第4話 京 vs なにわ
1時間目はそのままホームルーム。クラスの各種委員や当番を決める場だった。綴は勿論何にも手を挙げず、推薦もされず、無言のまま終了した。そして5分間の休憩、綴は後ろの席を振り向いた。
「あの、さっきは有難う。いろんなことが全然判んないから教えてもらっていい?」
「いいよ。昨日は始業式と入学式の準備で今日が初日みたいなものだから、私も知らないことあるけどね」
「そうなんだ。でも前は共学だったし公立だったから雰囲気が全然違う」
「すぐに慣れるよ。西條さんって横浜って言ったっけ? 私は富山から来たのよ。私も最初は大変だったけど、慣れると心地いいよ。男子の目を気にしなくていいから本音飛びまくり」
「そうなんだ」
関西の男子ってお笑いのイメージしかないけど、この状況で余計な煩わしさがないのは助かる。綴がほっとしていると、周囲がざわつき背の高い女の子が現れた。
「横浜ってカッコええやんなあ。めっちゃ羨ましいわ」
後席の倉良が吹き出した。
「優芽、コンプレックス? 去年私も言われたよ、スキー場が近くていいなぁとか。西條さん、この子、田崎 優芽。ナニワ女子よ」
「えへん。日本と世界の潤滑油、大阪の田崎優芽です。枚方から来てんねん」
ヒラカタ? どこだ?
綴が首を傾げたところで予鈴が鳴り、
「ほんなら昼休み、ごはん一緒に食べような」
と優芽が去って行き、2時間目が始まった。浮いてばかりでもなさそうだ。
倉良が言ったとおり、午前中は卒業生の進路状況解説、進路による授業選択の話、早くも修学旅行の説明などいわゆる授業というものは皆無だった。そして迎えた昼休み、先程の優芽がやって来た。もう一人、ストレートロングの黒髪が美しい生徒が一緒だ。
「ほんならカフェテリア行こか。お弁当持ってるんやったら持って行ったらええで。あ、この子はな、えっと、ほらオウコ、自己紹介は自分でしぃや」
「何言うてんの。あんたが勝手に話、進めてるんやろ」
口調がクールである。
「ウチは寺前 桜子。こんなアホと一緒にせんといてな」
桜子はさらっと毒舌を吐き美しく微笑んだ。すかさず優芽がツッコむ。
「アホって何やねん。こいつ、京都生まれやからってめっちゃ差別してくるんやで。『おうこ』って桜の子って書くんやけど、今どき『子』がつくの、クラスでウチだけやとか言うて、それがどないしたって話やろ? 校長先生かて『子』つくわっちゅうねん」
倉良がパンパンと手を鳴らす。
「ま、優芽も桜子も1年の時からずーっとこんな感じだから、私が入らざるを得ないわけ。さ、二人とも、席がなくなるからさっさと行くよ」
「えらいお世話になってます…」
倉良の割り込みにナニワ娘と京美人は大人しくせき立てられる。あは、何だか楽しげだ。個性がぶつかってるけど…。またやいのやいの言い始めた優芽と桜子の後ろを、倉良に連れられて綴は追った。『浮く』どころか絡め取られそうだ。




