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 私は今、ある家の前に立っている。


 ある家が誰の家かと気になる人がいるかもしれない。だけど私はある家としか言えないのだ。


「なので……」


 ある家とは、ある家だ。


 本当に意味がわからないかもしれないが、表札に『ある家』と書かれているのだからしかたがない。


「んー、でもなあ……」


 呟きながら建物を見つめる。そして表札に視線を移して首を傾げた。


 表札には『ある家』と書かれているけど、建物は見るからにランの家だ。


「私が間違った……? でも地図に書かれてる住所はここだしなあ。とりあえず間違ってはいないはず」


 まあ、この地図に書かれてる住所が間違っていなければだけど。


 とりあえずもう一度住所を確認する。


 やっぱりランの家の住所だ。


「ま、気にぜず入っちゃいましょう! 侵入者扱いされたら……謝って謝って謝り倒す! きっと許してくれるさ!」


 よし……行くぞ、入るぞ、こんにちは。


「お邪魔しまーす!」


 はい。やっぱり中も見覚えがある。もうこれ間違いなくランの家だよね。そうだとしたら地図を私に送った人物は、ここでなにをしているんだろう。


 ランとファラさんとネムさんを人質になにかを要求してくるつもりなのかな。でも私はそんな高価な物も特別な力もないし。犯人はいったいなにを狙ってるのか。


 もしランとファラさんとネムさんが人質にされているのなら、さっき元気よく中へ入ってしまったけ、ど……あれ。そういえば鍵が開いていた気がする。気がするというか、開いていた。つまり本当に事件なのでは。


「いやいや、まだ事件と決まったわけじゃない。だけどここから先はこっそりひっそり行こう」


 小さく頷いて、足音をできるだけ消して歩く。


「あ……」


 ……ねえ、私は一体どの部屋に行けばいいのかな。地図にはここの住所と時間しか書いてなかったんだけど。部屋については書き忘れしたのかな。


 一番大切なこと……いや、一番じゃなくても大切なことだよね。なんで書いてないのかな。


 どこかに書いていないかなと地図を端から端まで見るけど、どこにも書いていない。


「……」


 これ書いた人はちょっと円形に禿げればいいと思うよ。ううん、会えたら私が禿の魔法をかけてやる。


「待ってろよ、犯人!」


 小さな声だけど、勢いはあるその言葉で気合いを入れる。そして体力のない私は、全部の部屋を見て回ることにした。


 あれから数十分後。


 あっれー、ここにも誰もいない。ランとファラさんもいない。それからさっき思い出したけど、数日前ネムさんからお手紙をもらって今は休暇中だからいないんだった。


 んー、いまだ誰も見つけられずにいる私。本当にどこにいるの。


 この手紙の主は。

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