金欠のシルバーブレード
「ふんふんふふーん」
ところ変わって宿場町ヤメラムの大通りでは、ラーズが上機嫌に鼻歌を歌いながら、ワイバーンの生首を小脇に抱え町を歩いていた。
「ゼノがいねぇから旅がすいすい進むなぁ。もうヤメラムに着いちまった」
「あいつ、足遅かったものねぇ」
「ただでさえ足手纏いなのに、しょっちゅう寄り道もして」
「ははっ。追放して正解だよな、正解っ!」
彼の後ろを歩くマリアとダイアナの同意を受け、ラーズは高笑いをする。
「それなのに、どうしてパーティに入れていたのですか?」
素朴な疑問を投げたのは、ゼノと入れ替わりでパーティに加入した格闘家の少女、赤毛でツインテールが特徴的なユリエである。
小柄ながら単体でオークの群れを撃退できる実力者で、その活躍を聞き付けたラーズがスカウトしたのだ。実力以上に彼女の可愛らしさに好感を持ってのことだが、その事実をユリエは知らない。
「あぁ。あいつなんか知らねぇけど、妙に蓄えがあったんだよ。だから貰えるもん貰うまではって、入れておいてやったんだ」
「はぁ」
「大変だったぞ~。グズでノロマなお荷物のお守りはさ~」
大袈裟にげんなりするラーズ。マリアとダイアナもくすくすと笑っている。
やれゼノの所為で町の滞在期間が長引いたやら、ダンジョン探索に時間がかかったやら、戦闘中邪魔だったやら、愚痴をこぼしながらも一行が向かったのは、冒険者ギルドだ。
そこでは依頼報酬の受け取りの他、狩った魔物の素材を査定及び買取をしてくれる換金所がある。
「はぁっ!? 五千ガールドにしかならない!?」
その換金所カウンターで、職員から告げられた査定にラーズは驚愕した。
「前の町じゃ一万はいったぞ!? 半額だなんて、足元見てるってレベルじゃねぇだろ!!」
「何言ってんだ兄ちゃん、この素材じゃ五千ガールドが相場だぞ」
職員は両腕を組み、カウンターの上に並べられた赤い魔石を睨み付ける。
討伐したワイバーンから採った魔石だ。生首の方は討伐の証拠として回収され、手続きが終わりしだい解体屋に回されている予定である。しかし魔石はすぐに金に換えられると意気揚々と持込んだのに、聞かされたのは想定していた額の半分。納得できる訳がない。
「ふざけんなっ!! 俺は確かにこれで一万稼いで……っ!」
「ラーズさん。職員さんの鑑定に間違いはありません」
怒りから職員に手を出しそうになっているラーズを見て、ユリエが慌てて間に入って落ち着かせる。
「そういえば前に換金していたの、ゼノだったわねぇ」
「もしかして素材を虚偽申告して値を釣り上げていたのかしら」
「はぁ? ギルド職員の目を誤魔化せるかよ。信用ならんのなら帰った、帰った」
「ぐぅうう……!!」
討伐依頼成功が受理され、まとまった金額が手に入るのはもう少し先だ。
手持ちの金が心もとないラーズは仕方なしに魔石を言い値で換金し、五千ガールドを受け取った。
しかしこれでは四人分の宿代に届かない。ラーズは舌打ちをした。
「クソ! 最近、金の減りが早いのに稼ぎも悪いだと!? 目的地までまだまだあるってのに……!」
「積極的に依頼を受けるしかないわねぇ」
「それよりどこかでガツンと荒稼ぎしましょうよ」
不満を呟き合うラーズ達を、ユリエは離れた場所から眺める。
そして彼らの元パーティメンバーのことを思い浮かべたのだった。
(……ゼノって人、どんな方だったのでしょうか)




