第32話 凄いな、エンピツ
綴は夕食時に学校での大抵の出来事を母・美筆と祖母・硯に話す。硯はそれを楽しみにもしていた。優芽の鉛筆転がし事件は勿論、例外ではなかった。
「もうーさぁ、大爆笑」
「お昼のメニューを鉛筆で決めてるってこと?」
「そうそう。優芽のお母さんもそうなんだって。って言うか、お母さんのやり方を優芽が真似したらしいけど」
「なるほどね。いい方法かもね」
「でもさ、鉛筆の芯が折れたりしないのかな」
「その鉛筆で字ぃ書いたりしてはらへんのやろ」
「ああ、たぶん」
「削っていったらメニュー消えてまうしな」
「そうだよね。専用って言ってたかも」
硯は突然微笑んだ。
「綴はんも、そう言うお年頃やねんな。箸が転がっても可笑しいゆうよってにな」
「あ、先生もそんなこと言ってた」
「せやけど、鉛筆は大事にしよし。鉛筆一本粗末にする人は、大成出来ひん」
「ああ、一円を笑うものは…って話だよね」
「せやせや。一事が万事ゆうてな。その優芽ちゃんゆう子も、その鉛筆は大事にしてはる思うえ」
硯は優芽の鉛筆の使い方に、こっそり感心していたのだ。
その日、綴は綴った。
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優芽の鉛筆の話をしたら、お母さんとおばあちゃんにウケた(と思う)。そう、たかが鉛筆だけど、ここぞと言う時に鉛筆が無ければ困るのだ。それから、鉛筆で書いた文字って、水に濡れても判別できるから、実は万能筆記具だと聞いたこともある。消しゴムと一緒で、身を削って気持ちを伝えてゆく道具。そしてみんなを笑いに巻き込んでクラスに連帯感までもたらせた道具。凄いな、エンピツ。
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