぉ!!!」

池田勢の士気は高く、徳川勢に襲いかかった。

「くっ! 怯むな! 迎え撃て!」

徳川勢も応戦するが、勢いに押され始めた。

「ぐあっ!」

「ぎゃあああ」

池田勢は次々と徳川勢を斬り倒していく。

「おらぁぁ!」

「死ねぇぇ!」

「ひぃぃ!」

池田勢の勇猛果敢ぶりに、徳川の兵達は恐れ慄いた。しかし、池田勢の攻勢もついに限界点に達した。恒興は鞍に銃弾を受け落馬し、安藤帯刀直次の槍を受けて討死にした。

「坊主首を取っては面目がない」

恒興は本能寺の変後に剃髪して勝入と号していた。直次は恒興の姿を知らなかったため、恒興の首をとらなかった。直次は戦い続け、長男の池田庄九郎元助(之助)も倒した。恒興の首は後から来た永井右近直勝が取り、功績になった。


戦場は死体だらけであった。合戦後三年の間は田地が死人の血で浸され、稲は実らなかった。逃げ延びた輝政は、池田家の家督を継承した。


中入りの総大将の三好信吉は恒興の娘婿である。恒興は祝言で家臣の香西又市を娘に付けた。香西又市は讃岐香西氏の出身で、家が長く続いている者ということで付けられた。香西氏は讃岐国の林田である阿野郡林田郷などを勢力下においた。


この又市も長久手の合戦には信吉配下で出陣していたが、信吉を守って討ち死にした。恒興の討死と同じ日であった。長男の五郎右衛門が跡を継ぎ、信吉に仕え、二百石を拝領した。信吉改め関白秀次の切腹後は、同じ知行で池田輝政に召し出されることとなった。


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