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追放された荷物持ち、アルラウネ狂信者となる〜アルル様を四天王にするため宗教で成り上がろうと思います〜  作者: 天海二色
第一章 荷物持ち転生者、アルラウネ狂信者となる

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第2話 花畑で運命と出会いました!

 早朝、ゼノは街を離れ森の中へたった一人で足を踏み入れる。モンスターも現れる危険な森だが、ゼノはどうでもよかった。


(花畑、本当にありますかね?)


 街の酒場で聞いた噂。

 森のどこかには、天国のように美しい花畑があるという。

 アニメで見た天国、正確には『神々の間』という名前らしいが、そこにも一面の花畑があった。もしかしたら森の花畑で、アニメの疑似体験ができるかもしれない。

 死に場所には、ぴったりだ。


(私は異世界でも生きる意味を見出せませんでした。もう、未練はありません)


 せめて死に場所だけでも理想通りに、と考えながら鬱蒼とした木々の間を突き進んでいると、ふと開けた場所へ出る。

 そこには真っ黄色の花が一面咲き誇っていた。


「これは、すごい……っ!」


 思わず感嘆の息を漏らすゼノ。

 アニメの花畑は彩りの色をしていたが、単色なのもなかなか壮観だ。

 黄色い花といえば向日葵が思い浮かぶものの、ここの花はナスの花に似ている。星型の、綺麗な花だ。

 そして花畑の中央には先客がいた。

 緑色の髪を持ち、黄緑色のワンピースを着た女性だ。一輪摘んだのか、黄色い花を髪飾りとして頭に飾っている。

 そしてその者の顔は──美しかった。

 円な瞳にすっと通った鼻筋に輪郭、ふっくらとした唇。胸から腰にかけての曲線も優美で、全身のどこを切り取っても絵になる。


(まるで、アニメで見た女神さまのような……)


 冒険者の主人公に対して、癒しの加護を与えていた女神。出番はさほど多くなかったが、登場の度に主人公を献身的に支えてくれていた彼女に、ゼノは敬愛の念を抱いていた。

 前世の自分は、救いを求めるばかりの信者達を相手にすることに、辟易していたから。


「……て」


 ふと、女性のふっくらとした艶のいい唇が動く。


「こっちに……来て……」


 彼女はゼノを手招きし、近付いて欲しいと願っている。


「ど、どうしましたか? 何かお困りごとでも?」


 戸惑いながらも歩み寄ると、日の下で輝く彼女の美しさに加えて、とてもいい香りが漂ってきて、ゼノは多幸感に満たされた。


「ううん……。貴方が、素敵だから……」

「素敵? 私が? ええっと、私は特に容姿に優れている訳でも、非凡な才がある訳でもありませんが……」

「そんなの、関係ない……。貴方が貴方だから、素敵だと、思ったの……」

「……本当に? 本当に、素敵だと思いましたか?」


 歩きながら、ゼノは訊ねる。


「能力も立場も、名前も経歴も関係なく、私を求めてくれるのですか?」


 縋るように、願うように、少し泣きそうな顔を浮かべて。


「えぇ……」


 逡巡する素振りさえ見せず、女性は薄く微笑んで頷く。

 その瞬間、ゼノは雷に撃たれたかのような衝撃を受けた。


(私が求めていたものは、こ(・)れ(・)だった……!!)


 無償の愛。

 前世では教主という偶像を求められ、今世では親なしスキルなしで蔑まれ、レッテルを貼られ続けていた。

 しかし女性は全てを取り払ったうえで、ゼノを見ていてくれる。求めてくれる。与えてくれる。

 これ以上、幸せなことはなかった。


「うふふ……」


 ころころと笑う女性の、円な瞳の上で震える睫毛が見える距離になって、ゼノは気付く。

 この麗しい女性の着ているワンピースは衣服ではなく、蔦の集合体だと。

 植物型モンスター、アルラウネ。

 人間を惑わし喰らう、人類の敵だ。


「いただき、ます」


 だがゼノにはそんなこと、どうでもよかった。


(この絶頂を味わったまま死ねるなんて、私はなんて幸福なんだ!!)


 満面の笑みを浮かべて、ゼノは両膝を花畑の上につくと祈るように両手を握り締め、首を垂れる。

 どうぞ養分にしてくれ、という意思表示のつもりだった。

 しかしワンピースから伸びる蔦が蠢いたものの、なぜか接近してこない。


「……? どうしました?」


 心配になったゼノが顔をあげた時、


「おい! 大丈夫かっ!?」


 花畑を踏み荒らしながら、冒険者が斧を片手に駆け寄ってきた。


「魔物め! その人から離れろ!」


 筋肉を遺憾なく躍動させ、彼はアルラウネに向け斧を振り下ろす。

 びきりと、ゼノの額に青筋が浮かんだ。


「貴様ぁっ!! 何という狼藉を働いているのです!!」


 そしてあらん限りの力で冒険者を蹴り飛ばし、花畑の上に横転させる。


「この方の食事を邪魔したばかりか傷をつけようとするなど、万死に値します! 地獄に落ちる覚悟はできているようですね……!!」

「ひぃっ! な、何なんだよお前っ! お、俺は助けようと……!!」

「余計なお世話です!!」


 ゼノの鬼気迫る形相に圧倒され、慄く冒険者。


「おーいっ! 一人で突っ走るな!」

「もう! 向こう見ずなんだからっ!」


 その時、森から新たな冒険者達が現れる。同じパーティなのだろう。

 チッ、増援かと舌打ちをするゼノ。


「アルラウネ様、失礼します!」


 ただでさえ戦闘力がない自分が、冒険者複数人を相手になどできない。

 よってゼノは一言、断りを入れるとアルラウネを抱え上げ、横抱き状態で花畑を駆け抜けた。


「ちょっと!? 討伐対象連れてかないでよ! 待ちなさーいっ!」


 しかしそれで見逃してくれる訳もなく、冒険者らは追いかけて来る。

 ゼノは足の速さに劣る。ましてアルラウネを抱えているのだ、いずれ追い付かれてしまう。


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