第7話 キラネーム
結構くたくたになった転校初日、帰りにはまた優芽に誘われた。
「寄道しようや。近くにマクドあるねん」
マクド! マックのことを関西ではマクドと呼ぶのは有名な話だ。それ位はあたしも知ってる。周囲のファーストフード店調査は必修科目だから、綴は速攻でOKした。そして当然のように倉良と桜子もやって来た。あんなに言い合いばっかりしてるのに優芽と桜子は仲が良いらしい。変なの。
こんな近くに!と驚く場所にマック、すなわちマクドはあった。綴の通学路とは反対方向だから気がつかなかったのだ。
山盛りポテトとアップルパイだのパンケーキを前にそれぞれが飲み物を抱えている。桜子の前にはサラダがある。
「こんだけポテト食べたらサラダの効果、なくなるんちゃうん?」
「これはレディーのたしなみ。お抹茶のお干菓子と一緒やの」
「ごめん。理解できへんわ」
相変わらず掛け合っている二人を無視して倉良が言った。
「綴って名前、私もいいなあって思うよ。お昼の時に桜子が言った通り」
「そう? 倉良って名前も可愛いよ」
「ううん、倉良ってキラネームみたいでちょっと嫌なんだけどね」
お干菓子の意味を優芽に披露していた桜子が話を中断し割り込んで来る。
「倉良ってキラネームとは全然違うで。すごいきれいな名前やと思うよ。漢字も上品やし、意味もええ感じやし」
「そ、そう?」
「意味ってどんな意味なん?」
優芽が倉良に問うた。
「うーん、発音ありきの当て字と思うけど。もしかしたらアルプスの少女かな」
「それやったらキラネームっぽいな」
「違うえ」
「へ?」
桜子が真面目な顔をした。
「キリスト教の言葉で『良い倉からは良いものが生まれる』みたいなんがあるんよ。良い倉ってゆうのは良い心って意味なんやて。せやから、倉良のお父さんとお母さんは倉良に『良い心』を持ってねって思わはったんちゃうん?」
ほぇーー。綴は感心した。古都でキリスト教の格言が出るとは思わなかった。あ、ここはミッション系の学校か…。
額に皴を寄せる綴を見て、優芽が笑った。
「これも京都人やで。こんな深いの、クラスでも桜子くらいやけどな」
綴は自分の名を改めて考えた。単なる文房具シリーズじゃない筈。だっておばあちゃんが考えたってお母さんが言ってたもの。あたしの名前はきっと京都生まれなんだ。
「なんやかんやゆうてポテト、これだけ減ってんのは、さすが私ら女子高JKやな。男子の前ではムリやろ」
雑談が続く中、優芽がポツリと言った。綴は女子高の生徒に以前から聞いてみたかったことを口に出した。
「ね、カレシがいる人ってどれくらいいるの?」
一瞬場が静まる。
あれ? あたし、地雷踏んだ?
綴の背景に『ガーン』の縦線が立ち込めた。




