第36話 アイツはあかん
「って、なっちゃったのよ」
いつものマクドで倉良の報告を聞いた三人は『ほぉー』っとため息をついた。
「ええ話ちゃうん」
桜子は倉良の腕を擦る。
「やけど、倉良の魂胆はあっさり挫折したっちゅうことやんな」
優芽は口を尖がらせている。倉良はここに来て、あの成り行きが急に残念になって来た。
「だよねー。折角お父さんをビビらせるチャンスだったのに、結果的にはエモくなっちゃった」
「いいじゃない、それで。それほどお父さんと仲がいい女子高生なんて珍しいよ。親孝行にもなるし」
「ま、執筆料取れるかも知れへんな」
「せやから大阪人はセコいねん。ええ話も台無しやん」
いつものバトルが始まるかと思ったら、桜子は急に綴の方を向いた。
「せやせや。前に綴が言うてた和風のペンの絵やけどな、ウチが心当たりって言うてたやろ。あれ、隼太のことやってんけど、アイツ、あかんわ」
「えー? なんで? 大学行きたいから?」
「そうやなくてな。隼太は職人の卵やから模様はきれいに描くんねんけど、可愛いイラストみたいなんはあかんねん。幼稚園児の絵日記みたいになるねん」
「そう言うものなの?」
「ウチにもその辺はよう判らんねんけど、やっぱり得意分野ってあるみいたいやわ。それより、百花苑って文房具屋さんやねんから絵描きさんとか来やはらへんの?」
綴の頭には、やはり滝岡さんしか浮かばない。
「絵手紙の先生が来るね。もうおばあちゃんだけど、一応聞いてみる」
「うん。その人が描けるんやったら、漆塗った上にどないかして描いてもろたら形になる気ぃするなぁ」
「うんうん」
なるほど、職人と作家のコラボモデルになる訳だ。滝岡さんの絵がどんなだか知らないけど、綴は一旦納得した。




