第39話 おきばりやす
翌朝、登校した桜子は真っ先に綴の元にやって来た。
「前に言うてた漆のペンやけどな、隼太、正式にやってみたい言うてんねん。漆だけやけど使たってくれへん?」
「やる気になってくれたってこと?」
「そうやねんけど、まずは練習って言うのか、いきなりぎょうさんは描かれへん思うから、ちょっとずつやったらあかんやろか」
「あー。あのね、絵を描く作家さんは当てが出来たの」
「そうなん?」
「うん。それで万年筆もね、出入りの卸の人が探してくれるって。最初はちょっとって言ってたから大丈夫」
「そうなんや。ほんなら、それが入ったら持って来てくれる? ウチが隼太に渡してみる」
「うん、ありがとう!」
綴は桜子を見上げ、
「桜子ってカレシを引き立てようとして、なんかいじらしいなぁ」
「え? いや、そんなんちゃうねん」
桜子は慌て、頬を染めた。
「いいなあ、ラブラブ」
「せやから、ちゃうって!」
桜子はバタバタと席に戻った。
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帰宅後、綴が自室で宿題をしていると、階下から
「綴はん! 有田はんが来てはるで。なんや渡したいて」
お。きっとペンだ。綴は階段を駈け降りた。
「すみません。ありました?」
「ああ、あったで。工芸品屋に卸す分の一部を分けてもろたんや。取り敢えず1ダースでええやろ。ちょっとずつ様子見た方がええから」
「は、はい!」
伊佐九は紙袋を綴に渡しながら、声を潜めた。
「ほんで、これのお代はどうしたらええの?」
「あ」
「一応、権利関係はええことになってん。自分とこのデザインで売るんやったら、とやかく言わへんらしい。せやけどモノ代は要るさかいな」
「店の請求に混ぜといて」
少し離れた所で、硯の声が聞こえた。うわ、おばあちゃん、地獄耳?
「えらいすんまへん。そないさせてもらいます」
伊佐九はペコペコ返事すると、『ほな』と言ってそそくさと出て行った。綴は紙袋を抱えたまま硯に近づいた。
「あのね、おばあちゃん…」
「いっぺん決めたことは、最後までおきばりやす」
「は、はいっ」
「鬼ババアはな、内緒話に限って聞こえますのや」
硯はしれっと言った。
おばあちゃん、みんなお見通しなのかな…。
二階への階段を上がりながら綴はドキドキした。
その日、綴は綴った。
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鬼のおばあちゃん、ペンの話、全てお見通し? でもさ、一度決めたことは最後までやりなさい(おきばりやす)って言われた。そこは素直にさすが!って思う。自分でも鬼ばばあって言ってたし、都合の悪いことはみんな聞こえちゃうって、年寄あるあるなんじゃないの? でもありがとう、おばあちゃん。あたし、これ、やってみたいんだ。外国の女の子に、カワイイー!って叫ばせたい。あたし、おきばるよ!(使い方、合ってるのかな)
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