第6話 木の葉丼
カウンターでは当番らしき生徒が待ち構えていた。
「248番の人、こっちでーす」
カウンターに並んだトレイに置かれていたのは、ネギと蒲鉾がアクセントになった玉子丼だった。
え? これ? 雅はどこへ行った?
渋い顔つきで綴はトレイをテーブルに運ぶ。
「どう? ご感想は?」
優芽が笑っている。綴はぼやいた。
「なんか、思ってたのと違う」
「せやろ。京都グルメは裏表があるねん。京都人と一緒やな」
「それは隠れた思いやりってゆうねん」
「へいへい」
お笑いみたいな優芽と桜子を他所に、オムライスを持ってきた倉良も興味津々と眺め入る。
「ふうん。普通のおどんぶりだねぇ」
「京都ブランドを妄信し過ぎた気がする」
「まあええやん、味は見た目の通りやで」
優芽に囃されて昼食が始まった。
ん、まあ美味しい。肉系がないしカロリーは健康的だ。綴がもぐもぐしていると桜子が
「衣笠丼って言うのもあるんやえ」
キヌガサ? 聞いたことある名前だ。けどご飯としては見当つかない。桜子が続けた。
「基本的には玉子丼やけど、そこに『おあげさん』と『おネギ』が入るんよ。おネギは九条ネギやね」
九条ネギ! ニュースで聞いたことある。畑から盗まれたって言うレアなネギ!? 綴は目を丸くした。
「九条ネギゆうても普通の青ネギちゃうん?」
混ぜっ返した優芽を桜子は軽く睨む。
「せやから大阪の人はガサツや言われるんやで。九条ネギは鴨が背負ってくるネギとは違うの」
「どう違うん?」
「そんなんは農家さんに聞かんとわからへんわ」
優芽は綴にサムアップして見せた。
「これが京都人やで。綴もはよ慣れや」
頷きながら綴は決意した。次はキヌガサ丼にチャレンジしようと。




