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林田藩  作者: 林田力
林田藩
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借金

藩の財政が立ちいかなくなると大商人から借金せざるを得なくなる。大商人から借金をする場合、どこの大商人から借金するかという路線対立が生じる。藩内の大商人から借金するか、江戸や大阪、近江商人といった藩外の大商人から借金するか。


保護主義的な発想は前者になる。藩外の大商人から借金すると利益は藩外に流れ、藩内を循環しないと批判される。しかし、金利は藩外の大商人から借りた方が安いことが多い。藩内の大商人が金貸しの代償として藩内で特権的立場になる方が産業は停滞する。


「なるほどな。その考えには一理ある」

この考え方で藩政改革を進めればよいと思った。

「ただ、それでは藩士たちに納得してもらえないだろう」

「そうでしょうか?」

「そうだよ。藩の財政に余裕がないときに、外から金を持ってきてどうするんだと言うだろう。藩内に金がなければ、外に求めるしかない。だが、それは藩内の富を外部に移すことになる。そうなると、藩士たちの反発も大きいはずだ」

「でも、このままだと、いずれ破綻しますよね」

「まあ、確かにそうかもしれないがね。それにしても、その考えは過激すぎると思うぞ」

「そんなことはありません!」

思わず声が大きくなり、自分で驚いた。

「すみません……」

「いや、こちらこそすまんかった。つい言い過ぎたようだ」

「とにかくだな、もう少し慎重に考えたほうがいいんじゃないかということだ」

「わかりました……じゃあ、どうすればいいですか?」

「うん、たとえば、藩債を発行してみるというのはどうかな?」

藩債とは藩が発行する債券のことである。藩債のメリットはオープンな発行という公開性にある。

「藩債を発行するんですか?」

「ああ、そうだ。借金を内々で進めるから特定の商人との癒着になる。公開して藩債を発行すれば藩士達も文句はないのではないかな?」

「藩債の発行ですね。やってみます」


藩債を発行した場合、利払いのための資金はどこから調達するかといえば、当然のことながら藩庫からの支出となる。藩債を発行すること自体が藩にとって初めての試みであり、しかも、それが多額の利子を生むとなると「果たして本当に大丈夫なのか?」と心配する者も多かったようである。


藩債は藩が借りる策であるが、反対の意味に受け止められた。

「藩債を発行することが決まったそうだよ」

「藩債だって? 藩がお金を貸してくれるというのかい?」

「ああ、その通りだよ。藩が貸し付けてくれた利息を払えば、あとは何を使ってもいいらしい。ただし、返済期限までにきちんと利子をつけて返さないと大変なことになるらしいけどね」

「そりゃ大変だ。でも、藩が貸してくれさえすれば、俺らはどんなことでもできるぜ!」

「まったく、ありがたい話じゃないか。さっそく借りに行くとするかね」

こうして金を借りようと意気揚々と出かけていった。ところが、彼らは金を借りることはできなかった。何故なら、藩は彼らに金を貸す気がなかったからだ。

「藩債を発行したにもかかわらず、藩は一向に金を出さなかったばかりか、逆に『金を出せ!』と言ってきた」

「これはどういうことだ!?」

「我々は藩に金を用立ててもらおうと思ったのであって、金を出そうと思った訳ではない」

「そもそも、藩は我々から金を取るつもりなのか!?」

「当たり前だろうが! 何を寝ぼけたことを言っているのだ!?」

人々のあまりの無知に激怒したが、ここで下手に怒れば藩が分裂してしまいかねないため、何とか怒りを押し殺した。


そもそも借金は非常の策である。借金に頼って財政をやりくりし、大きな借金に成功することを手柄のように考えるようになったら終わりである。これは藩政の主導権争いにつながりかねないため、藩内では御定法と呼ばれる法律で厳しく規制した。たとえば、大商人が藩士に金品を贈るなどの行為を禁止した。藩の産物を増やすことが遠回りでも財政健全化の解決策である。


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