第21話 メンディングテープ
「でもさ、嵐山じゃ仲良さそうだったよ。あんまりまじまじ見るの、悪いなと思ったもん」
「あの日ぃは、そのリカバリーのために誘てみてん。ちょっとは性根しっかりしたかな思うて」
あらあら。
桜子はハンカチを握りしめた。何だか口止めどころか自白モードになっている。
「せやけどちっとも変ってへんかった。ウチが盛り上げたろうと思うていろいろ仕掛けてんけどな、乗ってきぃひんねん」
「そうだったの…」
「最後はウチ、アイツを放ったらかしにして帰ってしもてん。追っかけて来るかなぁってちょっとは期待しとったんやけど、あかんたれのままやった」
握り締めた桜子の手の爪が白くなっている。
綴もしばらく押し黙った。若い二人の大きな苦境、割って入れる話ではなさそうだ。桜子は俯いたまま、
「ウチ、どうしたらええんやろ…。隼太はあれからLINE入れても既読にもなれへんし」
うーん。綴は困った。しかしこのまま落ち込んでるのもなぁ。
「それで桜子は、あたしに何を口止めしようとしたの?」
桜子は顔を上げた。沼から引き上げてもらったように表情が変わる。
「そうやった。要は、ウチと隼太のこと、周りに言わんとって欲しいねん。ウチはまだ結論出してへんし」
「でもさ、あたし、その人のこと、知らないよ?」
「せやかて見たやろ。マクドでも嵐山でも二回も見られたやん。綴かて、いろいろ言いたなるやろ」
「だけど口止めされたし。吉井さんと針先さんだっけ」
「あれはごめんやった。あの子ら、きつぅゆうたんちゃう? あの二人はな、家の商売の関係で、ウチらのこと知ってるよってに、いろいろ気ぃ遣こてくれるねん。時々暴走しやるけど」
ああ、そう言うこと…。結構狭い社会なんだ。
「あのな、隼太ってこんな子」
桜子はバッグから封筒を出し、更に写真を出してテーブルに並べた。写真は四つに裂かれているが、隼太と桜子のツーショットだ。
「最近の二人の写真ってこれしかないねん。ウチが仕掛けて嵐山で撮ってもろたやつ」
近くで見ると、結構なイケメンである。しかしそれよりも、
「なんで写真が破れているの?」
「腹立ってウチが破った。捨てよう思うたけど、よう捨てんかった」
ははーん、やっぱまだ好きなんじゃん。桜子もめんどくさいな。
「桜子、お店に行こ!」
「え、なんで?」
「行けば判るよ。あ、その写真持って来てね」
階段を降りて店に入った綴は、売場から小物を持って来た。
「じゃーん。今日の桜子にはこれをお勧めします!」
桜子は驚いた。
「これって、テープちゃうん?」
「うん、メンディングテープって言うの。普通のテープとは違って、書類の補修用。強力で二度と破れたりしないし、汚れにも強いよ」
「これで…?」
綴は桜子の肩を抱く。
「まずはこの写真の修復。それと桜子の心の罅もこれで繋ぐの。隼太クンとの間が二度と裂けないようにね。まだ好きなんでしょ? 写真は破れても、その中の隼太クンは破れてないもんね。それにさ、お家の話はどうでもいいじゃん。未来の心配は未来が解決するよ」
涙の跡がついた桜子の頬は桜色に染まり、背後で見て見ぬふりをしていた硯がニンマリと微笑んだ。
その日、綴は綴った。
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超びっくりよ。桜子、17歳にして婚約者がいるの! ここは王朝かよ。さすがは京都ガール。幸い相手は野獣とかじゃなくて、イケメン高校生で桜子も好きだから、めでたしめでたし…なんだけど、今日の話じゃまだまだ波乱万丈っぽいな。まるで朝ドラだよ。でも桜子も可愛いよね。写真破いてやる!って破った割に、そのカレシはちゃーんと破れないで残ってるんだもん。好きな人の写真を引き裂くなんて、出来っこないよね。踏み絵みたい。メンディングテープが二人の心も永遠に繋いでくれますように…。 あー、あたしもカレシ欲しーい
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