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追放された荷物持ち、アルラウネ狂信者となる〜アルル様を四天王にするため宗教で成り上がろうと思います〜  作者: 天海二色
第二章 女神の作り方

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第4話 聖水のありがたみを教えましょう

「睡眠に食事に運動。これらをバランスよく取ることで……」

「できたら苦労しねぇよ!」

「朝から晩までがんばってもご飯食べられないよね~」

「おなかペコペコだよね~」

「ビョーインにもキョーカイにも行けないよね~」

「ごはんもうないの? じゃあおカネよこせ~、おカネ~」


 ブーイングと共に紙屑や木片がぽいぽいと投げ付けられ、ゼノの頭にぽこぽこぶつかった。


「あっ、こらっ! 物を投げてはいけません! それから、話は最後まで聞くようにっ! 実は病院や教会に行かずとも、健康になる方法があるのです!!」


 頭を庇いながら、ゼノが慌てて補足を付け加える。


「それは、聖水で身を清めること!」


 仰々しい言い回しをしているが、端的に言うと予防だ。

 手洗い、うがい、そして洗体。

 それらを日常的に心掛ければ、病に罹ることはグッと減る。傷口からの感染も減らせることだろう。

 特に衛生観念の低いストリートチルドレンには、劇的な効果が望める。


「汚水ではいけません、聖水でなければ!」

「聖水だぁ? お前、別に教会の人間じゃないだろ? 怪し過ぎる……」

「聖水の用意は簡単です! 君達が口にした甘い水こそ聖水なのですからっ!」


 井戸水を煮沸し、黄色い花で香りづけした水。

 ゼノはそれを聖水として扱うよう、子供達に説いた。


「熱によって汚れを追い出し、アルル様の祝福を注ぐ。そうすることで聖水となり、飲めば体の内側から健やかに、浴びれば外側から健やかになります」

「ほんと~っ?」

「えぇ、本当です」

「でもいちいち面倒~」

「お腹が痛くなるのと一日元気に過ごせるの、どちらがいいですか?」


 そう問えば、子供達はどこか気不味そうに目を逸らして押し黙る。

 どの子も一度は腹痛に悩んだことがある、ということだ。


「それとですね、君……。名前はなんでしょう?」

「……ガトー」


 問われた少年、ガトーは渋々と言った様子で名乗る。


「ではガトー。これらを徹底すれば、三カ月前のように熱に侵されることは減るでしょう。ゼロになる、とまではいきませんが」

「……っ!」


 ゼノの言葉にガトーは目を見開いた。何で余所者が知っているんだ、とでも言わんばかりの顔。

 確かにゼノはパララ町を訪れるのは初めてだ。だが町の情報は以前から仕入れていた。いつか『銀の刃(シルバーブレード)』として足を踏み入れる可能性があるから、と。

 得ていた情報は三つ。

 商業が栄えていること。三カ月前、疫病が流行ったこと。領主のアリスター・アルフォード子爵が亡くなったこと。

 それらの情報から、ゼノは布教に向いた町だと踏んで、パララ町の門を潜った。


「……そ、そ、それこそ、嘘だろ。大人は体にいいとか薬とか言って、毒を飲ますんだ……」

「毒? この花は毒ではありませんよ? 水も君達が普段から使っている井戸水ですし……」

「あー。あのすっごい苦い薬かー」

「真っ黒い水ー」


 声を震わせ、体を強張らせているガトーに代わり、幼い子供達が口々に補足を入れてくれる。


「お兄ちゃんの言う通り、前にビョーキが流行ったけどねー。その時に領主からの恩恵だとかで、薬だっていう黒い水を大人に飲まされたんだー」

「それがめちゃくちゃ苦いのー! ぼくも毒かな~って思ったよ~」

「あ、でも元気にはなったんだよー。お薬飲むまでずっとぼや~としてたのにスッキリしたの。熱はあるままだったけどー」

「でもお薬って苦いものなんだよねー? どっかで聞いたー」

「香りはよかったよね~、香りは」


 領主が領民に施した薬。「よくなったなんて思い込みだっ!」とガトーは否定しているが、多少なりとも快方に向かったのは事実なようだ。

 薬として扱われる黒い水。それも苦い。だが香りは好感が持てる。


「ふむ……」


 ゼノは顎に手を当て、目を細めた。

 いい情報を聞き出せたと、内心ほくそ笑みながら。


「いいですか? 聖水は毒ではありません。怪しむのならば花は使わず、熱を通し清めた水で、体の汚れを落とすだけでもいい。日々、汚れを意識するだけでよいのです。実際に実行するかは任せますが……。病など、罹らないに越したことはない。そう思いませんか? ガトー」


 ゼノの問い掛けにガトーは何も答えない。しかし反抗的な態度はなりを潜め、それどころか落ち着いた様子で彼は瓦礫に腰を下ろした。

 ゼノが教えた病を退ける方法は、花の用意を除けば実行がしやすい。水も自分達が元々扱っている井戸水でいいという話だから、受け入れやすかったのだろう。それにゼノはあくまでアドバイスをしただけで強制はせず、恩を理由に支配しようともしなかった。

 故にガトーは引き続き警戒しながらも、ひとまず邪険にしない判断をしてくれたようだ。

 ゼノとしては可能なら石鹸も布教させたかったのだが、準備に時間と資金がかかるので今回は用意しなかった。この様子では仮に用意したところで、警戒から受け取って貰えない可能性が高かったかもしれない。


(さて、ここからが本番です)


 ゼノはちらりとアルルを横目で見た後、本腰を入れて口を開いた。


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