第19話 ツインテールツンデレさんが幼馴染探しについてくる件について
「さてと、話が落ち着いたところで幼馴染が行きそうな場所について教えてよ」
インベントリの御披露目が済んだところで、さっさと本題に入ることにしよう。やや性急気味な気がしないでもないが、変に馴れ合うつもりもない。
「ここから近くだと……ホームセンターかしら? 近いと言っても徒歩で行けば一時間以上かかるわ」
「あー彼処のホームセンターかぁ。新品の相棒がありそうだな!」
相棒と書いてバールと読むな。
天草は地図を取り出し、学校からやや離れた場所を指差した。
あ、そういえばバイクを放り出したままじゃん。(※一◯話参照)
一度回収してから向かうか。
「ありがとう。じゃあ、さっそく行ってくるよ」
まずはバイクの回収からだな。とにかく善は急げとも言うし、直ぐ外に向かおう。……そう意気込んでいたが、進行を阻むようにツインテールが視界に飛び込んだ。
「……ちょっと待てよ」
「えっ」
「アタシも手伝ってやるよ。陽乃探索」
一瞬、何を言っているか分からなかった。
鉄槌が僕を手伝う? え、なんで?
正直、危険も高いし、ほぼメリットなんてないはずだ。
「いや、いいよ。わざわざ鉄槌がリスクを負うことないでしょ」
「つれないこと言うなよ。だいたいお前、ここら辺の地理詳しくないだろ? 下手に迷うと日が暮ちゃうぞ」
「うっ……」
それを言われるとやはり弱い。実はスマホの地図アプリを使おうにも、現在はバグだらけで見当違いの方向に案内されかねない。正直、案内がいた方が助かるというのが本音だ。
「それにいつまでいるか分からないお前を宛にし過ぎるのも良くないだろ。今の内に外の様子を見ておいたほうがいいだろ?」
なるほど一理ある。
彼女は彼女なりに先の事を考えているらしい。彼女は僕というセーフティがいる内にある程度やれる事はやっておきたいという事だろう。
「千棘……」
鉄槌の提案は何らおかしい事ではない。むしろリーダー立場であれば推奨すべき事柄だろう。しかし、天草それ以上に外に対する不安が強いようだ。他の面々も声には出さないが不安で顔を歪ませている。
「大丈夫だって。学校の方は今ゾンビが少ないしバリケードもある。アタシの方もムンクがいるからある意味安全だ。だから、そんな顔しないでくれよアリアさん」
そんな彼女の強い不安を感じたのか、鉄槌はニカッと満面の笑みを返した。この場面で思う事じゃないけど、鉄槌ってやたら女子にモテそうだよね。
「……無理しないでね」
「ちーちゃん、頑張ー!!」
「千棘先輩、怪我しちゃう駄目ですよ?」
「おうっ! 戦利品とか楽しみにしとけよ!」
とりあえず上手く話が纏まったようで。
ところでまたなんだけど、僕に対する了承は取ってなくない?
◆
「ふぅ……ようやくバイクを回収出来た」
目的地のホームセンターへ行くためにまずバイクを回収しに来た。やはり日を置いたせいか、またちらほらゾンビがいたので大剣で軽く一掃。
「やっぱり、お前戦い慣れてんなー」
バールを持ったツインテールが、しげしげと切り伏せられたゾンビを見ながら現れた。
結局、鉄槌は僕の幼馴染探しに着いてくることに。
「まぁ、戦い慣れというよりはこのステータスが凄いだけだけどね」
そう、別に僕は別に戦い慣れているわけではない。同じ条件であれば、鉄槌のほうがむしろ強いのではないだろうか。なにせ彼女は僕と違い生身の体でこの過酷な世界を生き抜いているのだ。
それに比べて、僕はゾンビ達に対してレベルアップにより上昇した身体能力で、ごり押ししかしていない。
「それでも十分すげぇけどな。お、ムンクのバイクはハーレーかよ! いいなー!!」
「まぁ拾い物だけどね。鉄槌も道中に良いのがあったら乗り換えたら?」
僕がバイクなのに対して鉄槌が乗っているは年季の入った原付だ。対してスピードも出ないし羨ましがるのも致し方ない。
「お、いいなその案。ま、世界が変わる前なら泥棒もいいところだけどな」
「まぁほらそこら辺はノーコメントで」
倫理的にはアレだが、こんな世界なわけだしそれぐらいは大目に見てもいいだろう。ていうか、この程度の旨味がなければやってられないわ。
「さてと、さっさと行きますか」
「おう!!」
◆
「ここが件のホームセンターか……」
バイクを一時間弱程度走らせて、
ようやく目的地に辿り着いた。やはりここも人気はなく、窓ガラスが割れる等の荒れた形跡がある。どこもそんなもんか。
「あアぁァア…………!」
「お、バイクの音につられて団体さんがお見えだぞ」
目の前には鉄槌の言う通り、ゾンビ達がワラワラと溢れだした。うーん、幼馴染に関してはここも望みは薄そうだなぁ。まぁ、とにかく目の前の奴らをどうにかするか。
「鉄槌、後ろに下がっ……」
前に出ようとしたところで遮られた。
「ちょっと待て、アタシも戦うぞ。守られてばっかりなんて趣味じゃねーからな!」
えぇ……。悩む。非常に悩む。
正直、僕一人で事足りるのだが鉄槌の性格が性格だ。押さえつけたら、余計に変な方向に走りかねない。うーん……仕方ないか。
「怪我だけは気をつけてよ?」
「わーってるよ! そこそこ重装備してるしちょっとやそっとじゃ直接噛まれねーよ」
どうやら服の下にプロテクターのようなものをつけているらしい。確かに関節を除く殆どの場所に装備している。この状態であれば余程の事がなければ噛まれることもないだろう。
「さぁて、アタシのバール捌き見せてやるよ!」
鉄槌は背負った一メートル越えのバールを取り出し、くるくると掌の上を器用にまわす。
そして彼女は迫り来るゾンビ達に恐れるそびれなんて見せず、大胆不敵な笑みを浮かべるのだった。
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