第24話 可愛いペン
翌週、綴が登校すると、優芽が倉良に話かけていた。座ったままの倉良が綴をちらっと見上げる。
「流石は文房具屋さんねぇ」
「せやろ。魔法の店やで百花苑。綴、ツレ、めっちゃ喜んどった。一緒にひらパー行こうゆうてたで」
優芽が笑った。そうだ、そもそも…、
「ひ、ひらぱぁって何?」
「知らんの? ってまあ知らんかな。遊園地やで。枚方にあるねん。ひらパー兄さんとか知らん?」
倉良が優芽の袖を引っ張って口を挟む。
「それ、きっと全国区じゃないよ」
「そうなんか…。ひらパーは世界レベルや思うててんけどな。ユニバと並んで」
落ち込む優芽を他所に、着席した綴に向かって倉良が続けた。
「そっか。綴に聞けばいいんだ。ね、ウチに使えないペンがあるんだけどさ」
「使えないペン?」
「うん。万年筆なのにインクがないの」
万年筆? JKとは無縁に思える文房具。百花苑にもあった気がするが、インクって別売りだよね。
「インクのボトルっぽいのは、お店にあったよ。大人用みたいだからよく知らないけど」
「あー、そう言うんじゃないんだ。それってほら、外交文書に大統領がサインする時に使ってるみたいなのでしょ? ニュースで見るような。そんなのじゃなくて可愛いの。明日持って来るね」
可愛い万年筆? ほう…、百花苑にあったっけ? カワイイ系は随分押さえたつもりなんだけど。
+++
翌朝倉良が綴に見せた万年筆は、本当に可愛かった。ぽっちゃりした白いボディに赤いラインが入り、キャップの先端に可愛い花びら模様が描かれている。
「うわ、まじ可愛い…」
「でしょ?」
「これはウチには置いてないよ」
「だよね。古いもの。お母さんのだったの。高校生の時に使ってたんだって。その頃に流行ったみたい」
横から優芽が覗き込む。
「へーぇ。今でも流行りそうやな」
「うん。でもインクがないから書けないのよ」
そう言いながら倉良はペンの胴をクルクル回して外した。
「ほら、カートリッジになってるの。それがないのよ」
外されたペンを持って綴は考え込んだ。インクをペン先にチョンチョンとつけるのとは仕組みが違うのかな。
「うーん。帰っておばあちゃんに聞いてみるよ。これ、預かっていい?」
「有難う。あの、大切だから、くれぐれも気をつけてね」
「そらそうやな。倉良のお母さんの形見ってことやろ?」
優芽がさり気なく言った。 形見? え?
綴の目が丸くなった。




