↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/46

第25話 交換日記

 昼休み、カフェテリアで綴は改めて倉良に向かい合った。


「ね、朝言ってた形見ってどういうこと?」

「ああ、綴には言ってなかったっけ。お母さん亡くなったのよ。だからお父さんと二人暮らし」

「そうなの…」


 あたしも片親だけど、浮気で離婚とは切なさが全然違う。それにあたしの場合は補って余りあるおばあちゃんがいるし。


「あのペンでね、お母さん、交換日記を書いてたの」

「交換日記?」

「うん。高校生の頃のお父さんと」

「えー? じゃ、同級生みたいな?」

「そう。付き合ってたからね。交換日記はその頃流行ったのかな。よく判んないけど、お母さんが亡くなってからもさ、お父さんよくそれを読み返してるのを知ってるんだ。お父さん、隠してるつもりだけど全然隠れてなくて、それで私もこっそり盗み読みしたんだよね」


 ほえ? どっちも恥ずかしそうだけど。傍らで優芽と桜子も驚いている。流石はしっかり者と言うか、抜け目ないと言うか、要は倉良である。桜子も小声で、


「よう読めるなぁ。親の赤裸々な話やろ?」


 自分まで赤くなっている。


「きっちり読んでるわけじゃないよ。そりゃ私だって恥ずかしいから走り読みだけ。でもさ、前に桜子が言ってたみたいな私の名付けの秘密とか判るかもって思ってね。だけどこの頃は私もちょびっと進化したのよ」

「はい?」


 理知的な倉良の意図が周囲には判らない。


「お母さんの代わりに、私が続きを書こうかと思ってね」

「えー? 父と娘の交換日記?」


 一同開いた口が塞がらない。


「だってほら、口に出して言えないことも書けば伝えられるとか、あるじゃない」


 なるほど。綴は感心した。綴る力。おばあちゃんがあたしに日記を書けと言った真意と繋がる。そうだ、ペンは力なり。


「だから出来れば同じペンで、同じ空色のインクで書いてみたいの。お母さんのフリして」


「は?」


 一同の目は点になった。一瞬後、優芽が腕組みをする。


「それ、なりすましってこと? 亡くなった自分の妻が、交換日記を書いて来るって、結構ホラーちゃうん?」

「確かに…」


 桜子も頷いている。倉良はニンマリとした。


「そう。最初はそう言う感じで始めて、お父さんの様子見てカミングアウトするって作戦」

「へぇ、なんかおもろそうやな。桜子も交換日記したらええやん、復活カレシと」

「ウチらはええの。SNSがあるから」

「手ぇで書くからええんやろ? なあ綴」


 優芽が言い、綴はやや複雑な気持ちながら頷いた。


「それはそう。百花苑、って言うか西條家の家訓なのよ。手で字を書くってことは、そこに気持ちも込められるし読み解ける。スマホだとみんな同じ字になっちゃうから、何て言うのか情報量が全然違うし、読む時の感情も違うっておばあちゃんが言ってた。あたしもその通りと思うの。だから今じゃ綴って自分の名前も大好き。倉良、倉良の野望のために、インクカートリッジ、全力で探すね」


 乗りかかった船だ。綴は頬を膨らませた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。