第25話 なんか僕が青春っぽい事をしている件について①
漆黒漆黒深淵の底。絶えず唸り声のようなものが響き続ける深闇の底。
ここは何処だろうか。不思議な感覚だ。水に包まれていて、ひたすら沈んでいくような不思議な感覚。しかし、苦しさはなく呼吸も問題なく出来る。不快感もなく、むしろ心地良さすら感じるまである。
この感覚はなんだろうか?
どうにも初めて味わうようなものとは思えない。ずっと側にいたような、共に戦ってきた、そんな感覚だ。
突如、暗闇に薄い光源が二つ発生した。等間隔に配置されたそれは、まるで巨大生物の眼に思えた。
『グルルルルルルルルルルルルルルルルルルル』
あぁ、やっぱりだ。僕はこいつを知っている。
奴はその巨大な顎を大きく開く。そして僕を優しく飲み込んだ。
◆
「おい、ムンク!! おい起きろ! 起きろってば!!」
「え、朝か。なんか変な夢を見ていた気がするけど、今いち思い出せないんだよなぁ……」
目を開くと目の前にはツインテールツンデレ美少女こと鉄槌千棘がいた。 相変わらずこの状況には慣れないが、彼女の勢いに押され始めている今日この頃。
「何寝ぼけてんだよ。とっとと朝ご飯食べて、巡回に行くぞ!」
何とか抵抗して布団に戻ろうとするが、腕でガッチリと首をホールドされて、それは叶わなった。
ていうか女子特有のいい匂いがする。毎度思うのだが、彼女はボディータッチの頻度が多いのが困り種だ。心臓に悪いからほんとまじで止めて欲しい。
えーと何だっけ……寝ぼけすぎて何にも思考が回らない。鉄槌に引きずられながら必死に脳を回転させると、ぼんやりと頭に昨日の出来事が浮かび上がって来た。
あ、そっか。一度拠点であるこの学校に戻ったのか。
謎の黒衣の男と邂逅後、僕らはこの学校に戻り、疲れでそのまますぐ夢の世界へと旅立ってしまったのだ。
昨日の事はあの場にいなかった天草達にも共有した方がいいだろう。
何はともあれまず朝食だ。折角作ってくれているわけだし、無駄にするのも申し訳ないからね。
◆
「そう、そんなことがあったのね。何と言うか……事実を受け止めるのに抵抗が出る内容だわ。ともかく千棘とムンク君が無事で良かった」
「天使さんとかいたんだねっ!」
「いや、心。あれはどっちかっつーと悪魔だったけどな」
「ゾンビがこれ以上強くなるなんて……」
天草達との朝食を終え、そのまま昨日の出来事を報告する事に。
報告を受けた面々は純真を覗き暗い反応を示した。そりゃそうだ。ただでさえゾンビとかいう意味不明かつデストロイな状況。あげくの果てに翼持ちなんか出たらいよいよジャンル不明だ。
え、ファンタジー?
統一して。ほんと世界観を統一して欲しい。
「さてと、ご飯を食べ終えたところで今日はどうしましょうか。ムンク君はまた陽乃さん探しかしら?」
「いや、無理も良くないし今日は止めておくよ。それよりも今日はそっちの方を何か手伝おうかなと。外から見えたけど菜園とかあるんでしょ?」
「あら、お気遣いは嬉しいけど昨日の今日でしょう? 今日ぐらい休んでいてもバチは当たらないわ」
天草の甘い提案は大変魅力的だが、そうもいかない。これが親であればその骨が溶けるまで脛をしゃぶり尽くす所存であるが、相手は赤の他人だ。
ここは対等な関係を築くためにも、ある程度手伝った方がいいだろう。
「いや手伝うよ。拠点どころか飯まで用意してもらって何もしないのは筋が通らないし」
「じゃあお言葉に甘えようかしら。正直言えば男手が欲しかった所だから助かるわ」
そう言うと天草は舌をペロリと出し、小悪魔的な笑みを浮かべた。なんだよそれ、超かわいいじゃんか。超絶美人なのに、可愛さも併せ持つとかつよすぎるでしょ。
「それじゃあ皆、今日は屋上菜園の手入れをする事にしましょうか」
天草の提案に特に反対する者はおらず、ここにいる皆で屋上へ行くことになるのだった。
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