第26話 なんか僕が青春っぽい事をしている件について②
「フフフ、どうかしらムンク君。私が作ったわけではないけど中々のものでしょう?」
屋上に出るとまず巨大なビニールハウスが目に入った。ぱっと見、屋上の半分を越えるぐらいの大きさだろうか。確かに天草が言うように中々の物で、よくここまで大規模な設備をたかだか一学校に設置出来たものだ。金持ちパワーまじ怖い。
「うわぁ、凄……」
ビニールハウスの中に入ると更に驚く事となる。中は地面沢山に土が盛られ、その上に様々な野菜の苗が植えられていた。那須、トマト、キュウリなどなど。種類も豊富だ。これなら上手く運用すれば食料には困らないかもしれない。
「へへっ! すごいでしょーーー!!」
「なんで心先輩が誇らしげなんですか……」
「ま、それが心らしさだけどな」
何故か誇らしげな純真に愛贄と鉄槌が呆れたように一言。
しかし純真は誇らしげに胸を張っているが、意外とサイズがありますねぇ。もちろん何とは言いませんが。
おっと、愛贄にすんごい睨まれたので、この思考はここで止めにする。これ以上関係を悪化させたくないし。
「それじゃムンク君、水やりを頼めるかしら」
「あ、はい」
菜園の大きさに呆然としていると天草に水道が繋がったホースを渡された。なるほど、この広さの水やりとなれば骨が折れそうだ。若干ゲンナリもするが、ともかくやらなければ終わらない。蛇口を捻り、水まきを開始した。
「よっしゃ、じゃあ始めるか!」
「そういえば血棘先輩はもう朝の巡回は終わったんですか?」
「え、まだだけど?」
他の面々も作業を開始するみたいだが、鉄槌と愛贄だけは手を止めていた、何やら微妙な雰囲気だ。愛贄はジト目で鉄槌を見つめている。
「……何かあったらどうするんですか?」
「しょ、しょうがねえだろ! 女一人だ何かと危ないし……あ、後でムンクと一緒にやるよ! その方が安全だろ!」
いつの間にか僕もやる事になっていた件のついて。あーでも、そういえば寝起きにそんな事を言っていたな。ま、いいか。ゾンビ関係は僕の範疇でもある。
「正論ではありますが、今までこっちが止めても散々と無茶をして来た人の発言とは思えませんね」
「うぅ……べ、別にいいだろ。し、心境の変化ってやつだよ!」
鉄槌は頬を赤らめて愛贄に反論している。何となく感じていたが、鉄槌は以前から無茶してたのね。まぁ、安全に心がけるのはいいことだ。何がきっかけかは知らんが、命あっての物種だからね。
しかし、愛贄は愛贄でどこか納得いかない部分があるのか、まだ鉄槌にやや厳しい視線を送る。
「あ、アタシも水やりしてくる!!」
あ、逃げた。しかも、余ったホースを掴んでこっちの方に来る。このタイミングで来ないで欲しい。なんか愛贄が僕の事すんごい睨んでくるし。こわい。
「おいムンク! 何チンタラやってんだよ! そんなんじゃ日が暮れちまうぞ!!」
「え、ちょっ。そこはもう僕が水を巻いたんだけど」
鉄槌は愛贄の言及を誤魔化すためか、勢いに任せて水を滅茶苦茶に巻き始めた。ちょ、やめれ。
「そらそらそらそらっ!」
「ちょっ冷た!? やめ、ってこら! 僕にも水がおもいっくそかかってるんですけど!?」
「へへへへへへへ!!!!」
僕の被害などお構いなし。鉄槌は満面の笑みでホースを振り回している。
「ふふ、こらこら血棘。水は丁寧に撒かないとダメよ」
天草も一応、注意してはいるが本気ではなさそうだ。むしろ嬉しそうに、いつも通りのおっとりとした笑みを浮かべていた。
結局この後鉄槌と校舎周辺を巡回し、そんなこんなで一日が終了した。なお鉄槌の新鈍器バールのお披露目会やシャワー室で幸う……ゲフンゲフン、不幸にも愛贄とバッタリ遭遇した事は割愛する。
あれ? ……僕なんか青春っぽい事してない?
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