第18話 僕は某猫型ロボットの適正があった件について
「面白いものって? 何だよもったいぶってムンクぅ」
「おっふ……」
僕の首に手を回して体を寄せてくる鉄槌。
何これやだ。滅茶苦茶良い匂いする、ヤバい、死んじゃう。
「あれれ? ムンク君、石像さんみたいに固まってるよ?」
「北原先輩の事だからエッチな妄想でもしてるんじゃないですか?」
純真はともかく、愛贄の中では完璧に変態認定らしい。まぁ、男子高校生はエロい事か世界平和についてしか考えてないから、あながち間違ってないけど。
ていうか助けて。
「ムンク? ムンクったら。急に固まってどうしたんだよ?」
「ふふ、ムンク君は千棘が魅力的すぎて困っているみたいよ?」
天草の言葉に鉄槌は一拍だけポカンとした顔をして、すぐ赤面。
「は、はぁ!? な、何言ってんだお前!? この変態浮気野郎が!!」
そしてドンッと突き放された。
ふぅーやっと解放された。後、数秒遅かったら致命傷だったぜ。隠キャオタクに過度なスキンシップは法律で禁止されいるから止めようね。
「いや、言うこと欠いて変態って。しかも誰が浮気野郎だよ」
しかし浮気と来たか。どうにも彼女らの中で僕は幼馴染と付き合っている認識らしい。全然検討違いだし、実際付きあう可能性など微塵も無いのだから、ただただ惨めなだけという。
「シャーーー!!!」
「先輩しかいないと思いますけど」
鉄槌は全身の毛を逆立てて威嚇している。猫かよ。
そして相変わらず愛贄の僕に対する態度はキツい。
「へ、へへへ……」
先の抱擁事件やあまりにも幼馴染に容姿がそっくりな事もあり、どうにも彼女には特に気後れしてしまう。結果僕は愛贄が引くレベルの笑みを浮かべるという。どう見てもニチャァと効果音が聞こえるレベルのキモオタスマイルです。本当にありがとうございました。
「ほらほら血棘も冬雪さんもあまりムンク君をいじめないの。それでムンク君、面白いものって何なのかしら」
状況のグダグダ感を見かねたのか、天草は助け舟を出してくれた。かたじけねぇ。
「何が出るかな。わくわくっ!」
いちいち純真は動作が可愛いな、おい。この人、無意識に沢山の男子を落としてそうよね。
そんな彼女の期待に応えるために取り出したるは!!
「無駄に沢山の食料〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ドスンッと地面を揺らす音と共に現れたのは、教室の一角を埋め尽くす量の段ボール。中身は以前スーパーから無駄に沢山回収し、インベントリに格納した数々の食料である。
これだけあれば少なくとも二、三ヶ月は食うことに困らないだろう。
ここまで手厚くするのもどうかと思うが、食料を余るほど大量に確保している現状で分け与えない理由もあまりない。それに彼女らはどうやら僕の幼馴染とそれなりに接点があったようだし仲良くしても損ではないと思う。この場所が拠点として使えるし、何よりここに幼馴染が戻って来る来る可能性だってあるのだ。
「おおおおおおおおおおおおお!?」
「ゆーちゃんゆーちゃん! お肉の缶詰もあるよ!?」
「あ、本当ですね。しかし、この量だと軽く1ヶ月は持たせれそうですね!」
「あらあら調味料まであるのね。いくつか切らせていたから本当に助かるわ」
うんうん、中々良い反応だ。純真や鉄槌はもちろん、あれだけ警戒心マシマシだった愛贄でさえテンションが高めだ。
「ま、これが僕のもう一つの能力ってわけ。つまり僕は猫型ロボットと言っても過言じゃない」
「猫、ロボット?」
「おいお前、そのネタはギリギリだぞ」
純真は首を傾げ、鉄槌は半目で呆れたように溜息を吐いた。表現的にはピッタリだと思うけど。まぁ、版権ネタって危ないもんね。くわばらくわばら。
「ふぅムンク君、貴方には驚かされてばっかりね。でも良かった、これで当面の食料の心配はしないで良さそう」
「まぁ、こんな世界だしあまり無駄遣いはしないほうがいいと思うけどね」
しばらく食料にはしゃぐ彼女達の様子を見ていると、天草がこっそりと耳打ちしてきた。
「冬雪さんはこのお菓子が本当に好きなの。沢山上げたらどうかしら」
耳元で話しかけないで欲しい。こそばゆいし、なんかこうゾクゾクする。
それはそておき天草が持ってきたお菓子は傘状の菌類に由来した食物を模したチョコ菓子だ。近年、イネ科タケ亜科タケ類の若芽を模したチョコ菓子との売り上げ勝負で大敗を喫した為、ろくに生産されていなかったものだ。こんなの混ざっていたのか。
「えっ、僕に行けって?」
「うふふふふふ」
天草はニコニコとおっとりとした笑みを浮かべ続けている。案に早く行けということらしい。天草的にはもう少し僕と愛贄の関係を改善したいらしい。行くまで笑ってそうだし行くしかないか……。
「え、えっと。これいる? 沢山あるんだけど」
「……物で釣ろうとするなんて変態ですね」
言われた通り、チョコ菓子を持っていったのに滅茶苦茶睨まれたんですけど。話が違いますよ天草さん。
取り付く島がないと判断し戻ろうとした時、袖を引っ張られた。なんぞ?
「こんな事で許したりしませんからねっ!! ……で、でも、有り難く貰っておきますっ」
振り向くと、そこには頬を赤らめて俯く愛贄が。その破壊力たるや神の雷の如くのもので。
何だよ……不覚にもときめいちゃったじゃんか。
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